蔵王連峰 刈田岳・熊野岳周辺パウダー3連発 2009.01




濁沢本流の雪質・ロケーションは最高です




 山 域  蔵王連峰  熊野岳(1840m) 刈田岳(1758m)周辺   ※アルバムへ
 山行日時  2009年年1月18日(日)
 天 候  1月18日 快晴  気温 -6℃ (刈田岳)  
 メンバー  単独 
 行 程  坊平6:28〜馬ノ背8:04〜刈田岳8:18 8:40〜井戸沢滑降8:42((1550mまで))〜馬ノ背〜濁沢本流滑降(1487mまで)10:59〜熊野避難小屋10:35〜丸山沢滑降(1340mまで)10:48〜熊野避難小屋12:48 13:15〜熊野岳13:24〜馬ノ背13:54〜坊平14:07

 本日の晴天に誘われて訪れた蔵王だったが、ここを訪れたのはほぼ2年ぶりだった。蔵王の東面(宮城蔵王)は自宅から約1時間と極めて恵まれた環境だが、なぜか足が遠のく理由がある。鳥海山・月山・朝日連邦など比べるとスケールが見劣りすると言う理由も有るが、山形蔵王に比べても北西の風が強く吹き荒れて天候が悪く、週末などは何時行っても晴天に巡り合うことなど少ないからだ。実際、1〜2月にかけてコガ沢・北屏風東面を攻略出来るチャンスは少なく、次第に足が遠のいてしまって山形方面に流れるという具合。

 蔵王は全国でも気象遭難が最も多発する事で知られているが、その理由はジェット気流の中心が最も通過し易く、日本でも屈指の悪天候地帯とも言われている。その中でも刈田岳から熊野岳に至る馬の背周辺は最悪のポイントで、過去何十人もの遭難者が出ている事がこれを証明している。また、余りにもアプローチが楽な事も不幸な事で、殆どの遭難者は初心者で占められている。

 今日はまだ未滑降の中丸山コースに付け加え、丸山沢で少し遊んで帰ろうと考え、何時ものように早朝出発で仙台を発ってライザスキー場(坊平)を目指した。

【概要】
  ライザスキー場に到着してみると駐車場には車が1台のみで、リフト乗り場は無人で静まりかえっていた。既に圧雪作業の終了したゲレンデを快適にシールを効かせ、すっかり明るくなった斜面を一人で進み、ゲレンデトップを通過してツアーコースに入って行く。晴天で放射冷却が厳しそうだったが意外と外気は冷たくもなく、暫くすると額から汗が流れて来てバンダナに替える。昨日のものと思えるトレースがしっかり残っており、どうやら多くのスキーヤー・ボーダー・山屋さんで賑わった様子だった。

   
        誰もいないスキー場を出発する                    まだ眠っている様なモンスター達

   
            ようやく日が昇る                      樹氷原の先に熊野岳が見える

 ようやく日が昇る頃になると周りは見事な樹氷原となり、最近発達したと思われるモンスターが次々と現れ、朝日に照らされる光景には思わず見とれてしまう。それぞれ個性というか人格が有りそうで、何かを囁きながらこちらを見ているような気がする。やがて中丸山の山頂にも日が昇り、コントラストの強い山頂は眩いばかりの姿で見栄えがする。西側にはやや霞んでいるものの朝日連邦が姿を現し、今日の好天が約束された様な気がして思わず力が入る。

  馬の背に至るリフト下の斜面を登る頃になると風も強まり、寒気が強まって帽子とジャケットフードで顔を覆うが体が冷え、やはり厳冬期の雰囲気がして気が引き締まる。馬の背から覗き込むお釜の水面は完全に氷結し、朝日が鋭く差し込んでコントラストを増し、なんとなく緊張感が高まって厳冬期を強く実感する。刈田岳山頂の御神体もすっかり凍り漬けとなり、過冷却水が形作る蔵王特有の光景は見栄えがする。

   
       モンスターにも人格が有るのか?                     中丸山の山頂にも日が昇る

   
         
馬の背からは刈田岳を目指す                     山頂の御神体も氷付け

 
刈田岳の避難小屋前で立ち止まっていると人影があり、以外にも早々と宮城蔵王側から登って来た山スキーヤー2人が到着した。やはり山頂付近では寒気が強まり、小屋の中ではベストを着込んで目出帽を被り、小休止の後完全武装で外に出て体制を整える。1本めは刈田岳南東斜面の井戸沢バーンとし、小屋から100mほどシュカブラを下ってゆくと入り口に立つ。

 もちろんノントラックの斜面は今日のご褒美という訳で、風に叩かれてパックした斜面をショートターンで感触を探り、途中からは加速して一気に高度差200mの斜面を飛ばして行く。考えてみれば何十回も刈田岳を訪れているのに、井戸沢の斜面を滑ったのは今回が初めてで、フラットな斜面に刻まれたトラックを振り返ると幸せな気分になる。まだ始発の雪上車がやって来るへ気配も無く、落ち着いた気分で刈田岳に登り返すとさらに3名のお客さんが上がって来た。


