朝日連峰 寒江山、北寒江山周辺 2005.05




5月4日 北寒江山西面 ガッコ沢上流部斜面のテレマーカー。




 山 域  朝日連峰
 山行日時  2005年5月3〜5日
 天 候  3日 晴れ  4日 晴れ  5日 晴れ
 メンバー  スキー同行 柴田(西川山岳会) 坂野 
 行 程  5月3日 根子〜日暮小屋〜竜門小屋
   4日 中俣沢左俣、トウヌシ沢右俣、中ノ俣沢、ガッコ沢。
   5日 トウヌシ沢左俣尾根。竜門小屋〜日暮沢小屋〜根子。

 昨年5月の朝日連峰山スキーの感触が余りにも良かったので、今度は寒江山、北寒江山周辺の山スキーを目標に竜門小屋ベースの山行計画を立ててみた。今年の飯豊、朝日連峰は例年に無い大雪で、山スキーヤーにとっては期待の持てるシーズンにも思えた。今年も竜門小屋定着スタイルの山行なので、管理人の遠藤さん他、西川山岳会の皆さんとの再会も楽しみにしていたが、スキーは柴田氏さんに同行させて頂き、大変満足な山行となりました。
  
5月3日 根子5:15〜日暮小屋7:15〜竜門小屋13:30
4日 竜門小屋8:45〜竜門小屋帰着17:30  5日 竜門小屋8:00〜竜門小屋帰着9:30〜10:00〜日暮沢小屋12:15 13:15〜根子15:00 

5月3日
 仙台を出発して登山口の根子に到着したのは5:00AM。毎年の事ながらここからの林道は雪に覆われ、日暮沢小屋までは2時間のアルバイトが常識になっている。しかし今年の大雪の為に林道は雪が連続しており、スキーを履きっぱなしの方が歩きやすく疲れない様子。途中の見事なミズバショウの群生地を写真に納め、一人で黙々と夏の登山口の日暮沢小屋を目指す。全体の5分の1程のみが歩きで殆どスキーが使えてさい先は良い。

    
         ミズバショウの畑が眩しい                            イワウチ

 尾根の取り付き点から少し上がるとカタクリ、イワウチワが咲いており、スキーを背負って登るとやがて800m付近から雪の斜面となってようやくスキーの活躍の舞台となる。昨年の同じ時期と比べると200m程低い位置から雪の斜面が連続しており、今年の大雪を感じさせる状況だった。1226m地点の雪庇を乗り越えると森林限界となり、この後は緩やかな斜面の連続するスキー向きのコースとなる。しかしここまで調子に乗って飛ばしてきた為、次第にペースが落ちてきてザックの重みが肩に圧し掛かる。

   
          雪庇手前の斜面                             寒江山 北寒江山

 清太岩山で30分の大休止の後、ヨレヨレになりながらスキーを担いで竜門山を目指すが、この時ほどスキー板を思わず放り投げたくなった事は無い。スキーは履いてこそ価値があるが、その分の対価は余りにも大きな労力の提供を強いられる。しかしこれでもやはり止めら得ないのは山スキーの中毒症状か?ようやく竜門小屋に入ると管理人の遠藤さんが出迎えてくれ、良く冷えた自然水を頂きようやく生き返った心地。小屋には他にお客さんの姿は見られず、思わずリラックスしてしまって身動きが取れず、トウヌシ沢を軽く1本滑るという当初の予定はもろくも崩れてしまった。

   
         東面 大朝日岳方面                          竜門小屋から寒江山西面

5月4日
 
昨夜は疲れ気味の為何時もより早く就寝したが、その甲斐有ってか気力、体力共に好調な予感。朝はクラストした斜面を敬遠して8:45AMというスロースタート。既に柴田氏は昨日に寒江山、北寒江山のリサーチを済ませており、今回は全面的に同行させて頂くことにして後を追った。

【中俣沢左俣】


 今日最初の1本は寒江山西面の中俣沢の左俣の斜面。朝日連峰の主稜線の東面は豊富な雪の量が有り、多くのコースを提供してくれるが、西面となると雪の付きは少なくルンゼは狭く急峻で、余りスキー向きの斜面とはいえない。しかし寒江山、北寒江山周辺の西面は吹き溜まった膨大な雪の風地形を形成しており、行程差は200〜250m程と短いがスキー向けの斜面が見られる。


    
        寒江山西面  中俣沢                             中俣沢の中間部

 スタート地点は寒江山のピークから竜門山側に50m下がったポイント。雪は軽く締まり、1本目としては適度な傾斜と高度差で最初から飛ばして高度を下げてゆく。斜面は雨で流れてガタガタになっているが、中間部からはフラットになっていて滑りやすい。250mほど下降するとその下は切れ込んで狭いルンゼとなり、ここからスキーアイゼンをつけて登り返す。

【トウヌシ沢】
 寒江山で1本取った後は今日のメインエベントコースのトウヌシ沢の滑りに取り掛かる。この斜面は清太岩山から観察した時にもっとも目を引いたコースで、寒江山ピークから東面のトウヌシ沢の沢床まで明るくて広い斜面が一直線に連続している。スケールは標高差およそ650mで、竜門山東面の赤倉沢に匹敵する規模の大斜面である。昨年と比べれば積雪の量は少ない模様だが、下部は見附川本流まで斜面が繋がっているようで期待の持てるコース。

