村山葉山 北面烏帽子岩コース 2009.03
1217mピークから烏帽子岩を目指す
山 域 |
山形県 村山葉山 (1461.7m) |
山行日時 |
2009年3月1日(日) |
天 候 |
晴天 -0℃ (山頂付近) |
メンバー |
9名(柴田、上野、菊池、荒谷、大場、阿部兄、鳴海、蒲生)※西川山岳会+坂野
|
行 程 |
大鳥居7:45〜三枚平〜尾根の取り付き8:50〜1217m11:15〜烏帽子岩12:31〜奥の院13:15 14:05〜烏帽子岩カール状斜面下降14:26〜富並川15:07〜大鳥居16:45 GPS積算距離 24.0km |
このコースは昨年に続いて3度目のトライとなるが、今度こそは宿題を片付けるつもりで西川山岳会のツアー同行させて頂いた。村山葉山は西面と東面では非対称な地形となっているが、平凡な姿の西面と異なって東面は特異な馬蹄形の内院地形となっている。標高は1500mに満たない山だがその内院側には障壁が連なり、富並川から立入って見るとそのすばらしい景観に驚かされる。月山の右隣に位置する葉山は比較的地味な存在で、無積雪期には余り注目されないどちらかと言えば不遇な山だが、山スキーヤーにとっては意外な発見があって魅力的だ。
内院といえばネパールヒマラヤのアンナプルナ内院、インドヒマラヤのナンダデビィ内院が有名だが、東北ではもちろん日本でも数少ない地形だろう。30年以上も前にアンナプルナ内院を訪れた事があるが、最奥にアンナプルナ南壁が位置するイメージの記憶があり、なんとなく古い思い出が蘇る山でもあった。もちろんヒマラヤの氷河地形とは異なるだろうが、スケールも格段に違うとはいえ葉山内院といっても良いでしょう。
【概要】
村山道の駅で待ち合わせの後山ノ内に向かった車は9台で、大鳥居の道路にずらりと駐車する姿はちょっと違和感も感じた。柴田さんが集落の一軒に挨拶を済ませた後、除雪の終了点から身支度を整えて林道からスタートし、葉山の山頂方面を目指して行程の長い烏帽子岩コースを辿って行く。この先の三枚橋の放牧場はスノーモービルランドの様で、トラックベルトに導かれながら進んで行くと放牧地となり、前方には烏帽子岩方面に通じる尾根の取り付き点が見えてくる。
立派な杉林から伐採跡地の急斜面に取り付き、シールを効かせながら登りつ詰めると間もなくブナの疎林帯となり、右に50mもトラバースすると楽に尾根上に立つ事が出来た。前日の晴天と朝の放射冷却で雪面が締まったのか、固めの斜面にジグを切りながら快適に高度を上げて行く。
|
|
|
三枚橋の放牧場から左手の尾根へ |
|
杉の伐採跡地を辿って右の尾根に取り付くへ |
|
|
|
もしパウダーだったらお楽しみの斜面となりそう |
|
意外と広い尾根を登る |
|
|
|
急斜面のブナの疎林帯を行く |
|
1217mピークからの眺望は抜群 |
|
|
|
烏帽子岩直下は内院へ切れ落ちている |
|
豊富な積雪は魅力的なコースを提供してくれる |
昨年の2月にこの尾根を訪れた時にはラッセルが続いたが、今日はスキーアイゼンが欲しくなるほどの斜面が続き、下降コースに採るならば快適なツリーランが楽しめそうだ。高度を上げるに従って周りは視界が広がり、急なブナ林の斜面を登り切ると927mのピークを通過して平坦になる。この先は一段と尾根が広がった疎林帯にコースを取り、所々左に雪庇を見ながら景観を楽しみながら通過して行く。
1081mのピークを越える辺りから新庄神室・栗駒山方面も見渡せ、さらに北側には白く眩しい様な鳥海山も姿を現す。東側の船形山方面から南側の蔵王連峰が連なり、やがて烏帽子岩方面には月山が姿を現し、広い1217mからはまさに展望台の様な景観でスキーヤーの心を魅了する。内院を形成する富並川の斜面には豊富な雪が張り付き、1400mクラスの山とは思えない様な迫力と品格があり、美しくて魅惑的な尾根が遥か先の山頂まで続く。
|
|
|
|
|
|
|
葉山本峰周辺のルンゼが気になる |
|
月山界隈だけに積雪は豊富 |
|
|
|
雪庇もを廻り込んで尾根上へ |
|
まるで山スキーの為のコース |
|
|
|
月山の東面 (右の稜線は北月山コース) |
|
烏帽子岩下のトラバース |
|
|
|
遥か遠くには鳥海山の姿へ |
|
核心部の烏帽子岩通過して奥の院を目指す |
|
このコースのシンボルでも有る烏帽子岩手前のピークで小休止を取るが、残念ながら2名はここから引き返す事になり、残り7名は引き続き山頂狙いで烏帽子岩の通過に取り掛かる。ふと前方の烏帽子岩を見るとピークには意外な先客がおり、良く見るとそれはカモシカでやがて姿を消していった。傾斜のきつい烏帽子岩の北側はクラストすると緊張するが、幸いにも今回はシールでトラバース出来る程度の硬さの斜面で、最後はジグを切って20mほど斜面を登ると雪庇のコルに立つ。内院側は鋭く切れ落ちて雪庇が東側に張り出し、コースは狭い尾根上の雪庇を通過して前進する。
この先は左手内院に広がる見事な無木立斜面が広がり、左手に雪庇を伴った美しい尾根が山頂まで続いている。烏帽子岩直下の斜面は顕著なカール状を形成し、その下部は狭いルンゼとなって富並川へと落ち込んでいた。スキーヤーにとっては実に魅力的な斜面で、誰でもが一度は飛び込んで見たいと思う様な絵になる光景だ。ここまで来ると流石に疲れを感じるようになるが、葉山の山頂が我々を手招きして微笑んでいる様で、ここから引き返そうと言うメンバーは誰もいなかった。(言えない雰囲気だったかも?)
