朝日連峰 大朝日岳 Y字雪渓〜入リソウカ沢  2004.05.09




Y字雪渓の上部斜面



【期日】   2004年 5月9日(日)
【山域】   朝日連峰
【メンバー】 単独
【コース】  古寺鉱泉〜古寺山〜大朝日岳(1870m)〜Y字雪渓(250m程下降)〜大朝日小屋〜金色水〜入リソウカ沢(1150m地点)〜熊越(登り返し)〜小朝日岳〜古寺山〜古寺鉱泉
【用具】   ピューマ シンテシ 165cm、デアミール フリーライド、ガルモント Gーライト
【天候】   晴れのち曇り

【概要】


 先週の連休には幸運にも好天に恵まれ、曲がりなるにも朝日連峰で3本のルンゼを滑る事が出来た。今年3月にスキーを担いで日暮沢から入山し、古寺山で1泊の後大朝日岳に登頂する事が出来たが、意外とスキーを有効に活用すればもっとフィールドが広がるのではないかと考えた。今回は日帰りで大朝日岳を登頂し、山頂から大朝日岳の象徴とも言えるY字雪渓を滑った後、金玉水から東面の入リソウカ沢を滑り込み、対岸の小朝日岳と古寺山のコルに突き上げるルンゼを詰め、古寺山から古寺鉱泉に降りるという計画であった。あまり山スキーの記録を見ない朝日連峰なので他に記録は無く、果たして下部の雪渓を通過出来るかどうか全くわからないが、とにかく行ってみる事にして出発した。

 5:30AMに古寺鉱泉を出発し、ようやく1000m付近からシール登高となる。今年は雪解けが特に早いのか、3月に古寺山から古寺鉱泉に下降した頃の面影も無い藪が密生した斜面に変わっていた。ハナヌキ峰を越える辺りで目にした斜面は、太さ10cm以上もある樹木が雪で押しつぶされていて、雪解けで所々雪の斜面から立ち上がっている。ここから古寺山までの斜面はシールを効かせてジグザグ登高で乗り切り、その後は小朝日岳までは強引にスキーで登ったが、その先大朝日小屋までは3分の1程スキーを担いでの登りとなる。大朝日小屋に近づいた頃、今日で唯一の3名の登山者が大朝日岳山頂に立っているのが見えたが、それ以外の登山者は無く静かな山行だった。ここから見るY字雪渓は山頂から広い急峻な雪壁が連続し、下部のガンガラ沢になぎ落ちている様子でなかなかの迫力を感じる光景だ。ギャラリーがいれば格好の舞台なのだが、今日のお客さんは皆無で少し寂しいような気もする。

 山頂で缶ビールを飲み干してからようやく滑降の体制を整え、下部の斜面のコースを確認してからスタートする。今日は曇りがちで少し気温が低く、雪が締まっていてエッジの切れも良くコンデションとしては良い。上部斜面の傾斜は意外と広く雪の状態が良く何の不安も感じないので、適度な斜面を快適にショートターンを刻んで高度を下げて行く。次第に雪渓の幅は狭まってくると傾斜を増し、途中に1箇所の亀裂が出てきて慎重にクリアーしながら滑り込んでゆく。今日は曇りがちで気温が比較的低いので、雪は適当に締まっていてエッジの切れ味も良い。滑ってみると斜面の傾斜も意外とそれ程ではなく、大変に調子が良いのでこのままどんどん飛ばし雪渓の末端まで行きたいところだ。しかし大朝日小屋への登り返しを考えて250mほど下った所で今日は打ち止めとし、ガンガラ沢源頭の斜面をツボ足で登り返しに取り掛かる。

        
          小朝日岳から見る大朝日岳方面           先週滑った竜門山東面の斜面

        
              入リソウカ沢の全景                大朝日岳から大朝日小屋、以東岳

        
             Y字雪渓の上部斜面                  中間部は少し狭く傾斜が増す

 上り返し地点からは近くてすぐ手が届きそうな大朝日小屋だが、傾斜が急なの思いのほか時間が掛かりすっかりバテてしまった。小屋で一息入れたい所だが気持ちは既に滑りに感心がいって、そのまま金玉水のスタート地点までスキーを担いで下る。今年は雪解けが特に早いのか、小屋から金玉水まで300m程はすっかり雪が消えていており、山頂からすっきりした滑りが出来ない点は少し不満が残るところだ。スタート地点は今までの感じと違い全くの緩斜面で、なにか緊張感というものが無く拍子抜けした感じだが、滑降の体制を整えすぐに滑り始める。2本目の入リソウカ沢の上部は広いUの字状の傾斜の緩い谷で、金玉水からは左に大きくトラバースしてから沢筋に入る。一旦止まって後の主稜線を振り返ってみると、傾斜の緩い穏やかで女性的な大斜面が広がり、何かのんびりとしたムードの中で羽を伸ばしているような気分。

 雪解けが早い広いU字谷の斜面を何となくダラダラと下ってゆくとやがて谷が狭まり、斜面が急になる1150m地点で滝が現れ微妙なスノーブリッジが出現。強引に行こうと思えば行けるが、予想以上に上部で滝が出てきた事と、スノーブリッジが崩壊してしまうと登り返しが出来そうに無いので今日はここで打ち止めとする。今日は出発する時まで迷ったが、軽量化のためアイゼン、ピッケルを車に置いてきたので無理も出来ない。当初から上部で滝が出てきた場合、躊躇することなく登り返すことに決めておいたので地図を取り出し、最も傾斜の緩そうな雪の斜面を選んで右岸のルンゼの雪壁を登り始める。ここでスキーアイゼンの効果は大きく、横ずれすることなくジグザグ登高を繰り返しながら上部を目指す。斜面は柔らいザラメ雪だが、スキーアイゼンも爪の長いタイプにしておいたおかげで、体力のロスも少なく比較的スムーズに高度を稼ぐ事が出来る。

         
            金玉水下部の入リソウカ沢                入リソウカ沢の中間斜面  

 ここからは小朝日岳と大朝日岳との鞍部(熊越)をめがけ、途中から上部のルンゼ状の斜面を大きくトラバースして登山道に戻る。この頃になるとさすがに疲れてくるが、小朝日岳のピークを踏んでそのままコルまで下り、その後古寺山でシールを外して古寺鉱泉をめがけて滑降の開始となる。しかし2〜3日前に雨が降った為に斜面は荒れてガタガタの状態で、さらに今年は雪解けが早い為にブッシュがうるさく、あまり快適なスキーでもないので結局1100m付近からはスキーを担いで下った。当初の予定では入リソウカ沢をさらに下り、対岸の古寺山と小朝日岳の鞍部に食い込むルンゼを詰め、時間短縮してもっとスマートな山行を計画していたが、結局雪不足で下降できなかったのは悔いが残る。2:00PM頃から崩れ出した天候はとうとう雨になって古寺鉱泉帰着、4:00PM。

        
          入リソウカ沢の登り返し付近           雪壁をトラバースして熊越えの登山道に戻る

Y字雪渓 入リソウカ沢 ルートマップ

トップページに戻る