朝日連峰 三面コース 2007.09





主稜線から見る相模山は堂々として美しい。




 山 域  朝日連峰 北寒江山(1658m) 三面コース往復
 山行日時  2007年 9月23〜24日  
 天 候  9/23 曇り 9/24 晴れ
 メンバー  単独
 行 程  奥三面ダム駐車場〜三面小屋(290m)〜道陸神峰(989.9m)〜大上戸山(1429.4m)〜相模山(1590.7m)〜北寒江山(1688m)〜狐穴小屋 往復

 

 
三面コースは朝日連峰では新潟方面から唯一の入山コースだが、朝日に通い詰めた新潟の山屋さんでもトレースしている人は少ない。三面ダムが建設され、三面部落跡から林道が伸びてアプローチは少し楽になったとはいえ、標準タームでは狐穴小屋まで12時間程を要し、東北の山ではダントツのロングコースとして知られている。かつては三面マタギがこの道を辿って主稜線を越え、大井沢側のマタギと交流していた事は良く知られている。この歴史有るマタギコ道だが、2002年に刈り払いされたのを最後に道は荒れ始め、最近は降りる人はたまにいるがあえて登りを選択する人は殆どいない。

 今回は掲示板で最近刈り払いが行われた事を知り、急遽小国側の蕨峠経由で三面を目指した。登り始めてみれば見事に刈られた登山道は歩き易く、遥かなる北寒江山に至るコースは変化に富み、山深い朝日連峰の魅力を思いっきり体感できる様な登山道の復活だった。狐穴小屋から道陸神小山での刈り払いには、3人で2ビバークを要したそうですが、その苦労がうかがわれる様で感謝感激の思いです。体力に自信のある方なら今シーズン是非トライして頂きたいと思います。

9月23日 奥三面ダム駐車場6:00〜三面小屋7:56〜道陸神避難小屋9:30〜大上戸山12:15〜相模山14:04〜善六ノ池14:41〜北寒江山15:10〜狐穴小屋15:25  9月24日 狐穴小屋5:30〜相模山6:48〜道陸神避難小屋10:44〜三面山12:07〜奥三面ダム駐車場14:14

 
意外としっかりしている 味噌汁をご馳走になる 環境省はえらい

【9月23日】

 昨年中から通行止めの蕨峠だったが最近開通した様で、かつてバスも走ったダートコースは意外と走り易い。しかし奥三面ダムの駐車場で車中泊のところが、うっかり薮蚊の侵入を許してしまって大失敗。殆ど眠る事が出来ず翌朝は顔をブツブツにやられてしまう。おまけに朝からの雨ですっかりトーンダウンしてしまい、一旦は諦めて林道を戻ったが途中で雨も上がり、気を取り直して奥三面ダムに舞い戻って6:00AMに出発する。
 歩き始めると登山道はすぐ上下に分かれるが、林道跡の下の林道跡のコースを選んで三面小屋を目指す。伸び放題の草にううんざりしたがその後は歩き易くなり、やがて殆ど水平なブナ林を経て平四郎沢の一本吊橋にたどり着く。見た目は頼り無さそうな橋だが、意外としっかりしていてぶれる事も無く、心地よいスリルを味わいながら先を急ぐ。突然出てきた深沢の鉄の橋は立派で意外だったが、1時間40分ほどで三面小屋に到着する。小屋の前では魚とり(おそらく突きんぼ漁)に来ていた地元グループが朝食の最中で、ミョウガのたっぷり入った美味しい味噌汁をご馳走になる。

 以外にも小屋泊まりの4人の女性パーティが先行しているらしく、その後を追うようにして鉄の橋を渡り、急な尾根を押さえ気味のペース配分で高度を上げて行くと、見る見るうちに三面小屋は遥か下になる。雨上がりの曇り空は風が無く蒸し暑く、対岸の三面小屋が眼下になると急に額から汗がしたたり落ち、Tシャツと帽子はぐっしょり濡れてしまう。やがて太いブナの木の倒木が道を塞ぎ、慰霊碑を通過すると新しくなったアメダスアンテナとなり、その先のま新しいコルゲート製の道陸神避難小屋に到着する。視界の広がった先には遠い大上戸山が見えるが、その先の相模山〜北寒江山はまだ姿を見せない。

道陸神の避難シェルター 大上戸山は遥か彼方
潅木帯の長い尾根が続く 主稜線は見えない方が楽?
相模沢? 意外と大きなギャップは出てこないので比較的楽
大上戸山下の岩場を通過 ただひたすら主稜線を目指す
 
 
道陸神小屋から先はあまり大きなギャップは無いが、ここから先は視界の効かない単調で長いアップダウンが続く。昨日に比べて気温も低めでコンデションは悪くは無かったが、もし間違って夏に取り付いていたら大変で、風の無い潅木帯のコースには苦しめられるだろう。途中道を塞いでいる太いブナの倒木を通過し、仙ノ平〜鶴の一声〜中山峰〜沼倉山を経由し、このコースのターニングポイントとも言える大上戸山の登りに取り掛かる。
 しかし、予想はしていたが何処からとも無くガサガサという物音がし、こちらが気がつく前に潅木帯の斜面を走り下りて行く。里山ですっかりすれてしまった熊とは違い、こちらに向かってくる事はまず無いと思うが、道陸神小屋から大上戸山間では4回も音がした。お互いご対面は遠慮したいもので、思わずラジオのボリュームを上げて急ぎ足の通過となる。

