飯豊連峰 北股岳・門内岳の周辺 2007.05


    

       5月4日(金) 扇ノ地神〜入門内沢滑降

     

 山 域  飯豊連峰 門内岳〜北股岳〜烏帽子岳周辺  ※スライドショー
 山行日時  2007年5月3日(木)〜5日(土)
 天 候  5/3 晴れ  5/4 晴れ  5/6 曇り(強風)
 メンバー  千田 木村 荒井 坂野
 行 程 【5/3】 飯豊山荘7:00〜地竹原9:00〜石転び沢分岐11:00〜門内沢小屋13:25〜入門内沢滑降14:30〜門内小屋15:20
5/4】 門内小屋6:15〜扇の地神6:30〜入門内沢滑降6:40〜1100m地点7:00〜門内岳9:20〜北股岳10:35 〜財布沢右俣滑降11:10〜1145m地点11:35〜財布沢左俣12:10〜門内小屋13:05 13:30〜北股岳14:30〜梅花皮小屋14:45
【5/5】 梅花皮小屋5:25〜烏帽子岳6:10 8:25〜梅花皮小屋9:00 9:50〜石転び沢出合10:25〜温見平〜飯豊山荘12:45

 
 今シーズンは東北の各地も雪不足だが、飯豊・朝日連峰は4月の後半からは低温続いた。その為、確かに下部ではブッシュが露出したり雪渓が割れていたが、意外と沢筋・主稜線付近の斜面には豊富な雪が残っている。それと5月2日には例年になく飯豊山荘までの道路が解放され、山スキーヤーにとっては恵まれた状況となっている。しかし、14日の解放予定が急遽2日の日に変更され、3日の日には意外と登山者・山スキーヤーの姿は少なかった。

 5月には石転び沢方面には過去7回くらい入っているが、連休のこの時期には殆どが日帰り山行で小屋泊りはしていない。その為滑っているといっても殆ど石転び沢・門内沢周辺のみで、西面の沢筋や飯豊本山・大日岳方面はノントレースとなっている。
今回はちょうど良い時なので梅花皮小屋をベースにし、気の向くままスキーを走らせようと目論んだ。すると直前になって仲間からの声が掛かり、結局不揃いながら4人パーティーでの行動となり、お決まりの宴会仕込みの山行パターンとなった。


6月の様な光景の温見平 イワウチワ 竹地原からスキー登行
【5月3日】

 前日は飯豊山荘の半地下倉庫のスペースにテント泊したが、真夜中からの雨にたたられる事も無く大変にラッキーだった。睡眠不足の中朝食を終えて出発しようとした所、ランクルの荒井号が突然やって来た。飯豊の水晶尾根〜大日岳〜北股岳〜エブリサシ岳を完走した直後だが、まったく疲れなど無縁のようで、スキーを担いで元気に門内岳を目指して丸森尾根を一人で登りだした。尾根の登りを嫌った我々2人は門内沢を目指し、温見平へ向けてすっかり雪の消えた道路を歩き出す。

 例年のこの時期は梅花皮荘からのアルバイトが常識だが、片道1時間15分の短縮は実に有りがたいもの。しかし普段日帰り専門の我々には久しぶりの荷は重く、鬱陶しい倒木の枝に悪態をつきながらのスローペース。昨夜の盛り上がりの影響か45分も歩くと休憩となり、今回は時間など無視のお気軽山行のパターンにはまって行く。どうやら我々が最後尾のパーティーらしく、地竹原からようやく雪渓に下りると先行パーティーの姿が見える。噂どうり滝沢周辺はやはり雪は少なく、既に6月頃の雰囲気が漂っていた。

 当初は石転び沢から梅花皮小屋を目指すつもりだったが、今日は気まぐれで急遽門内小屋を目指して門内沢方面へ進路をとる。上部に目をやると12人位は石転び沢を先行しており、門内沢には3人の先行パーティーの姿が見えた。石転び沢方面の下部は例年になくデブリが多く、北股沢は岩が露出して幅が狭まり何時もの光景とは違って雪不足の感があった。しかし門内沢へ入るとデブリは少なく綺麗な稲斜面で、石転び沢より幅は狭いが全体的にはフラットな斜面が稜線まで続いている。最近のブロック雪崩が一部本流まで押し出しているが、10時を過ぎるとさらに定期便の様に一発やって来て、100m位手前でデブリの押し出しは止まった。

