この時期に月山を訪れるのは今年で3年連続だが、今年も1週間ほど前から週間予報支援図を眺め、3日前には絶好のチャンスが訪れると思っていた。結果、予報は当たって降雪後のワンチャンス到来となり、山頂を踏んでしかも東斜面のパウダーランのオマケまで付く幸運に恵まれ、シーズンの幕開けとしては出来過ぎた位の1日だった。
昨年当たりは姥ヶ岳方面にも多くの人影が見られたが、今年は暖冬模様の為か意外とお客さんは少なく、姥ヶ岳東斜面のトラックもまばらで静かなのは意外だった。半年振りで出会う顔見知りのスキーヤーの姿も無く、何となく物足りないような気もしたが、それでもノントラックの大斜面をプチラッセルする感触も心地良い。
今頃北海道や立山方面はどうなっているか知らないが、東北でこれだけ満足した初滑りの出来るエリアは他に有るのだろうか?何時もそのような事を考えると何となく幸せ気分になり、何時もの様に志津の駐車場を目指して仙台を出発した。
【概要】
何時もの駐車場にはゲートが無くてそのまま通過し、工事車両が通る道路を進んで行くとネイチャーセンターとの分岐で終点になる。身支度をしていると単独のテレマーカーが後から来て先行して行き、間もなくすると単独の山スキーヤーの車が隣に到着する。話を聞くと月山山頂を目指している様子だが、自分は先行するテレマーカーの後を追って間もなく出発する。
姥ヶ岳に至る車道は20.0cm位の積雪だが、歩いてみると10.0cm位のプチラッセル程度で歩き易く、15分ほど歩いて先行するテレマーカーを追い抜いてラッセルを交代する。今回はレギュラーのシンテシにするか、またはパウダー狙いでファットのポケロケにするか悩んだが、道路歩きと山頂直下のクラスト斜面登高を考え、歩き優先のシンテシにしておいた。
天候は曇りがちだが次第に青空が姿を現し、朝日に輝く湯殿山東斜面を見ると次第に登高意欲が出て来る。積雪量は平年より少なくて電信柱沿いのルートは使えないが、結局何時もと同じ位の時間で姥沢に到着する。姥沢に到着してみると姥ヶ岳の山頂も姿を現し、青空をバックに眩い月山の雄姿が聳えていた。
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姥沢を目指してモクモクと進む |
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姥沢からの月山山頂 |
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姥沢小屋の前を通過してリフト下駅へ |
リフト下駅で小休止していると単独のテレマーカーが到着し、すぐに後を追ってリフト下の斜面にジグを切って2人で登り始める。今日の気温は高めだが意外と雪質は良く、軽いラッセルを交えながらトップで順調に高度を上げて行く。びっしりと氷が張り付いた潅木帯が美しくて、白く眩しい姥ヶ岳は厳冬期を感じさせる程の迫力が有る。
リフト上駅を通過して姥ヶ岳東斜面のトラバースを行い、立ち止まってデジカメでパチパチやっていると、後からやって来た単独の山スキーヤーに追いつかれる。天候は安定して青空が広がり、風も余り無くて山頂を狙うにはベストコンディション。この先は抜きつ抜かれずの感じで進み、金姥を過ぎると眼下に広がる景色は既に厳冬期の様相で、シールを効かせながらクラストした尾根を進んで紫灯森を通過して行く。何時もながらここから眺める山頂直下の斜面は迫力があり、やや緊張気味の雰囲気でクラスト斜面に取り付いて山頂を目指す。
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リフトの上駅から先は厳冬期の雰囲気 |
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雪煙を上げる姥ヶ岳の山頂 |
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牛首付近から月山の山頂方面へ |
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ドンドン山頂が近づいてくる |
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斜面の途中まではシールを効かせて行くが、中盤からはスキーアイゼンの出番となり、シンテシにセットしたロングタイプの爪を効かせてジグを切って行く。春スキーの頃の様な氷の斜面ではないので、爪をしっかり効かせれば何の不安も無く通過が可能で、後ろを振り向きながら後続の山スキーヤーをモデルに写真を撮る。眼下に広がる白い尾根は美しく、何時も見事なコントラストを描いて中々絵になる光景だ。