 幸いに天候は回復傾向に有り、大上戸山手前の狭い岩場を通過するあたりには視界が開け、相模山方面の尾根が見えてきてようやく距離感がつかめた。疲れてくると笹の切り株が足に引っかり鬱陶しいが、この深い笹薮を刈り込んだ人の苦労を思うと、そんな贅沢などは決して言えない気分だった。
 大上戸山手前には溜まり水となった水場があるが、生まで呑むのにはちょっと遠慮したい濁り水。その先を急ぐと右側に鋭くキレ落ちた狭い大上戸岩場となり、さらに疲れが出て来た頃の辛い登りを経ると頂上に着く。山頂には傾いた三角点が有ったが、視界が効いていれば素晴らしい筈の光景はお預けだった。ここから先の尾根はただひたすら右半分ガス混じりのコースを辿り、ペースを取り戻してどんどん進んで行くと相模山に到着する。

ようやく主稜線が姿を現す アザミが咲き誇る 善六の池
 
 相模山のピークの笹薮には赤いテープが付いていたが、刈り払いされていないとその位置を探し出すのは難しいだろう。小休止の後は幾分高い1606mピークを越え、まるで散歩コースのような歩き易い道を下りて行く。コースの途中から左の草原を下りて行くと視界が開け、狐穴小屋から以東岳に至る主稜線が初めて現れる。まだ紅葉には早いのが残念だが、絨毯のような草原を辿って行くとひっそりとした善六ノ池にたどり着く。
 以前春スキーでここを訪れた時は気が付かなかったが、以東岳をバックにした大草原の中の善六ノ池は、静寂に満ちた素晴らしい桃源郷に思える。古い地図を見るとキャンプサイトのマークがあるが、今では幕営などは許されないのが大変残念。再び尾根上のコースに戻ると前方には4人の登山者の姿が有り、どうやら早朝に三面小屋を立った中高年女性4人のパーティーの様だ。ようやく辿り着いた北寒江山はノンストップで通過し、途中で4人パーティーを追い越してゴールの狐穴小屋に到着した。


 狐穴小屋には12人程のお客さんがいたが、その内の男女9名は三面から上ってきた4人パーティと同じグループで、大井沢〜狐穴小屋〜三面間の交差縦走を目指している様だった。このコースにこれ程の登山者が押しかけるとはまったく意外で、有り余る中高年女性パーティーの力恐るべし。小屋の中でもその雰囲気に圧倒されっぱなしで、小屋番の安達さんら3名と部屋の隅でチビチビと焼酎を煽っていたら、いつの間にか寝込んで撃沈してしまった。

ひっそりとたたずむ狐穴小屋 北寒江山から雲海を見る

 【9月24日】

 翌朝は雲海に浮かぶ月山・鳥海山の美しい姿に感動し、三面を目指して下りて行く9人の先行パーティーの跡を追って出発する。今日はあまり急いで降りる理由も無いので、小屋で一緒だった新潟の方と一緒に三面を目指して下りて行く。すっかり晴れた主稜線上には朝日に輝く以東岳の姿が眩しく、北の盟主を思わせる堂々とした姿が立派だ。北寒江山を下りて行くと相模山は女性的なスカイラインを描き、その美しい山容は主稜線上の山々に劣らない魅力がある。朝日のコントラストに照らされたその姿は素晴らしい被写体で、もう少し写真の心得があるなら何時間でも粘って見たい。

 相模山を通過するともう大きな登り返しは無く、登りではさんざん苦労したコースもスムーズに下れて実に快適。左の沢から吹き上がる風は乾いて実に心地よく、昨日とは打って変わってのさわやか秋の空だった。雨の日だったら刈られた笹で滑って難儀そうだが、晴れていればコースも荒れている事も無く、懐の深い西面の原始的な魅力を十分堪能出来て嬉しい。困難な沢として名の知れている左の岩井俣沢、右の竹の沢の源頭を眺めてため息をつく。とても私などの出る幕ではないが、もっと早い時期に朝日の沢をかじっておくべきだったと反省する。
 途中では何度もデジカメを取り出しで取りまくり、名残惜しい三面コースを堪能する様にして下って行く。道陸神小屋までの間に2度熊らしい歓迎を受けたが、途中でゲットしたヒラタケをお土産にして今日は上出来だった。登りでは見る事が来なかった素晴らしい光景をデジカメに納め、あまり疲れを感じる事も無く奥三面駐車場に戻った。
  
雲海に浮かぶ月山 北寒江からの下降開始 竹の沢〜中の俣沢源頭部
  
 
早朝の善六ノ池と以東岳 岩井俣沢上部のガッコ沢源頭部
相模山から大上戸山を見る 9人ものパーティーが三面を目指して下りて行く
北寒江に至るこの遥かな道が魅力 大上戸山から水場〜岩場を経て降りてくる
刈り払いされたコースでは疲れ知らずで下る 遥か彼方を振り返る・・・・。
鉄橋の下は三面川本流 名物の1本吊橋 今日のご褒美はヒラタケ

  


奥三面ダム〜三面小屋〜大上戸山〜相模山〜狐穴小屋  MAP