飯豊連峰 飯豊山 本社ノ沢(おむろのさわ)右俣 2009.05


    

      地蔵岳から飯豊山本社ノ沢方面

     

  山 域  飯豊連峰 飯豊山 本社ノ沢右俣
  山行日時  2009年5月3(日)
  天 候  晴れ     
  メンバー  単独
  行 程  4:55大日杉〜7:42地蔵岳〜8:00大又沢〜9:37東尾根〜10:58 11:30本山小屋〜本社ノ沢右俣〜11:48大又沢〜13:26地蔵岳〜14:45大日杉

 飯豊山東面の本社ノ沢には西川パーティーからのお誘いがあったが、今回は都合がつかず不参加となってしまった。しかし前評判の宜しいこのコースはどうしても外したくは無く、大又沢の徒渉が楽な時期にと考えて4日後に訪れた。このコースは地蔵岳からいったん大又沢に下降し、本社ノ沢を登り詰める山越えコースで、山釣りや沢登りでは良くあるパターンだが山スキーで他に記憶が無い。

 会津山岳会の記録には平成元年の5月にスキーで地蔵岳を経由し、本社ノ沢と大岩沢の間の本山東尾根を往復した記録があるが、その後御秘所沢周辺の登下降で本山を日帰りで往復する山スキーヤーが登場し、昨年、西川パーティーの皆さんが本命の本社ノ沢をトレースしている。

 5月頃には御西小屋や本山小屋をベースにして、本社ノ沢や大岩沢などが以前からトレースされていましたが、大日杉から飯豊山往復の日帰りで訪れる人は余りいなかった様だ。地蔵岳から見る本社ノ沢はダイナミックで見栄えのする沢で、ちょっと野心的な山スキーヤーだったら一目置くコースだろう。

 ここ1ヶ月間は山から離れてしまい、すっかり鈍った体を引きずるのを覚悟で出発したが、天候にも恵まれて意外とスムーズに歩けたが、帰路の地蔵岳の登り返しでは流石にスピードダウンしてしまった。



【概要】

 大日杉の駐車場に到着すると4台の車があったが、人影は無くひっそりとした中準備を整えて出発する。1ヶ月もブランクがあるので出だしはペースを落とし、歩幅も小さくしてただ黙々とザンゲ坂を辿ると所々雪渓が出てくる。ブナの新緑にはやや早い様だが、純白のコブシや可憐なピンクのイワウチワが嬉しい。

 御田を過ぎると所々雪渓歩きが多く出てくるが、スキーは背負ったまま登山道を辿り、途中でTシャツ1枚になってただひたすら地蔵岳を目指す。ダマシ地蔵下の斜面はスキーも使えるが、地蔵岳からの滑降を考えてスキーはなお担いだまま雪壁を登り、そのまま歩き続けるとダマシ地蔵を通過して地蔵岳に到着した。

 今日は下り気味の天気予報だが午後まで崩れる様子は無く、目の前に姿を現した雄大な飯豊山東斜面を見ると気持ちも高揚し、大又沢の徒渉さえ問題なければ山頂には立てると思えた。東斜面に刻まれた大又沢は二俣になっているが、上部は急峻なルンゼの雰囲気で見ごたえがあり、右俣・左俣いずれを選択するかも楽しい。雪は思いの他ブロック雪崩れや土砂崩れで斜面も荒れた様子は無く、豊富な雪でダイナミックかつ快適な滑りが期待できそうで心も躍る。

だまし地蔵直下の斜面はまだ雪が豊富 地蔵岳の後ろに飯豊山が姿を現す
雪も豊富な本社ノ沢は期待が出来る 狭い地蔵沢を下降して大又沢へ

 
地蔵岳で一本とった後は躊躇無く地蔵沢を下降し、狭くて急な小沢をを400mほど下降すると大又沢に降り立った。上流側のS字ゴルジュ付近には多量のブロックが堆積し、暖冬とは言いながら自然の猛威を見せ付けられる感じがする。大又沢の下流側の雪渓は開いているがスノーブリッジがあり、右岸には急な雪壁が残っていてルートの選択に悩んだが、結局シール&アイゼンをセットして後者を選ぶ。

 沢床から15m程の高さをトラバースするが傾斜が強く、ちょっと間違うと開いた釜にドボンしそうで緊張する。後は埋まった雪渓を降りて行くと間もなく本社ノ沢出合に辿り着いた。上部の斜面には西川パーティーのものと思われるトレースが残り、狭い出合の斜面を登って行くとやがて谷は広がり、真正面には雄大な東斜面が迫って山頂は遥か頭上に思えた。

上流のS字ゴルジュは膨大なブロックの残骸 大又沢徒渉点のトラバース
意外と広い大又沢を遡って高度を上げる 積雪量の豊富さは流石に飯豊連峰
トラックの残る本社ノ沢を遡る 山頂への登路は右の東尾ジ
 