門内沢方面 10時過ぎるとブロック雪崩の定期便 4月に降った雪が崩壊
 相変わらずペースは上がらないがシールの効きは良く快適で、二俣までの緩斜面はむしろ石転び沢より楽勝かも知れない。入門内沢は石転び沢と比べてトレースする人が少なく、放射状に広がった5〜6本の沢筋は素晴らしい滑降コースとなっており、多様性があってもっと多くの山スキーヤーが訪れても良いエリアだ。

 二俣から先は門内小屋方面の斜面を目指し、スキーアイゼンを装着して上部の急斜面にジグを切って行く。しかし後続の木村氏は持ち合わせがなかったのでアイゼン歩行となり、ペースは次第に落ちてちょっと厳しそうな様子。雪庇のない方向を目指して左上したら稜線にたどり着いたが、気が付いて見ると門内小屋より200m程北股岳寄りの地点で、結局10分ほどのロスで門内小屋に戻って到着する。小屋に入ってみると丸森尾根から上がって来た荒井君は到着済みで、さっさとどこか仕事に出かけた後だった。

 遅れてやって来た木村氏には留守番を頼み、早速入門内沢の一本を目指して出発する。本当は文覚沢を滑りたかったが時間も押しており、扇ノ地紙と門内岳の最低鞍部に狙いを付けてスタートする。4月に降った雪が程よいザラメとなって板は良く走り、フラットで開けた斜面をロングターンで飛ばして行く。落石も皆無のルンゼは東北特有の綺麗さなのか、雨が降って斜面が荒れたり汚れた茶色の筋が入る事も無い。250m程を滑り込んで今日は打ち止めとし、板にポチヒモを付けて引っ張りながらツボ足になって斜面を登り返し、ちょうど文覚沢を滑り終えた荒井君と合流して門内小屋に帰着する。
 
石転び沢と比べるとブロックも少なく快適な谷 先行した2人に続いて快適に高度を上げる
スキーアイゼンが有れば最後の斜面もクリアー可能 雄大な扇ノ地紙方面の斜面がおいしそう
 【5月4日】

 昨晩の門内小屋は15人ほどお客さんだったが、7:00PM頃には殆どみなさんシュラフに入ってしまい、残された我々だけが嫌われながらのヒソヒソ宴会が続いて9:00PM前に就寝。しかし朝はすっかり元気を取り戻してやる気がみなぎる。今日の予定は一本目を扇ノ地紙山頂から入門内沢を滑り込み、登り返して北股岳の山頂に立つ。財布沢右俣を滑り込んでから左俣を登り返して門内小屋に戻り、北股岳を再び越えて梅花皮小屋に入る予定だ。

 朝は天候に恵まれ昨日のような風も無く、シールを付けて扇ノ地紙を目指してスキーを走らせる。スタート地点の斜面は開けているが、曲がりくねっていて下部の様子は伺うことが出来ない。だだっ広い石転び沢や、まっすぐなぎ落ちる北股沢とはまた違った趣が有り、楽しんで滑れる自分でも好きなコースである。北股沢から扇ノ地紙間の5つの主なコースはこれで完走となるだろう。

 程よい傾斜の斜面を次々にスタートすると、あっという間に下部のルンゼに吸い込まれる様に消えてゆく。比較的気温が高い為か朝にしては斜面も少し柔らかく、膝の負担も軽くてどんどん飛ばして下りて行く。このスケールと雄大さ、そして綺麗でフラットな斜面は素晴らしく、女性的な鳥海山と並ぶ男性的な飯豊連峰は共に東北の雄で、東北で山スキーを目指す者なら是非目指して欲しい。その対照的な山容・コースは春の山スキーの醍醐味を代表するコースだろう。

 あっという間の高度差800mを滑り込み、1100m地点から門内小屋を目指して再び登り返す。ちょうど石転びの分岐にテント泊した10人ほどのパーティーが上がって来た。入門内沢を目指す日帰りパーティーが結構多く、余裕を持って石転び沢出合いにテント泊するパーティーも多い様だ。登り返した我々はそのパーティーを追い抜き、1時間40分ほどで門内小屋に帰着した。

北股岳よりの主稜線に飛び出す 5月4日  扇ノ地神山頂から入門内沢へ
フラットで適度なザラメ雪は快適そのもの 高度差800mを豪快に滑り込んで登り返し
日帰りでやってきた団体さんを追い抜く 北股岳への主稜線の雪庇には大きなクラックが・・・
 稜線に戻ってみると風が強まり、小屋に入ってしまうとサボリ気味になってしまうので、岩陰で一休みした後北股岳へ直行する。北股岳にいたる稜線上の雪庇は例年より小さいが、北股岳への登り斜面にはパックリ大きく口を空けたクラックが走る。北股岳直下の切れ落ちた北股沢の急斜面は見応えが有るが、今シーズンは誰もトレースした様子は無く、北股沢右斜面にのみトラックが一本刻まれていた。 北股沢の上部には一本のクラックが見られ、雪が少なく左叉の幅は狭くて岩が露出し、今シーズンはちょっとリスキーに見える。

