飯豊連峰 本社ノ沢(おむろの沢)左俣 2014.05.11




本社ノ沢 左俣下降










 山 域  飯豊連峰 本山小屋  (2102m)  
 山行日時  2014年5月11日(日)
 天 候  快晴 
 メンバー  千田 坂野 
 行 程  大日杉5:23〜地蔵岳7:56〜大又沢8:42〜東尾根10:38〜本山小屋11:50〜本社ノ沢左俣12:22〜大又沢12:46〜地蔵岳14:16〜大日杉16:20

 
本社ノ沢は今度で3回めだが、自分では毎年のように同じコースを訪れるのは少ない。しかしこの本社ノ沢は例外で、飯豊連峰の盟主の飯豊山頂からの日帰りが可能で、スケールが大きく豪快な滑りが出来る魅力はたまりません。

 地蔵岳の山越えコースは体力を要し、登下降ルートの見極めや大又沢の通過など、スキーの技量の他に登山の経験やセンスが問われ、また事前の天候判断も結果を大きく左右する。行動中に悪天候に捕まると厳しい局面に遭遇ことも有り、自分の体力とスピードも十分に自覚してトライいた方が良い。

 本山小屋から下の斜面は広大でスケールが大きく、対岸の地蔵岳を見降ろしながらの滑りは豪快で、飯豊連峰ならでのロングコースとして大きな存在感が有る。石転び沢や門内沢方面を滑った人なら次は是非本社ノ沢をトライして頂きたい。

 今回は日本海に高気圧が張りだして寒気も抜け、このシーズンでは最高のチャンスがやって来たと思われた。いつもの様に南陽の実家を早朝出発して大日杉に到着し、待ち合わせた相方と合流して準備を整え、3名の先行者の後を追って駐車場を出発した。


 
 大日杉の駐車場に着いてみると意外に車は少なく、すでに2名の単独のスキーヤーと1名の登山者が先行し、我々はしんがりと言う事で身支度を整えて出発する。

 先週の鳥海山行は天候不良で消化不良に終わり、今回はそれを取り戻す為のに気合を入れたつもりだが、出だしのザンゲ坂に難儀して中々ペースは上がらない。御田から先の斜面からやっとスキーが使えるようになり、ようやく体が慣れてきて息も整う。天候は快晴でほとんど風もなく、清々しい新緑の時期を感じさせるような空気が心地よく、五段山方面の山並みを眺めながらゆっくりと高度を上げて行く。

 尾根上は昨年より積雪はやや少ないようだが、スキーを履いてしまえば何時ものペースを取り戻し、やがて地蔵岳の山頂に立って小休止とする。ここから見上げる本社ノ沢は圧倒的な存在感で、暫く右俣と左俣の斜面に目を奪われてしまう。最近新雪が降った様子で沢筋の斜面は白く綺麗で、抜けるような青空の下で東面が輝いていた。

 小休止の後先行者の後を追って大又沢の下降コースを辿り、急峻で硬い斜面にエッジを効かせて下りてゆく。最近降った雨で縦溝が下まで出来ており、ガタガタな斜面に難儀して大又沢に降り立つ。今年は雪が少い様で2ヶ所沢底は口を開いているが、右岸(下流に向って左側)を容易に高巻いて通過する。

 当初は大又沢の左の尾根を登路として考えたが、下部でブッシュが露出しているので諦め、通常コースの東尾根への斜面に取り付いて高度を上げる。今日は風もなく予想以上に照り返しが強く、ヒマラヤの雪壁を登っているようで体力が消耗する。

 尾根上で先行する単独のスキーヤーに追い付いたが、小休止した後に再び引き離されて山頂を目指してただ黙々と前進する。しかし、何時もの厄介な風に阻まれる事もなく、ペースを落としながらも連続して登り続けるとやがて本山小屋に達した。

 今日は空も澄み切って視界は極めて良好で、中々手の届かないピラミダルな大日岳の勇姿が美しい。何時かは山頂からとは思いながら、年々次第に遠のいてしまう現実がなにか寂しい。

 今日のコースは相方の希望で右俣を選択し、フッソの固形ワックスを生塗りして準備を整え、傾斜のゆるい広大な斜面からロングターンで降りて行く。最近降った新雪も適度にザラメ化して板の走りは良く、次第に傾斜の増す左俣の斜面に思い思いのトラックを刻んで高度を下げる。幸いにも不快な縦溝もなくフラットな斜面が連続し、初めて飯豊の残雪期に持ち込んだファットスキーの感触も安定して気分が良い。

 300m程高度を下げると沢幅が狭まって傾斜も増し、内エッジに体重を乗せてスピードをコントローしながら更に降りてゆく。先行スキーヤーのトラックが少しうるさいが、ファットの板なら暴れることもなくスムースなターンが可能で、先週の鳥海山と同様に春スキーでも走破性と滑降性が高いと実感する。

 快適なクルージングの後あっという間に大又沢出合に達し、最後の400mの折り返しの為十分な水を補給して登り返しに取り掛かる。ルートは地蔵岳の左の肩を目指す沢筋斜面を辿り、灌木帯の雪壁を登り切ると地蔵岳の山頂に立つ。

 山頂から振り返る本社ノ沢には自分達の刻んだトラックが刻まれ、静かな世界に遊ばせてもらうスキーヤーにとっては達成感と共に、幸せな自分を実感出来る一時でも有る。

 地蔵岳からの下降は御田下までスキーが使え、最後は疲れ切った足を騙して慎重に降りてやがて大日杉に帰着する。2年前と比べると40分ほどの時間オーバーで、昨年痛めた左膝の後遺症と体力低下が明らかになった。

 なお、今月3日に左俣に滑落したスキーヤーが亡くなっていますが、以外にも一ノ王子付近からザックとスキーは残したまま500m程滑落した模様です。当日は風が強く斜面は固かったと思われます。亡くなられた方にはお悔やみ申しあげます。合掌。


大日杉〜地蔵岳〜大又沢〜飯豊山  コースMap

 
 御田の上からスキーの登高が可能
 
 地蔵岳直下の尾根

 
 五段山方面への尾根コース

 
 新雪が見られる本社ノ沢
 
 トレースは見られず静かな気配
 
大又沢への下降は固い縦溝斜面
 
 飯豊山の東斜面が眩しい

 
 大又沢の積雪は少ないようで左からの高巻き
 
 雄大な飯豊山東面が頭上を圧倒する

  
 本社ノ沢の右俣には最近出来たようなデブリ

 
 東斜面を目指す先行者を追って登る

 
東尾根上に立つと地蔵岳は下に見える

 
 山頂まではただひたすら前進のみ

 
 本山のトイレはかなり露出していた

 
本山小屋の扉は改修されて出入りはスムーズ

 
 中々届かない大日岳と牛首方面

 
 ピラミッド型の大日岳山頂からの斜面は魅力的

 
 実川方面もまだ訪れたことのない未知の斜面

 
 左俣を目指して一ノ王子を通過

 
 左俣の広大でフラットなオープンバーンを降りてゆく

 
 やや急な斜面だがザラメ化した新雪は滑りも良い

 
 大又沢はまだまだ先

 
 次第に雪が重くなりロングターンで降りてゆく

  変化のある左俣を抜けて小休止


 広大でスケールの大きい本社ノ沢

 
地蔵岳への登り返しは左の肩から

 
 切り合せ小屋方面への人影はない

 
  地蔵岳に登り返して自分のトラックを探すのが楽しみの一つ

 
 左俣はデブリや落石が皆無できれいな斜面