南蔵王 北屏風東壁
【期日】 平成16年4月4日
【メンバー】 荒井 坂野
【天候】 曇りのち雪
【行動】
白石スキー場7:50〜水引入道のコル11:00〜北屏風三角点12:00 滑降開始12:30〜基部12:50〜東北大学観測所14:20
今回は今シーズン最後の蔵王エリア山スキーを締めくくるつもりでやってきたが、結果的には失敗山行の部類で何か消化不良のような感じで終了した。東壁には4〜5本程度の滑降コースが有るようだが、今回のコースはもっとも南側の、北屏風三角点付近から雪庇の切れ目から滑る、ちょっと狭いリッジ状の狭い滑りにくそうな斜面である。下から見る限り直下の急な斜面を何とかやり過ごし、2本の雪稜沿いに下降すれば下部の緩斜面に逃げられそうで、おおよその見通しは付いていた。しかしこれは視界が良好な事が前提で、コースが少し複雑な為に視界が効かないとコース取りが難しく、ちょっと厄介な所である。
何時ものよう遠刈田町で相方と合流し、今日の下降コース終点となる東北大学観測所に車1台をデポし、スタート地点の白石スキー場へ車を走らせる。とっくにスキーシーズンを終了した白石スキー場はまったく人影が無く、やたらと広い駐車場の一番奥に車を止める。さっそく身支度を整えると、水引き入道方面に水平に伸びる林道にスキーを走らせる。1kmほど先の登山道入り口の標識から林の中に入ると、最近入ったパーティーのものと思われる赤布が点々と続いており、馬神山方面に我々を導いてくれる。1時間ほど経ってくると山頂方面は何時の間にか雲で覆われ、ちらちらと雪が落ちてきてしまう。馬神山への斜面を登りきった頃には屏風の東壁の様子も見えず、山頂直下のドロップポイントの確認は結局出来ずじまいだった。
水引入道から見る北屏風東壁 水引入道最後のツメ
水引のコルで小休止した後に稜線直下の急な斜面を目指すが、今日は昨日仕入れたばかりのクトーを試すべくスキー板にセットする。斜面はザラメ雪に10〜15cm程の深雪が載った状態で、比較的安定はしているようだがクトーの爪が届かないとエッジが流されて力が入らない。自分のクトーはロングタイプを選んだので何とかなるが、ショートタイプの荒相方は安定感がなく大変苦労している様子で、間もなく諦めてツボ足になってしまった。ろうずめ平の斜面と比べると傾斜が急でしかも狭く歩きにくく、ツボ足になった方が楽に思えたが、半ば意地になって山頂までスキーを付けっ放しで通してしまった。でもこの様な時は安全優先、ピッケル、アイゼン登高が正解のようです。
北屏風山頂の三角点のある所で缶ビールを取り出し、何時ものように気持ちよく喉をならす。しかし風は無いものの、すっかりガスで覆われて視界は30〜50m程となり、遠近感のないモノトーンの世界に包まれる。雪庇の状態が少し垣間見られるが全体像は確認できず、いったい我々がどの位置に立っているのかまったく自信が無く、恐る恐る先端部に近ずいて直下の斜面を探すが判然とせず、結局雪の塊を転がして落としてみる。三角点直下の斜面がもっとも安全と思われるが、正直なところあまり乗り気になれない気分。どうすると相方に聞いた所、すっかりやる気満々の様子。何しろ昨シーズンに続き今シーズン2回東壁を滑っており、今日の1本を滑れば主要コースの全てを滑った事になる。こうなると精通者に先行してもらうのが礼儀なので、私は後追いででゆっくり様子を見させてもらう。
地図で地形を確認して大体の予定コースを頭の中に入れ、相方は何のためらいも無く直下の斜面を下りていった。直下は45〜50度ほどの斜面と思われ、ザラメ雪に新雪が乗った状態で不安定で大胆な動きは取れない状況。一気に雪崩れる様子は無いが、所々で10cm程の厚さで流れ出して一瞬日ひやっとしたが、次第に慣れてキックターンで刻んで右よりに下降し、微かに下のほうに見える尾根筋を目標にしてトラバースしながら降り続ける。しかしその先は切れ落ちた崖の様に見え、ショートターンを試みるが時々立ち止まって状況確認しなければならず、慎重な守りの姿勢に入ってしまう。特に尾根筋には左側に雪庇が出来ており、モノトーン状態でそのコンタクトラインが見えず緊張してしまう。次第に自分の居る位置が壁のどの位置なのか自信が無くなり、壁の中間部からは秋山沢本流筋を目指し左にトラバースしながら降りてゆく。
遠近感の無いモノトーンの世界 今居る位置も解らず
先行者の後20mほどの斜面をトラバースしていったところ、一瞬にして先行者の姿が消えてしまった。斜面をトラバースしていると思ったところが、実は尾根の雪庇を横切ってしまい雪庇を踏み抜いてしまった。5m程落下して深雪に突っ込んで止まった様子で無事であったが、慣れて来た頃の一寸した油断がこの様なアクシデントを招いてしまう。早く降りたいという焦りを抑え、その後は斜面を充分に確認しながらルンゼ状の斜面を追うようにして降りる。緩斜面になると次第に視界が開け、ようやくパウダースノーの感触を味わうようにしてショートターンを刻んで行く。壁の基部で小休止。
思った以上に時間がかってしまい、満足な滑りは出来なかったのであまり達成感は感じない。滑ったというよりただ単に降りてきたと言う印象で、今季の山スキーでは失敗作の部類に入るだろう。しかし来期の課題が残ったわけで、それはそれでまた楽しみが増えたという事にもなる。今度来るときは天候が何より一番。ベストコンデションでの再挑戦としよう。下りは秋山沢右岸を早めにトラバースして樹林帯を抜け、1時間15分程で東北大学観測所にたどり着いた。
北屏風東壁の滑降ライン
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