    
           刈田岳避難小屋で小休止                 井戸沢のノントラック斜面でウォーミングアップ

   
        すっかり氷結したお釜の水面                      南蔵王の杉ヶ峰方面を見る

 
刈田岳の山頂はショートカットして南側のシャカブラを回り込み、お釜の斜面なども観察して2本目を探すが、なんとなく雪の付が少ない様な気がして見送り、手前の濁川源頭の斜面に検討を付ける。傾斜は余り無いが厄介なシュカブラが無くきれいな斜面で、のんびり滑るのは意外と行けそうな予感がして気に入った。ゆっくりスタートするとこのコースは吹き溜まりが多く、軽いパウダーを蹴散らしての感触はたまらない魅力だ。

 
五色岳とお釜の斜面は何時になく新鮮味の有る光景で、短いコースながらも変化があってロケーションも良く、余り雪崩の危険性も少なそうでお勧めのコースとも言え、大きな開放感が有ってとても東北の山とは思えない雰囲気がある。氷河地形の様なU字谷でゆっくり景色を楽しみたい気もするが、気分だけは先走ってしまって休み無しで登り返し、やがて馬の背に戻って後は熊野避難小屋を目指す。

   
        
濁沢本流の右源頭の斜面                  緩やかなコースだが雪質・ロケーションは一級品
 
    
          お釜の斜面も食指が動くが・・・                    濁沢本流下部の斜面を降りて行く

 馬の背を歩いていると左手から6人のパーティーが現れ、良く見ると想像した通りの西川山岳会パーティーの6名で、蒲生さんに声を掛けると中丸山コースへのお誘いを受ける。じつは内心でそれを狙っていたのだがしかし、今日はあと一本丸山沢を決めないと気がすまなくなり、せっかくの有り難い誘いを断って一人熊野避難小屋を目指す。風は強いが天候は相変わらずの晴天で時間的にも余裕が有り、熊野避難小屋で小休止する事も無く通過し、右に方向を変えて丸山沢コース至るシュカブラ帯を降りて行く。

 カール斜面の源頭にたってコースを見ると、斜面はパック気味の安定した快適斜面に思える。最初は斜面を確かめる様にしてスタートし、途中からはリズミカルなショートターンで刻んでその後一気に滑り込み、デブリで埋まった様な最初のノドのところで立ち止まる。この下は狭くてひどく荒れたシュカブラ斜面だが、その下部斜面はクラストした急斜面からオープンバーンが広がり、もうとことんお付き合いしないといけない
雰囲気となる。

   
      名号峰から南雁戸山 北雁戸山                   長いシュカブラを降りて行くと丸山沢

 
  
       丸山沢のカール斜面を一気に降りてゆく               カール斜面はショートターンで刻む

 最近の積雪でようやく滝が埋まったのか、どの斜面をとってもきれいなフラット斜面で滑り易く、どんどん降りていったもう止まらない。どうやら昨日には単独のテレマーカーが下った様で、おそらく旧カモシカ温泉まで下ってヒヨドリ越えを登り返したのだろう。雪質は変わらず良くてこのまま何処までも行けそうだが、後の登り返しを考えるとそろそろ潮時で、1340m地点の大滝上部で終点とする。

 
でもいざも登り返しとなるとこれが難儀な代物で、いい加減疲れてきた足は重くて息は上がる一方で、何度も小休止を入れながら黙々と歩き続ける。特にカール斜面を通過した後のシュカブラ斜面が遥かに遠く、行けども行けども熊野避難小屋が見えて来ない。まるでシュカブラの海を彷徨うボロ船のようで、やたらと時間がかかってくたびれる。やっと辿り着いた避難小屋で缶ビールを開け、カップヌードルで腹を満たした時は至福の時間だった。

   
       最初のノドはデブリの堆積地帯                    急斜面を降りてまだまだ続く丸山沢

   
         東北の山らしからぬ光景                     ロバの耳への急斜面

   
    先日のものと思われるテレマーカーのトラックが有った         大滝の上の1340m地点で終了

 最初はあわよくば中丸山を下って最終の美を飾るなどと考えたが、こんな空想はすぐに吹き飛んで早速熊野岳経由し、馬の背に一旦戻って後は元来たコースを引き返す。しかし、熊野岳・馬の背周辺にはいまだに多くのスキーヤーが行動中で、こんなに山スキーヤー・テレマーカーがいるのかと驚いてしまった。馬の背からは13分ほどであっという間にライザスキー場に舞戻った。もし、中丸山コースを辿ったら日没後の帰着となり、猿倉からライザスキー場への上り返しは悲惨な状況となっていただろう。

 今日は1000mの登り返しを含めると合計1840mの登高となり、ちょうど今頃の鳥海山を日帰りする様なスケールだが、ラッセルがまるで無くて3月並だった事が大きい。この時期にこんな好天が週末に訪れる事は極めて稀で、チャンスがあればつい欲丸出しになるのが癖というもので、また、単独行の行き当たりばったり加減が特に気に入っています。この他にもお釜の斜面・振子沢など興味深いコースもあり、組み合わせによっては結構楽しめそうな蔵王界隈だと思います。
 
※なお、井戸沢・丸山沢は降雪中又は直後の立ち入りは雪崩の可能性が高く、まして危険な登り返しは厳禁です。慎重な気象判断と適切な雪質のチェックが必要です。



    
      長いシュカブラの斜面をひたすら登り返す              今日の熊野岳山頂付近は大入り満員の気配

    
      馬の背からは一気に滑り込んで坊平スキー場へ           モンスターに見送られて帰路につく


                ザイラスキー場(坊平)〜刈田岳〜熊野岳周辺のMAP

                         ※アルバムへ