朝日連峰 桧原〜1327mピーク〜赤見堂岳 2007.02



     

朝日連峰 赤見堂岳直下の斜面を下降する

     

 山 域  朝日連峰 赤見堂岳 (往復)
 山行日時  2007年2月25日(日)
 天 候  晴れ
 メンバー  千田 荒井 坂野 
 行 程  桧原〜1327mピーク〜赤見堂岳〜1327mピーク〜桧原

 1月21日の石見堂岳〜赤見堂岳〜石見堂岳北尾根に続き、今回は1本南の尾根を桧原から1327mピーク経由で赤見堂を目指した。この赤見堂岳は朝日連峰の北端に位置した山域だが、大朝日岳、竜門山、以東岳といった急峻な尾根のイメージとはまったく異なり、スタート地点から穏やかな尾根が山頂まで続く。しかも、朝日連峰特有の冬場での絶望的な林道歩きなどまったく無く、道路からいきなり取り付いて次第に高度を上げ、多少のアップダウンは有るものの殆どストレートに主稜線を目指す事が出来る。

 この簡潔明瞭な尾根は最初狭い雑木林の尾根だが、次第にブナ林のたおやかな尾根に変わり、森林限界を過ぎると左右に突然の大パノラマが出現する。今日は今季では後半の時期の快適パウダーを期待しながら、前回は特に印象深かった対岸の馬場平を辿り赤見堂岳を目指した。
  
【2月25日】 桧原6:15〜1126m地点8:30〜1327mピーク9:18〜赤見堂岳11:00 11:40〜馬場平12:35〜桧原13:25
 
 前日は大井沢で雪祭りの後の花火大会があったが、我々が到着した頃には既に終了して人影は無く、大井沢の温泉の駐車場で何時もの宴会。翌日に目を覚ますと外は放射冷却のおかげで−13℃を示し、空は見事な星空で今日の晴天を確約するものだった。車を出発点の桧原の蕎麦屋さんの裏に移動し、身支度を整えて大桧原川右岸の尾根に取り付く。上部の尾根が見えなくて取り付き点は判然としないが、道路そばの神社裏から小さな尾根の斜面を乗り越え、樹林帯の狭い尾根を登って行く。

 まもなくすると狭い尾根上にはブロックが我々の行く手を阻み、やむなく右の急斜面にジグを切って逃げて尾根上のピークに立つ。昨日降った10cmの雪の下はやや硬いバーンになっており、スキーアイゼンが無いので斜面にキックを効かせる。今日は見事な晴天に恵まれて放射冷却が進み、サラサラのパウダーが期待できそうで嬉しい。

杉林を過ぎると月山が登場 大井沢から望む月山は美しい 石見堂岳に至る対岸の尾根
 200m程高度を上げた杉林を過ぎると右手に月山・姥ヶ岳が姿を現し、右前方には1月21日にトレースした石見堂岳の白いドームが待ち構える。605.2mピークで一本とるとその後は小さなアップダウンが続くが、次第に視界が効いてくると登行意欲は高まる。狭い尾根は次第に広くなってきて歩き易い疎林となり、パウダーの林間コースとしては最適な雰囲気となる。
 

 1126.2mのピークから対岸の石見堂岳は接近し、突然に奥座敷の赤見堂岳の白いピークが姿を現す。この前に山頂から滑り込んだ主稜線から石見堂岳に至るコースが手に取るように見える。ここから見ると赤見堂岳〜石見堂岳の右回り周遊コースは楽勝に見えるが、高度を上げるに連れて距離感がつかめ、それが意外と遠いことに気が付く。しかし、大朝日岳・竜門山などへと辿る尾根とは異なり、いきなり急峻な尾根を登らされる訳ではなく、素晴らしいロケーションを堪能しながらの快適な登りは疲れなどまったく感じない。

や対岸の石見堂岳の白いドーム 南の対岸は紫ナデから障子岳方面の尾根

石突然視界が開けると馬場平 馬場平はパウダーの斜面 石見堂岳の後ろには秀麗な月山の姿

障子岳から以東岳はるか彼方に 赤見堂岳は重量感の有る立派なお姿
馬場平らから桧原へのの尾根を見下ろす 石見堂岳(右)と月山・湯殿山
 1126.2mピークから先は状況が一変し、緩い傾斜の白い大雪原が主稜線に向かって続いている。前回対岸の尾根を登ったときにも注目して見ていたが、今その真っ只中にいると何か異次元の世界にトリップした様で、東北の山では今まで味わったことの無いような感動を覚える。幸い今日は気温が低めでシール登行も快適で、きっと下りも板が良く走ってパウダーを思いっきり満喫できるだろう。

