飯豊連峰 大日杉〜大日岳往復
御西小屋から大日岳
【期日】 平成16年7月4日(日) ※スライドショー
【メンバー】 単独
【コースタイム】 大日杉4:30〜切合小屋8:00〜飯豊本山9:15〜御西岳11:00〜大日岳12:00〜御西岳〜飯豊本山14:00〜切合小屋15:40〜地蔵岳17:30〜大日杉18:45
【天候】 晴れのち雨
【概要】
最近ネット上で良く見かけるようになった飯豊本山日帰り山行。コースは飯豊温泉をスタート地点とするダイグラ尾根コースと、大日杉をスタート地点とする切合小屋経由のコースの2本。なかなか健脚の持ち主が多いと思いながら感心していたが、はたして自分の体力はいったいどの程度なのか?飯豊連峰の夏山主稜線を歩くのも30年以上もご無沙汰なので、興味深々となってきた。今まで朝日連峰での大朝日岳日帰り山行は何度か経験しているが、飯豊本山の日帰り山行はやった事がないのでこの際トライしてみる事にする。
大日杉小屋前に到着してみると既に15台ほどの車が駐車しており、夏山シーズン到来を感じさせる賑わいであった。身支度をしていると単独行一人が先行してしており、登り口の沢に缶ビールを1本冷やし、間もなく後を追うようにスタートして本山を目指す。最近刈り払いされたばかりの登山道は実に歩きやすく、程良い傾斜の樹林帯の尾根コースに取り付く。今日は何時に無く足が軽く、自分でも驚くくらいのハイペースで高度を稼いでゆく。今回は特別仕様の足回りで、何時も作業で履き慣れたのスパイク地下足袋を履いてきた。釣師の間ではウエーティングシューズのアプローチ用として一部で使われているようだが、以前から興味を持っていた代物だが今回始めての使用。
ざんげ坂の登り出しで先行の単独行者を追い越すと、その先は誰もいない静かなつづら折りの急登コースが連続するが、まだ気温が上がっていない為に体は楽に感じられる。御田を過ぎる辺りから少し傾斜も緩み、樹林帯の見通しの効かない登山道を地蔵岳を目指して進む。山頂近くで少し視界が開け、地蔵岳から南西方向に逆戻りするようにして三国岳の展望が開けてくる。ここからはアップダウンの繰り返しが続き、思うように飯豊本山の姿を見ることが出来ないが、次第にヒメサユリごこの辺から出て来る。御坪で今日始めての休憩とし、ここから初めて飯豊本山の山頂をまじかに見る。ここからはあまり距離感を感じず、山頂は手にとるような近さに感じてしまう。
1700m付近からダケカンバの林となり、視界が大きく開けて三国岳から切合小屋、そしてどっしりとした飯豊本山に至る主稜線の全容が目に飛び込んでくる。御沢の分かれからは綺麗に刈り払いがされた登山道を右に入り、少し下降すると雪渓から切合小屋に至るコースが続いている。雪渓歩きになると涼しい空気が実に心地よく、適度な雪渓の斜面を快適に詰めて主稜線に飛び出す。稜線の反対側は大日岳を盟主とした水晶尾根のすばらしい光景が目を引く。すばらしいスカイラインは登山者の登高意欲をあおり、何時かは歩いて見たいという気持ちが満ちてくる。特に冬の尾根に大きく張り出した雪庇、深く大きく切れ落ちたルンゼ、大きく張り出した尾根上の斜面。山スキーヤーにとっては又とない雄大なフィールドが広がる、素晴らしいエリアに違いない。
切合小屋では一人の登山者が本山に向けて出発準備を整えている所で、他に先行したパーティーは見られない様だった。小休止しておにぎりでおなかを満たし、飯豊本山を目指してすぐに出発。草履塚への登りは所々雪渓歩きを交え、少しずつ高度を上げながら本山に近づいてゆく。御秘所の岩場を通過するとしばらく平坦な歩きがあり、その後の御前坂の斜面が始まる。2000mラインを超した辺りから見上げると、一ノ王子の石組みが見え、その後には今日の目標である飯豊本山の山頂が続いている。頂上近くになると何時もはスピードが落ちてしまい、なかなか着かないのが普通だが、今日はちょっと事情が違う。何の苦も無く本山小屋に到着してしまったと言うのが実感で、少しばかり拍子抜けした感じで、予定時間を大幅に上回って9:15に本山小屋到着。