しかし、山頂に辿り着いて初めて気が付いたが、ISO感度の設定を間違えてしまい、撮った写真は露出オーバーの失敗作ばかり。適当に画像処理したが不自然なコントラストが残り、まともな画像は殆ど無しと言う結果になった。何時もシーズン最初には必ずポカをやらかしてしまうのが常で、何かしら装備を忘れてきたりするのは毎度の事だ。
ここから姥ヶ岳方面を振り返ってみるが、姥ヶ岳には2〜3人の姿が見られる意外、月山を目指すような人は誰もなさそうで、結局山スキーヤー2人の貸切状態と言う事になった。流石に山頂を目指す人は少ないだろうが、こんなベストコンディションでも人が疎らなのは不思議な気がする。
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山頂方面には雪庇が出てきて真冬の雰囲気 |
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クラストした斜面にスキーアイゼンを効かせる |
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月山の山頂からはクッキリと鳥海山の雄姿が・・・ |
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山頂から見下ろす西面の様子 |
急なクラストした斜面を登り切ってからはシュカブラ帯が続き、出来るだけフラットな斜面を拾いながら前進し、雪に閉ざされた山頂小屋を通過した後、志津から4時間30分で山頂に到着する。山頂は流石に風が強いがそれ程の寒気は感じられず、温度計を見ると+2.0度を指していた。それでも山頂の雰囲気は厳冬期の雰囲気があり、遠く北方には真っ白い鳥海山が雲の上に聳えている。
一緒に登って来た山スキーヤーも東斜面には興味深々の様子で、ここまで来たら滑って帰るしかないだろうと持ちかけると二つ返事でGoサインが帰ってきた。東斜面はやや雪は少ないものの吹き溜まった雪が残り、上質のパウダー斜面がボトムまで続いている。毎年この時期に山頂に立っているが何時もパックされた雪で、今日は今まででは最高の雪質に思われた。この斜面は山頂を踏んだ者だけに与えられるご褒美で、ここで満足な1本を刻んだらならばもう他は何も要らない。
斜面を眺めるともう既に滑降モードに変わり、休憩もそこそこにシールを剥がして準備を整える。お客さんには申し訳ないが、「お先に」と一言残して慌しくスタート切る。雪質はパフパフのパウダーとは言えないが、思い切って蹴散らした時の感触と浮遊感は快感で、チューンナップしたての板は新雪への切れ込み具合が心地よい。やっぱりスキーは道具だなと納得。
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月山山頂に立ってからは東斜面のパウダーを満喫 |
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標高差200mのパウダー斜面 |
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元気なスキーヤーはボトムまで |
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姥ヶ岳からの月山南面 |
斜面をショートターンで刻んで降りて行き、所々露出した岩を避けながら滑り込み、約180m程降りたところを終点として立ち止まる。後続した山スキーヤーはロングターンぎみに降りて行き、元気いっぱいにボトムまで滑り込んで立ち止まった。登り返しは流石に疲れが出てしまい、山頂の小屋で風を避けて小休止する。
後続を待ってみたが中々姿を現さないので先を急ぎ、シュカブラ帯はシールを付けたままで通過し、結局山頂直下のクラスト斜面もそのまま降りて行く。山頂で満足な1本が刻めたので、その他のクラスト斜面にはもう興味が無い。牛首〜紫灯森〜金姥まではシールで多少のアップダウンをこなし、姥ヶ岳への登り返し斜面で小休止を取った後に山頂に立つ。
姥ヶ岳ではボーダー2人と山スキーヤー1名の姿が有ったが、東斜面のトラックは少なくてお客さんの入りは低調の様子だった。早速シールを剥がして姥ヶ岳東斜面に滑り込んだが、雪はやや重いもののパウダーの感触は楽しめて、深い吹き溜まりの浮遊感を味わってリフト上駅に到着する。
既にリフト下の斜面は大荒れ状態だが、板が良く走るのでスピードをセーブしながら慎重に降りて行く。気温が高めでも午後に雪が腐る事も無く、後は高速道路の様なトレースを追って志津まで一気に降りて行った。
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