鳥海山 鳥越川〜千蛇谷コース 2008.04


    

      千蛇谷のアイスバーン斜面を降りて行く

     

  山 域  鳥海山 鳥越川〜千蛇谷コース〜新山 往復 
  山行日時  2008年4月13日(日)
  天 候  晴れ
  メンバー  千田 荒井 坂野 
  行 程  林道入り口4:30〜獅子ヶ鼻取水口5:15〜北面展望台6:18〜千蛇谷 七七五三掛上部1868m地点9:52〜新山11:15〜11:53〜1250m付近休憩12:53〜林道入り口14:30   標高差1851m  直線距離往復18.0km (GPS計測距離 29.5km?)

 鳥越コースは3年前の5月22日に訪れているが、雪の消えた下部の樹林帯の通過は難行苦行の連続で、結局千蛇谷の入り口で敗退した経緯がある。すっかり時期外れの山行がそもそもの間違いだが、別の理由はあまりにも盛り上がった宴会の性でも有った。つまり、かなりダレていた。その後鳥海山の東面に入れ込んでしまい、すっかりタイミングを外してしまって新山の頂上には立つ事が出来ず、何か奥歯に物が挟まった様で中途半端な気分だった。
 
 2〜3月にかけては鳥海山で好天に恵まれる事もなく、ようやくこの時期になって残された鳥越コースを訪れる事が出来た。実質1ヶ月ほどのブランクには不安も残ったが、何時もの強力な面子が戻ってきてロングコースに取り付いた。昨日の雨の為か前日のトレースは見当たらず、早朝出発の我々3人は貸切状態の贅沢者で、薄明かりの中の林道を出発して山頂を目指した。

【概要】
 昨夜は林道の入り口解らずウロウロしたが、結局間違えて岩股川手前の道を選んでしまい、700mほど遠回りをしてしまった。あと1〜2本手前の林道から入るのが正解の様だ。獅子ヶ鼻に至る林道はまだ殆ど雪が繋がっており、その先もブナ林の雪面を快適に進んで距離を稼いで行く。数年前に大きな竜巻が発生してブナ林がなぎ倒された場所だが、倒木に悩まされる事もなくスムーズに通過して出だしはパイペース。途中で熊野足跡を見かけたが、ブナの枯れ木には熊が引っ掻いたと思われる爪跡が残り、空腹で越冬した木虫でも漁ったのだろうか?

 しばらくブナ林の尾根筋を少しづつ進んで行くと、突然視界が開けて鳥海山北面が姿を現し、見事な景観にしばらく見入ってしまった。2人とも以前に北面を滑っている様だが、標高が高い為タイミングを外すとカリカリのアイスバーンとなり、決して侮れないテクニカルなコースの様だ。


獅子ヶ鼻先最初の急斜面 かつて竜巻の倒木で苦労した斜面も雪の下

空腹で木虫でも漁ったのか熊野爪跡
突然姿を現す鳥海山の北面
 
 昨日は雨が降って誰も入った様子は無く、静寂が支配する雄大なこの世界は貸し切り状態で、やって来て本当に良かったと実感するひと時でも有る。鳥越川左岸の切り立った壁が近づくと上部が遠望でき、ここから千蛇谷まではかなりの距離を感じてしまうが、傾斜はあまり無いのでマイペースで距離を伸ばし易い。1250mの森林限界を越える辺りからこのコースの全貌が姿を現し、次第に登高意欲が増して順調に高度を上げて行く。

 コースは鳥越川の右岸の段々になった斜面を目指して行くが、昨日の雨の為か斜面は次第に硬くなり、途中でスキーアイゼンをセットしながら高度を上げる。この辺りから体力に勝るトップに距離を開けられ、写真を撮りながらのんびり行く私はすっかり遅れを取ってしまう。自分は1ヶ月のブランクとはいえ、体力の差は歴然とした状態でまったくかなわない。