本山小屋には登山者の姿は無くなくひっそりした雰囲気だった。目標の飯豊本山には余裕で到着したので、当然ながらこの先の御西岳を目指す事にする。もし御西岳でのコンデションによっては大日岳も視野に入ってきた感じだった。天候は少しずつ西の方から崩れてきているようだが、ここまで来るとそんな事はもう頭の中にはない。小屋を出て駒形山方面に向かうと近くの雪渓が有り、缶ビールを1本埋めてさらに先を目指す。御西岳までは飯豊特有の静かで広大な主稜線歩きを充分に満喫し、気分良く草原の散歩を楽しみながら下ってゆく。ようやく御西岳小屋に到着すると、加治川方面から上がって来た8人前後の登山者が休んでいた。ここでゆっくり疲れを癒したい気もしたが、ここまで来れば大日岳のピークを踏まなければきっと後悔するという気持ちが先行し、おにぎり1個を食べて小休止の後にすぐ出発。
大日岳の往復は意外と2時間くらいで可能と思えたので、帰路の時間を計算して大日杉着6:30〜7:00PMを想定して歩き出した。大日岳は何処から見てもピラミダルな山容で実に見栄えのする大好きな山の一つである。山頂に近づく時の爽快感は飯豊連峰の中でも際立っている。途中で3人の登山者を追い越し、ちょうど1時間程で山頂に立つ。山頂からは何時もなかなか見ることの出来ない水晶尾根の稜線、男性的で深く切れ込んだ飯豊川流域の源流部。山頂から見るすばらしい光景は、ここまでたどり着いた者だけが味わえる贅沢の極みとも言える。もっとゆっくりしていたい所だが、次第に西の方面から雲に覆われてきて天候が崩れだし、何となく追われるようにして大日杉を出発する。御西小屋に戻ってみると登山者の姿は無く、どうやら烏帽子岳方面に向かった様だった。
御西岳小屋を出発する頃にはとうとう本山周辺もガスに覆われ始め、今にも雨が降り出そうと言う雰囲気で、少し焦るような気持ちで飯豊本山小屋を目指す。本山近くまで戻ってみると6〜7人の登山者が歩いている。切合小屋からやって来た人もいるようだが、後で解った事だがダイグラ尾根を日帰りで上がって来た方もいたようだった。ここで雪渓に冷やしておいた缶ビールを回収に出かけたが、すっかりガスられて探し出すことが出来なくてがっかりしてしまう。本山小屋での休憩もそこそこにして切合小屋方面を目指したのだが、今度はガスで方向を見失ってしまい、気が付いたら縦走路を外れて水場に下ってしまったが、すぐに気が付いて引き返しテント場付近の縦走路に戻る。御秘所を通過する頃には本格的な雨となり、さすがに今日の疲れが出てきた様で、なかなか切合小屋に到着しない。途中では本山小屋に向かう10人前後の登山者と会ったが、本山小屋はこの天候にもかかわらず大入り満員と言った様子だった。
切合小屋に休んでいるとなんだか体が冷えてくる様で、小休止の後すぐに出発して地蔵岳を目指す。復路は視界不良の為雪渓コースを諦め、登山道を忠実に下ったが、さすがに時間が掛かりなかなか御沢別れに到着しない。地蔵岳までの最低鞍部に着くまではいい加減に飽きてきたが、あちこちに咲き誇るヒメサユリを眺めながら元気を取り戻して歩きつづける。地蔵岳にようやく到着してここで一休み。
ここまで来ればこの先問題となるところはない。この先は登り返しがないので、後はただひたすら大日杉を目指して標高差900mを下るだけだ。見通しの効かない急な登山道を膝をガクガクいわせながら下るが、夕闇が迫ってくると時間ばかりが掛かっていっこうに大日杉に到着しない。やはり疲れているようだった。やっと沢の流れの音が聞こえ出し、眼下に大日杉小屋の赤い屋根が見えてきて間もなく到着。早速朝日沢で1本冷まして置いた缶ビールを回収に向かったが、なんと石で隠した時にでも傷が付いたのか、ビールは空っぽになっていた。大日岳ダブルの悲劇物語であった。