飯豊連峰 
北股沢右股〜本石転び沢




 中央が北股沢の右股、その左側は左股。右端には門内小屋が見える。




【期日】      平成16年5月15日(土)  ※スライドショー
【山域】      飯豊連峰
【目標】      石転び沢の上部 @ 北股沢右股 標高差500m A 本石転び沢 梅花皮岳に突き上げる東面のルンゼ。 標高差800m。
【メンバー】   単独
【コースタイム】 飯豊山荘4:40〜石転び沢出合6:30〜梅花皮小屋9:10〜北股岳(2024m)10:00〜右股滑降10:10〜石転び沢(1520m)10:20〜梅花皮小屋11:45〜梅花皮岳(2010m)12:30〜本石転び沢滑降12:40〜石転び沢出合12:50〜地竹原(650m)13:00〜飯豊山荘(400m)14:10
【天候】      晴れ
【用具】      PUMA シンテシ165cm、ディアミール フリーライド、ガルモント G−ライト。
    

【概要】

 今回の山行は今シーズンの板納めにして、本石転び沢を1本滑って帰ろうと思っていたが、石転び沢を登り始めてみると雪の斜面の状態が大変に良いことに気が付いた。今日は先行者が石転び沢に2人、門内沢方面に2人が見られる程度で、実に静かな雰囲気である。周りを見ると例年に無くデブリ、ブロック、落石が殆ど無く、全体的に斜面がフラットで荒れている様子が殆ど無い。気温は比較的に低く、少し風が吹いて斜面は締まり、安定しているようだ。しかも北股沢の上部斜面には亀裂は走っているものの、斜面は連続して滑降が可能に見える。昨年はザラメ雪が流れ出して大変に苦しんだ北股沢だが、その右手のルンゼは特に魅力的な滑降ラインに思えた。

 飯豊山荘で身支度を整えていると、すでに4人の登山者が先行して石転び沢を目指して出発してゆく。4:40AM飯豊山荘を続いて出発。朝日連峰と同様に今年の雪解けは例年になく早く、砂防ダムから先もまったく雪が無く、ザックに取り付けた板を時々ブッシュに引っ掛けながら進む。途中で2人の先行者を追い越し、何時ものように地竹原を過ぎた地点から雪渓の末端に降り、スキーシールを貼って快適な登行を開始する。石転び沢出合いの大岩周辺で小休止し、上部を見渡してみるともうすでに先行者2人の姿は無く、どうやら門内沢のほうへ向かった模様だった。

     
            石転び沢の上部斜面                  入り門内沢の出合

 ここから見る北股岳直下の北股沢は、雪解けの早い今年で斜面の亀裂は見られるが、斜面は繋がっている様でこの時期としては意外に条件が良さそうに見える。しかも石転び沢全体に斜面の状態はよく、気温が低めで硬めに締まっている状況。そして良く北股沢を覗いてみると、昨年のコースの右隣の2本のルンゼが気になった。北股沢左俣右隣の1本目のルンゼは北股岳から少し高度を下げ、稜線から一気に石転び沢に切れ落ちているが、狭いながらも急峻な斜面がとても魅力的に見えた。上部付近から中間部までは至る所に亀裂が入っているが、よく見ると斜面は下まで繋がっていてスキーは可能のようだった。天候も今日の午後までは持ってくれそうなので、今回は予定を変更して一本付け加え、2本のルンゼをを継続して滑ってみる事にする。

 何時もながらこの時期の石転び沢は、谷筋の広大さ、スケール、雪の豊富さでに圧倒されるが、ここに来る度に何か心の中での満足感、安らぎを感じる。そして何度来ても飽きることのないこの光景だが、スキーに少しこだわりを持つ向きにとってはまたとない未知の世界であり、すばらしい滑降ラインを描けるキャンバスの様にも思える。ただ眺めているのでは飽き足らない、何か挑戦的な対象に見えてくるのだが、そう思うのは私だけであろうか?

     
            本石転び沢の出合                   北股沢の3本のルンゼ

 先行者のいない静かな石転び沢を黙々とスキーを走らせ、思いの他順調に高度を稼いで行くとやがて本石転び沢の入り口にたどり着く。ここからカール状の斜面が延々と続く上部を仰いで見ると、意外に北俣岳と比べて梅花皮岳はそう高くは見えないが、実はここから800mの高度差のある長大なルンゼである。上部は急峻な斜面が梅花皮岳山頂まで連続していて手ごわさそうに見えるが、亀裂はまったくない様子ですっきりした豪快な滑降コースに見えた。北俣沢出会い付近で小休止した後、スキーアイゼンを効かして傾斜の急な上部斜面をジグザグ登高で高度を稼ぎ、一気に梅花皮小屋まで登り詰める。小休止の後スキーを担いで北股岳の山頂に立つ。

 当初は北股岳山頂から下がった支尾根下のあたりからルンゼに入ると思っていたが、北股岳山頂から門内岳への主稜線を100mほど下ったところが、以外にもこのルンゼのエントリーポイントであった。直下の斜面は北股沢上部ほどの傾斜は無いが、その下は狭くて急峻な斜面が一直線に続き、豆粒のような登山者が見える石転び沢まで続いている。エントリーポイントはすぐに解ったので、すぐに滑降の体制を整えスタートする。出だしは北股沢左股ほどの傾斜は無いのであまり緊張感は感じない。