 財布沢へのコースは西に尾根を辿っていったん下降し、広い斜面を右に下降してルンゼを目掛けて滑り込む。東面と比べると雪は少ないが、特にクラックも見当たらず快適そのもので一気に降りて行く。ルンゼの中間部でデブリが出てきたが上部からクリアーし、落石、ブロックの無いフラット斜面を降りて本流に入る。コースは急斜面が出て来て変化が有り、予想以上に楽しいコースだった。最後は1145m地点の左俣合流地点で打ち止めとし、狭いルンゼの入り口から門内岳を目掛けて登り返す。2本目の登り返しとなると流石にお疲れモードとなるが、比較的傾斜が緩いのでノンストップで門内小屋に入る。

北股沢左俣の斜面は挑戦的な雰囲気 北股岳の山頂から財布沢右俣へ
尾根筋から右俣の斜面へ 明るく開けた広い斜面を下降
 
フラット斜面は何処までも快適 最後は財布沢左俣を詰めて門内岳へ登り返し
 門内小屋にデポした荷物を回収し、梅花皮小屋を目指して出発すると多くの登山者・山スキーヤーと出会う。同じコースの2度目となると疲れるもので、軽量化してきたはずのザックも方に食い込む。ようやく辿りついた山頂で出てきた缶ビールの味は格別で、視界が効いた遥か遠い本山・御西岳・大日岳を眺める。意外と主稜線上は雪が多く、梅花皮岳から御西岳・本山方面はスキーの使えるコースにも見える。

 梅花皮岳からシールをつけっぱなしで下降して小屋に到着すると、そこには1日遅れて石転び沢を上がって来た千田君の姿があった。1泊2日分の荷物・缶ビール等を持ち、飯豊山荘から4時間で上がって来たと言うから驚いてしまう。既に北股沢右斜面と洗濯沢を滑り終えてまだ余裕の様子。まだ物足りなさそうな様子だったが、我々は早速宴会に引きずり込んで何時もの調子で盛り上がってしまう。しかし困ったことに酒が足りない。

北股沢左俣の斜面にはクラックが見える 最後は北股岳の斜面を滑り込んで梅花皮小屋に到着
【5月5日】

 今日の予定は4人で滝沢〜赤岳沢〜大日岳方面だったが、起きてみると外は風が強まって視界が効かない。それでも時間がたてば何とかなるだろうと楽観して小屋を出発し、強風で殆ど視界の無い烏帽子岳の山頂に立つ。おそらく秋田沖辺りに低気圧が発生したのか、この状態ではまったくスキーにならず様子見とする。しかし待てば待つほど視界は効かなくなり、結局2時間ツェルトを被って待機したが諦め、スゴスゴと梅花皮小屋に戻る羽目となってしまう。

 ここまで来て大日岳方面を諦めるのは辛いところで、何か宿題を残してきてしまった様でスッキリしない。今の実力では梅花皮小屋ベースで無いと大日方面は厳しく、来年も飯豊のスケジュールを外す事は出来ない様だ。小屋で一休みの後はお楽しみの石転び沢となり、視界不良でも何の不安も無く急斜面に飛び込んで行く。上部のフラットな快適斜面をどんどん下り、400m程下ると視界が開けてくる。しかし中間部くらいから本流を埋めるデブリが多くなり、右岸のフラットな斜面を拾いながらの下降が続く。4月に降った雪が最近の気温上昇で雪崩れ、沢全体に広がって荒れているように思えた。この様な状況は最近珍しく、今後石転び沢を目的に来るスキーヤーは少し落胆するだろう。

 雪渓終了点の竹地原でスキーを外し、邪魔な枝に難儀しながら雪の少ない登山道をトボトボ歩き、12:45AMには早々と飯豊山荘に到着。それでもこんなに楽勝なシーズンは珍しく、まだ雪の有る時期の再訪問がベストかな等と思った。 

最後梅花皮小屋からの大日岳北面(飯豊川流域) 5月5日 烏帽子岳の山頂で天気待ち
石転び沢の上半部は実に快適な斜面 下部は広大なデブリで埋め尽くされている
テレマーカーもデブリ斜面には難儀 カタクリ




飯豊連峰 北股岳周辺のMAP