    
        寒江山東面 トウヌシ沢の上部斜面                     中俣沢左俣へ

 同行の柴田氏は昨日北寒江山から上部を滑り込み、既にこの斜面のリサーチを済ませているので大変に心強い。寒江山の頂上直下の緩い斜面から先頭の柴田氏に続きスタートすると、直後に傾斜が増して見附川本流にめがけてスピードの有るミドルターンで高度を下げてゆく。上部の斜面はフラットで適度なクラスト状態で快適。中間部からは雨で流れたガタガタ斜面となるが、余り堅くも無いのでそのままどんどん高度を下げてゆく。途中で上部を振り返ってみると心地よいスケールの感触が味わえ、このままとことん最終地点まで下降したくなってくる。しかし今回は少し数をこなしたいという本音に逆らえず、450m程下った地点で滑降終了として登り返す。


    
        寒江山から西面の中俣沢に源頭                      トウヌシ沢へドロッップイン

    
        トウヌシ沢の登り返し                              寒江山から北寒江山へ

【ガッコ沢】
 北寒江山に突き上げるガッコ沢は全国に知れ渡る高難度の沢で、エキスパート沢屋の中でも垂涎のルートと言われている。しかし源頭の沢の様相というと実に穏やかな斜面で、山スキーヤーにとっては又とないショートゲレンデのように見える。朝日連峰の西側は一般的に雪の付きが悪く、あまり魅力的には見えなかったがここは違った。雪の吹き溜まりが作る独特の風地形は飯豊連峰にも見られるが、豪雪地帯ではならではの特産物ともいえるかも知れない。

    
          ガッコ沢のエントリーポイント                  ガッコ沢源頭は以外に緩やかな斜面

 昨夜竜門小屋で一緒になった酒田の伊藤さんと再び出合ったので、この際同行に誘って三面コースを少し下ってスタート地点にた立つ。目指す斜面は最初は緩やかな片斜面だが、途中からガッコ沢に落ち込む側壁となり、その後は谷筋を狭めて急激に落ち込んでいる。スタートは柴田氏が先行して後に伊藤さんが続き、しんがりはカメラを構えて私が続く。傾斜は適度で側壁側は広いので開放感溢れる満足度で心地良い。思わずスピードを出しすぎてオーバーランしてしまったが、沢床で終了して高度差250mの斜面をスキーにポチヒモを付けてツボ足で登り返す。

【中俣沢右俣】 
 三面コースを挟んで反対側の中俣沢右俣は雪の付きが良く、柴田氏の観察どうりに源頭部は快適な滑降コースに見えた。緩やかな斜面から急に傾斜を増して沢床に落ち込む側壁だが、想像以上に広く開放感があって気分が良い。先程と同じく柴田、伊藤、坂野の順番にスタートすると、あっとい間に高度差200mを滑り込む。沢床からの登り返しの斜面はやはり膨大な量の雪の吹き溜まりで出来た風地形だった。

    
           中ノ沢の沢床へ                           自然の造形 中ノ沢の風地形

【高松沢上部偵察】
 
この辺で今日の予定メニューは全て終了したと思っていた所、柴田氏からもう1本の声がかかって伊藤さんと共にお付き合いする。既に4:00PMを過ぎていたので余り欲張った事は出来そうも無く、残念ながら東側の尾根を100m下降して間もなく北寒江山に登り返す。これは残された宿題という事で、来年の予定コースとしてブッキングしておこう。

    
          高松沢上部の偵察                           北寒江山への登り返し

    
        寒江山から大朝日岳 小朝日岳                      寒江山東面の斜面

 こんなに多くの本数を滑る事は予想していなかったが、それでもまだまだおいしそうな斜面は有りそうに見える。しかもその殆どはまだ手付かずの斜面で特に興味深く、来年のお楽しみがまた膨らんでくる。北寒江山から1時間で17:30に竜門小屋に戻ると、既に西川山岳会の別働パーティーが天狗小屋から到着し、大宴会はたけなわという状況だった。切れの良い自然水で喉を鳴らし、遅ればせながら早速宴会モードへと突入する。

5月5日

【トウヌシ沢右俣尾根】
 今日の10:00AMに全員が竜門小屋から下山予定となったので、最後の1本を小屋に近いトウヌシ沢に決めて出発する。やはり今日も柴田氏と同行したが、柴田氏は借り物のファンスキーを履いてスタンバイする。ドロップポイントは小屋近くの1588mピークから東面に滑り込むが、流石の柴田氏もカービングの強いファンスキーは勝手が違うと見え四苦八苦。直下の50mほどの急斜面をクリアーすると後は台地状の緩やかな斜面が続き、気分を良くしながら思いっきりロングターンで飛ばしてゆく。このまま何処までも滑り降りて行きたい所だが、下山のタイムリミットが迫っているので高度差250mあたりで主稜線めがけて登り返す。

    
         トウヌシ沢へファンスキーでトライ                     中間部はガタガタ斜面

    
         トウヌシ沢の斜面を振り返る                      続いて降りてきた山スキーヤー

 小屋に戻ると狐穴小屋からやって来た西川山岳会の3人のメンバーが加わり、一休みの後10:00AMに根子を目指して出発する。今年の朝日連峰の主稜線は雪が少ないものの、やはり清太岩山(1665m)付近から雪は多く、尾根上は殆どスキーの活躍する舞台となる。途中からのブナ林の尾根を快適に下降して800mまで滑り込む。竜門小屋から2時間15分で日暮沢に到着し、この時ばかりはスキーで本当に良かったと感じた。その後は後続部隊を待ち、1時間45分の林道歩きで根子に到着した。

    
  
         清太岩山手前の鞍部を滑るスキーヤー                      カタクリの花



北寒江山 寒江山周辺のMAP