 斜面を十分に確認し、2本の亀裂の間を50m程斜滑降で下った後ジャンプターンで刻み、慎重に亀裂を避けながら高度を落として行く。雪面はこの時期としては意外とフラットで、ブロックが落ちた様子もなく落石も皆無で綺麗だ。左股と比べるとかなり狭い斜面だが、一直線に石転び沢に飛び込むようなラインはは、何か宙に舞っているような気がして気分は最高。途中で1個所だけ亀裂が広がってキックターン1回を交えたが、その後中間部からは幅も少し広がり、下部の広い斜面はスピードに乗ったターンを思う存分楽しみ、連続ターンで一気に飛ばしてあっという間に石転び沢に滑り込む。雪が締まってエッジコントロールがし易く、思いっきりフォールラインに突っ込んでもあまり不安は感じない。

       
          北股岳直下の北股沢左股上部斜面        北股沢右股から石転び沢を俯瞰する        

 石転び沢との合流地点で小休止していると、飯豊山荘を出発した10人前後の登山者が次々と上がってくる。スキーを履いた登山者が一人ハイスピードでシールを効かせながら登ってきたが、途中からスキーを脱いでアイゼン歩行に切り替えて上がってきた。何となく追われるような感じで落ち着かないが、スキーアイゼンとシールを効かせ、本日2回目の石転び沢の急斜面を登り返す。小屋に着いてみると小国山岳会の管理人さんが既に梶川尾根から上がっており、誰もいない小屋の整備と清掃を行っていた。もっと時間の余裕があれば、ここから石転び沢と反対側の飯豊川方面に滑り込んでみたいところだが、既にそんな体力も気力も無い。楽しみは次のシーズンに取っておいて、大日岳方面の雄大な山並みを見ながら、今度来た時のコース取りを想像しながらプランを練るのもまた楽しい。

 小屋で腹ごしらえをした後、2本目のルンゼを目指し今度は 梅花皮岳を登り切り、東面に切れ落ちた本石転び沢の斜面を観察する。写真で見た通り直下の斜面は幅7〜8m程と狭く、傾斜はかなりきつい様子。しかしその下は広大なカール状の長大な斜面が何処までも連続し、はるか下の石転び沢に続いている。エントリーポイント直下の斜面は急峻で手ごわさそうだが、まだ斜面は良く締まっており意外と滑りやすそうにも思える。山頂で大日岳、御西岳、飯豊本山方面をデジカメに収め、早速2度目の滑降の準備を整える。

 スタートして10mほどの急斜面は慎重に横滑りでやり過ごし、その後はエッジの感触を楽しみながらジャンプターンでリズムに乗って快適に高度を下げてゆく。斜面全体には全く亀裂が無く、気温が低めでスキーも良く走り、落石も殆ど無い素晴らしい斜面を降りて行く感触は実に心地よい。あえて欲を言うならば、本石転び沢に入ってしまうと左手の尾根に遮られ、雄大な石転び沢の全容を見ることができないのが残念。高度差800m程あると流石に一気に飛ばしてゆくことはきつく、途中2回立ち止まってデジカメで写真をとりながら下降してゆく。ようやく石転び沢に入ってからは緩斜面をロングターンでの滑りを楽しみ、石転び沢出合いの大岩を飛ばしてその後間もなく終了点の地竹原に到着して終了した。その後スキーを背負って1時間弱歩くと、飯豊山荘に到着した。

       
             2ルンゼの亀裂を慎重にクリアー           右股の上部を仰ぎ見る

        
              北股岳直下の北股沢                 石転び沢の最後の雪壁

       
       梅花皮岳山頂直下の本石転び沢上部斜面          長大な本石転び沢の全景

【印象】

 今回はこの時期としては予想以上に雪の状態が良く、自分でも大変満足の出来る滑りをする事が出来た。山スキーはまったく雪の状態と天候次第だと改めて認識した。今回の右股上部斜面は北股沢左股程に急峻ではないが、その下は狭いが一直線に石転び沢まで滑り込む快適なルンゼで、北股沢左股に匹敵するような面白い滑降ラインに思える。又本石転び沢は不遇な存在で石転び沢からその全貌は殆ど見えないが、急斜面が中間部まで連続する長大なルンゼで、ダナミックな滑りを満喫できるすばらしいラインで充実感がある。飯豊連邦ならではの雪の豊富さは特筆に値し、梅花皮岳山頂から雪渓の終了点である地竹原までは高度差1350mの斜面が連続する。5月の連休中は場合によって長者原の梅花皮荘から温身平まで1時間30分ほどのアルバイトとなり、アプローチは決して楽なところではないが、それを物ともしないスキーヤーにとってはすばらしいフィールドが広がるエリアです。
 
                

                 今回の北股沢右股の滑降ライン。左側はH15年5月5日に滑降した左股。

北股沢右俣 本石転び沢 MAP


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