 この「馬場平」と呼ばれる雪原はフカフカの新雪が20cm位となるが、雪が軽いのでノンストップでどんどん進んで主稜線を目指す。右の石見堂岳の尾根からは月山が顔を覗かせ、左には障子岳・以東岳から竜門山・大朝日岳に至る遥かなる主稜線が連なる。果たしてこの主稜線を走破する者は現れるのだろうか?主稜線から深く切れ込んだルンゼの大斜面は何時陥落するのか?などなど、自分などには出来そうにも無い想像を掻き立てるのもまた楽しい。


馬場平から見る障子岳方面  1327mピークから障子岳に至る主稜線
 馬場平を過ぎて1210m地点を通過すると小さなうアップダウンが有り、その先は主稜線に続くややクラストした広い雪原となる1327mの主稜線上に立つと今度は遠く西面の出合川流域の山並みが目に飛び込んでくる。朝日連峰の北の盟主のような以東岳が奥に鎮座し、そこから北に茶畑へと続く白くて長い尾根が延びている。昨年の5月にスキーで歩いた尾根だが、大鳥集落から以東岳にいたるコースは流石にはるか彼方に思えた。

 南には大桧原山〜紫ナデ〜障子岳にいたる尾根が続くが、これもアップダウンを繰り返して遥か遠く結構厳しそうだ。この赤見堂岳周辺は北・西・南の大パノラマに囲われ、他所の山域では決して味わえない素晴らしさが有る。しかもこの恩恵に預かれる者はまず山スキーヤーだけで、誰もいない空間を独占できる贅沢は何よりもに素晴らしい。

 この先の赤見堂岳への雄大な主稜線が連なっているが、ここまで来るとまるで頂上に吸い寄せられるようにしてただひたすら前進する。出合側流域からの風は流石に冷たいが、うるさいシュカブラも無く吹き溜まりのパウダーも心地よい。緩やかな斜面を斜上して行くとそこは見覚えの有る山頂だった。
赤見堂岳へ最後の斜面を行く 赤見堂岳山頂から西側の大桧原山(左)と以東岳(中央の奥)
赤見堂岳から石見堂岳方面に滑ってみる 赤見堂の山頂中っかのや硬い斜面を降りて行く
 山頂でシールを剥がし、ハイオク梅酒のボトルを取り出してゴクッと鳴らすと体に染み渡る。簡単なランチタイムを終了して滑降の準備にに取り掛かっていると、遠く馬場平方面に何人かの人影が見えた。おそらく遅れて出発した西川山岳会パーティーとすぐ想像がついたが、今から赤見堂岳〜石見堂岳を周遊するとなると少し大変そうにも思えた。

 当初山頂からは右回りの石見堂岳周遊を考えていたが、メンバーから今回3回目の石見堂下りは勘弁して欲しいと泣きが入り、未練はあったものの往路を引き返して馬場平を下る事にする。スタートすると山頂はややクラストしているがまもなくパウダーとなり、スキー場のような緩いノントラック斜面に思い思いのシュプールを描いて行く。今日は寒気が残って気温が低く、板は良く走って緩斜面でも十分パウダーを満喫できる。

 多少の登り返しはあるがそのまま難なく通過し、馬場平に到着するとランチタイム中の西川山岳会の皆さん6名に出会った。皆さん必持の自然水を御所望中の様子で、これから馬力アップして赤見堂岳を目指すようだった。お先に失礼して馬場平を通過するとその後はブナ林のツリーランコースとなり、ここからはパウダーランにはもってこいの尾根だった。途中から次第に雪が重くなってくるが、尾根の幅もあって適度な斜度が有り、多少のアップダウンを繰り返しながら快適に下りて行く。800m付近から次第に雪が腐ってくるが、慎重に狭い尾根上で慎重にスキーを回し、最後は斜めに板をずらして急な斜面を下る。やがて田んぼに出ると出発点の桧原はすぐだった。

※ なお、もしも今後この山域を目指す方へ。
 今年は暖冬で朝日連峰でも雪は少なく、標高400mほどの尾根の取り付き点では雪解けが早く、4月に入れば尾根の末端はブッシュが露出すると思われます。快適に登下降することが出来るのは3月いっぱい位でしょう。
広赤見堂岳〜1327mピークへ 赤見堂岳から1327mピークは快適パウダー
1327mピーク付近から月山を望む 比較的広い疎林は理想的なパウダーのツリーラン




朝日連峰 桧原〜赤見堂岳 MAP