 1250m付近から東尾根を見ると開けた斜面が尾根上へ続き、その先は快適な尾根が山頂まで導いてくれる様で、案の定西川パーティーのものと思われるトレースも同じ方向へ向かっていた。適度な傾斜の斜面は登りやすくて上部は広く、1600m地点で尾根上に立つと本山小屋がマメ粒のように見えた。

 右隣の大岩沢も面白そうだが山越えは絶望的で、トライするならば本山小屋一泊で登り返したほうが良さそうだ。ついでに桧山沢流域・実川流域辺りを探索するのも楽しそうで、気ままなスキー縦走を計画しても面白そうだ。暖冬の昨今では山スキーヤーには逆風の雰囲気もあるが、3月〜5月に掛けての飯豊連峰はむしろチャンスが訪れるかも知れない。


 本山東尾根に上がってみると意外と広い斜面が山頂方面に続き、右手には宝珠山のピークに続くダイグラ尾根が眼下となり、次第に登高意欲が沸いて来て気分を良くする。大又沢の対岸には雪の豊富な地蔵沢の下降コースが確認できて、実に良く出来た山スキーコースだと感心してしまう。何時もは今頃石転び沢に入り浸りのマンネリパターンだが、まったく質の異なるコースは新鮮で、やはり山スキーは未知の世界に足を踏み出す時が楽しい。

適度な斜面は登り易いコース 地蔵岳山頂からの下降ルートは右の地蔵沢
東尾根から初めて本山小屋が伺える 大又沢を俯瞰する
ダイグラ尾根方面 本山小屋は登山者で賑わっている様子
 
 上部の尾根は狭くなって本社ノ沢側の斜面を斜上し、下降コースの右股を確認しながらひたすら本山小屋を目指して高度を上げる。何処と無く人の声がしたと思ったら本山小屋を通過する登山者で、ここで始めて連休の日々の雰囲気を味わう。最後の斜面は何時もながらくたびれるが、ゆっくりジグを切りながら進んで行くと本山小屋に到着した。
 
 小屋には管理人さんの他3名の登山者がくつろいでいて、のんびりとした雰囲気が漂って思わず馴染んでしまう。何時もはセコセコした山行ばかりだが、やはりこの時期は小屋で仲間とダレルのも悪くは無い。しかし、宴会山行というのもあるが過去と違って今や非難続出で、小屋では常に紳士的態度が求められるところが少し辛い。


 薄曇だが天候は安定しているので下降の不安は無く、一休みした後最後のおにぎりを押し込んでから準備を整え、傾斜の緩い大斜面を右俣目指して躊躇無く降りて行く。上部斜面は所々新雪が残って滑りが鈍るが、次第に斜度は急になって来るとショートターンで刻み、スノーボールを落としながらスキーを廻して下降して行く。30度位の斜面は適度な傾斜で滑り易く、次第に斜面が狭まって来て二俣にたどり着く。右俣には4日前の西川パーティーのものと思われるトラックが乱舞し、本社ノ沢では楽しそうな雰囲気が満ち溢れていた。

大日岳・牛首岳方面 大又沢は意外に広い斜面が続く
登路となった東尾根への斜面 二俣出合手間でブロックが出てくる
 
 二俣から下になるとダラダラの滑りとなり、滑りの悪い新雪を通過して降りて行くと間もなく大又沢となる。地蔵岳への登り返し返しは右の小玉川倉沢も良さそうだったが、地蔵岳直下の藪こぎでもさせられると困るので却下し、往路の地蔵沢目指し手を再び徒渉に取り掛かる。急運雪壁のトラバースは勘弁してもらい、スキーのトレースの残るスノーブリッジを通過して地蔵沢を登り返す。

 しかし最後の400mの登り返しはやはり辛いもので、いきなりスピードダウンして小休止ばかり。狭い沢筋は何か鬱陶しくて中々進まず、横にジグを切ってしのいで地蔵岳下の斜面で小休止とする。振り返ると飯豊山は相変わらず穏やかな様子で、登り終えた後のスケール感はなお大きい。

 地蔵岳直下の斜面をスキーで降りて行くと間もなく雪渓が途切れ、後は板を担いでトボトボと歩いて行くとザンゲ坂となり、更にダラダラ下って行くと大日杉に到着した。3月以降天候不良でまともな山行は出来なかったが、天候にも恵まれたこの日は会心の山行で、今日はやって来て良かったと一人嬉しくなった。

 
大又沢の終点付近 大又沢左岸(下流に向かって左側)はまだ雪も豊富
イワウチワ ?・・・・




飯豊山 本社ノ沢周辺 MAP