中央蔵王 峩々温泉〜熊野避難小屋

追分付近から熊野岳を目指す


【期日】     平成15年2月16日
【メンバー】  荒井 坂野
【天候】    曇り
【行程】    峩々温泉8:00〜名号峰11:05〜熊野非難小屋12:15 13:00〜峩々温泉15:1着

【概要】

 今季3回目のツアーもなんとなく蔵王に決まる。このところは晴天続きで相性も大変良く、少しばかり入れ込んでしまったきらいもあるが、何となく冬の蔵王から遠ざかってから25年近くも経つと昔の感触が甦り、ついつい地図を眺めては面白そうな稜線や谷筋を見入ってしまう。

 かつて山スキーは山の道具であり目的ではなくただの手段に過ぎなかったが、今は歩くことに加え滑る楽しみが加わり、冬山の楽しみ方を倍増させてくれるのが実に嬉しい。のんびり行くのもよし、または晴天を生かして日帰りで大きく距離を稼いで見るのも良し。自分の好きなペースで好きなコースを自由に、そして静かに歩くのも思いどうりで何も気兼ねなく行く。これもひとつの贅沢とも言えるのかもしれないが、一つの道楽としては満足度が高いと自分では思っている。

 今回も蔵王を自分の庭と自他共に認める荒井君の誘いに乗り、早朝車を飛ばして遠刈田温泉に7:00AMに到着して合流。天候の変化と行動時間、距離を考慮して当初の予定どうり峩々温泉から熊野岳山頂の往復に決定し、早速身支度を整え出発する。朝から雲が掛かる何となく怪しい天候だが、午後までは天候がもってくれる事を信じ、ただひたすらに峩々温泉裏の急な林の斜面をスキーで高度を稼ぐ。今年の蔵王は2月に入り降雪が少なく、ブッシュが多い林に急斜面はけっこう上りにくいし、最近降った物と思われる雨のせいで雪がアイスバーン状になって硬く、シールが滑りまたエッジも効かず苦労する。

      

             シールが効かず滑り落ちる               ブッシュを抜けて登山道に戻る

 トラバース気味に登山道に沿ってゆくが途中からルートがそれ、いつの間にか稜線まで上がってしまい再び登山道まで下り気味に進む。少し時間をロスしてしまったがここから先は広い稜線どうしのルートなので、視界が利いていれば何の問題もないが、ガスられると迷いやすく注意が必要な所もある。注意していないと反対側の沢に入ってしまうので注意が必要だ。

 途中一箇所だけ痩せた尾根が出てくるがジグザグ登行で切り抜け、1346m地点を過ぎると視界が開け、刈田岳、杉が峰、不忘山方面が良く見える。ここから澄川スキー場方面を見ると、大黒天から澄川に切れ落ちたところの不帰ノ滝の滝がよく見え、青々とした氷が発達していて見事な光景なので見入ってしまう。現役の時代から話題にはなっていたが、結局取り付くことも無く忘れ去っていたが今はどうなっているのだろうか。誰か登ったという話も無く、また取り付いたということも聞かないがトライした者もいるだろう。現在の最先端のギアと、テク、そしてやる気と度胸があればいつか攻略ができるのでは?ただし氷の状態が良ければの話だが。

 主稜線からは熊野岳非難小屋方面がまだ良く見えるが、西の方面から雲がかかり明らかに天候が悪化しているのが分かる。帰りに視界が利かないと峩々温泉に下る尾根が広くて解りにくく、難儀しそうなので登ったら早いとこ下山にかかりたいので、熊野岳の山頂はあきらめ今日は非難小屋までとする。

 熊野方面への上りは風が強まり手がかじかんで来たので、ウールの手袋にインナー手袋をしてさらに登行を続け、途中で2回の小休止を含めてようやく熊野岳非難小屋に到着した。ここから辺りを見回してみると、刈田岳方面から馬の背こちらに歩いている二人の登山者が見えるが、それ以外は誰も見当たらず実に静かな山だ。刈田の非難小屋付近は今や観光地と化し、登山者以外にスノーボーダー、テレマーカー、スノーシューを履いた若者、雪上車に乗った多くの団体さんなどで賑わっており、昔風の山屋は今や少数派となっている。

 そんな騒々しさとは別に、熊野非難小屋は訪れる人も少なくひっそりとしている。入り口の雪を手で掻き分け、狭い扉をこじ開けて中に入るとようやく落ち着きを取り戻した。暫くすると馬の背の稜線を歩いていた二人がやって来たが、聞くと澄川ゲレンデから熊野岳をピストンしに来た朋友会の二人という事だ。

        

               熊野山頂はまだ遠い                 名号峰付近から熊野方面を見る

 小屋で缶ビールを開けて簡単に腹ごしらえをし、天候の悪化にせかされるようにして熊野非難小屋を出発し、シールは着けっぱなしで下降にかかる。まだ元のトレースが残っており、視界も利いているので下りはどんどん飛ばして行く。硬い雪の斜面に雪が積もったような状態だが、まだ2月の雪は粉雪に近くシールが団子になることも無く比較的快調で気分は良好。

 そう思っていると突然左のビンディングが誤脱してしまい、親切に頭から突っ込んでしまう。気を取り直してスキー靴をセットして再び滑ってみると、またもや簡単に誤脱してしまい2度目の転倒をしてしまう。どうやら新雪を滑っているときに後傾すると簡単に外れてようで、体重を前のほうにかけながら騙し騙し下ると何とか持ちこたえる事ができるようだ。

 峩々温泉が近くなると今度は藪との戦いとなり、アイスバーンの斜面をエッジを効かせながらのトラバースは結構くたびれる。どうしても山形県側と違い雪の少ない宮城蔵王方面は、下部に近づくと藪との格闘を強いられることが多いようだ。そんな訳で5回の転倒を経てようやく終点の峩々温泉までたどり着き、今日の予定を1時間ほどオーバーして終了する。

           

            熊野岳を目指して                 後烏帽子、大黒天方面

           

             名号峰への分岐                  名号峰への登り

           

                            大黒天方面                                                 樹林帯の滑降

           

                      アイスバーンのトラバース            峩々温泉に帰着 

  ちょうどこの1週間後に不帰ノ滝が仙台のクライマーによって登られた模様。おそらく初登と思われる。100M 3P 。3月1日にはほかのメンバーによって第2登されたが、当日の夕方に下部の氷が崩壊してしまったらしい。


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