|
|
|
烏帽子岩付近から北側の鳥海山 |
|
烏帽子岩カールから葉山の本峰へ |
|
|
|
もう一息の葉山山頂だが実は意外と遠い |
|
奥の院直下の斜面を通過する |
山頂方面へのトラバース斜面はスキーアイゼンが欲しくなるが、到達目標時間を20分オーバーして奥の院に到着し、今回はここを終点と決めて後は下降とする。葉山山頂にはあと30分ほどの距離だがこれでも十分満足の行く結果で、真正面に立ちはだかる月山の雄姿にも感動する。山頂では吹き付ける風が冷たいので10mほど下がり、後に続いて到着した二人を待って遅い昼食とし、体を休めた後にシールを剥がして下降の体制を整える。
奥の院からは雪も締まって板も良く走り、緩い上り返しを経て尾根を引き返すと1388.1mに至り、下降コースは先ほどの烏帽子岩下のカール斜面と決め手様子を伺う。当然トップは当然柴田さんに決まっていて、斜滑降から様子を伺った後はカールの底を目掛けて飛び込んでいった。コースは東斜面の為モナカ雪を心配したが、固めでフラットな斜面は比較的滑りやすく、多少トップを浮かせると連続ターンは快適だった。しかしちょっと油断するとトップを引っ掛け、バランスを崩して撃沈してしまう。
カール斜面の底からは烏帽子岩経由の一般道へのトラバースを考えたが、そのままルンゼを下降できそうなので柴田さんがトップで降りて行く。急峻なルンゼは狭かったが滝が露出している様子も無く、そのままどんどん降りて行くと散乱したブロック帯を通過し、その後谷が開けて傾斜も落ちてくる。その後はザラメぽい雪質で滑りは良く、狭い尾根筋を辿って行くと富並川の本流に到着する。本流周辺は杉の植林地となっており、烏帽子岩に至る一般道下でスノーブリッジを渡ると林道に辿り着いた。
|
|
|
|
|
|
|
奥の院からは月山東面の雄姿が |
|
烏帽子岩方面の下降コース |
|
|
|
烏帽子岩カール斜面に飛び込んで富並川を目指す |
|
パックした斜面だが快適 |
|
|
|
葉山の内院へのルンゼを目指す |
|
適度な傾斜で楽しい下降 |
|
|
|
開放的なカール斜面 |
|
富並川へ狭いルンゼを下降する |
|
|
|
下部はブロックが散乱してやや荒れ模様 |
|
下部の緩斜面はややザラメ模様 |
|
|
|
林道には湿雪雪崩れ? |
|
対岸の斜面も春の雪崩れ跡 |
|
|
|
林道はスキーが良く走ってラクチン滑降が続いたが、途中2ヶ所のルンゼでは規模の大きいデブリで埋め尽くされていた。これは湿雪雪崩れだそうだが、何か例年より2〜3週間ほど早い春の訪れを感じさせる光景だった。最後のルンゼはブロックで荒れて余り快適ではなかったが、上部の烏帽子岩カールで楽しめたので結果は良しとしよう。
このコースはロケーションは抜群でコースも変化と緊張感有り、技術的・体力的にもややレベルの高い素晴らしいコースだと思います。殆ど知られていないので訪れる人も稀な様子だが、北面のコースの為1月〜2月頃のパウダー狙いも面白そうで、烏帽子岩までの往復山行でも十分に楽しめると思います。なお、3月以降は烏帽子岩北側の斜面はクラストし易く、トラバースの為にはスキーアイゼン又は歩行アイゼンを持参した方が良いでしょう。
※上野さん・柴田さん・蒲生さんの画像を一部掲載させて頂きました。
|
|
村山葉山 烏帽子岩コース〜奥の院〜葉山内院 MAP
|
|