鳥越川の明るく開けたU字谷は別世界 この雄大な光景は全国に誇るスキーヤーの殿堂
  
 北面の斜面はアイスバーンで光っており、1500mを越える辺りからはさらに斜面が硬くなってスキーアイゼンが頼りとなり、広い大斜面をただモクモクと前進を続ける。ただ、比較的シールの効きは良く、気温も高からず低からずで歩き易く、あまり汗をかく事も無いので気分は良い。しかし、最後の急斜面はさらに斜面が氷化し、うっかりするとエッジを外してバランスを崩し易い。このフラットな斜面滑落するとスピードの乗り、かなりの距離を流され兼ねないので気が抜けない。。トップは歩行アイゼンに履き替えた様だが、持っていない私はクライムサポートを外してスキーアイゼンを効かせ、ジグを切りながらノロノロと進んで行く。流石にここに来て1ヶ月のブランクの差が出たのか、トップの姿は視界から消えてすっかりペースダウンしてしまう。

遥かに遠い外輪山も近づいて来る 硬いアイスバーンで輝く北面

 千蛇谷に近づくと左右は深いU字谷のような景観になり、外輪山側の急峻な壁はその迫力をさらにまして迫ってくる。東北は言うに及ばす全国的にも誇れる雄大なスケールで、ここの虜になるスキーヤーが数多い事に納得する。トップのペースはまったく衰える事無く飛ばして行く。最後の急斜面はジグを切ってスキーアイゼンを効かせたが、ここでうっかりスリップすると50〜100m位の滑落は免れないだろう。

 七五三掛上部付近でアイゼン歩行に切り替えた後続を待ったが、どうやら荒神岳方面を直登して新山を目指す様で、私は忠実に左から大物忌神社の上部に至る斜面を上り詰め、急な斜面をトラバースして七高山を新山のコルに立つ。千蛇谷下部の急斜面ではツルツルの硬い斜面に泣かされたが、意外と新山付近の斜面は氷化する事もなくスキーアイゼンを快適に効かせて前進する。後は緩やかな斜面を上り詰めると新山にたどり着き、1時間以上も先に到着した千田君が出迎えた。山頂付近の強風では待ち続ける事も辛かっただろうが、ロートルを相手の山行ではこれも勘弁して欲しい。

やがて七高山が近づいて来る 新山への登り口から千蛇谷方面
新山ではいったい何処が最高点なのか? 新山から外輪山方面を見る
 
 新山山頂で後続を待っていると、湯ノ台方面から上がって来た単独スキーヤーが到着し、その後にも七高山方面にはさらに2〜3パーティーが続いて急に賑わってくる。頂上での缶ビールを開けて儀式を済ませ、いよいよ千田君がトップで鳥越コースの滑降に取り掛かる。雨を免れて適度にクラストした斜面は滑り易く、千蛇谷を忠実に辿って大物忌神社下部を通過し、千蛇谷の全貌が見え来た頃から飛ばして下りて行く。

 しかし調子がよかったのは最初だけで、下るに従って斜面は硬いアイスバーンの浪打斜面に変り、膝と太腿に負担のかかる辛いターンが連続する。まもなく我々の後に上って来た単独テレマーカーに出会ったが、1ヶ月ほど前に月山山頂で出会った由利本荘市のSさんだった。我々のスピードをはるかに上回るペースで、挨拶もそこそこに新山を目指して上がって行った。その後にも鳥越川コースから2〜3パーティーが続いたが、天候は次第に悪化して雲の流れが速まり、風もさらに強まって来る。

新山から鳥越川を目指して下降開始 山頂付近の雪は適度な硬さだったが・・・
 辛い下降を続けるとさらに後続パーティーが上がって来て来たが、後で聞いた話では我々以外鳥越コースから新山の山頂に立ったのは他4名ほどで、その中にはまったく気付かなかった由利本荘市のIさんも含まれていた。途中のアイスバーンでは2度トップを引っ掛けてしまい、20m程を滑落する失態をしながら下降を続け、膝が持ち堪えられずに途中で一本をと取り、後は柔らかくなって来た斜面を快適にクルージングし、樹林帯に突入して林道入り口の車に戻る事が出来た。しかし、後半は雑な滑りでごまかしてしまった。

 このロングコースも地元スキーヤーでは日帰りは普通の様で、意外と多いロングコースファンには何か親近感を感じてしまった。しかし今回の往復10時間は掛かり過ぎで、次第にペースダウンする自分の現実に少し寂しさも感じる。一方当日往復8時間のIさん等、テレマーカーを中心とした若い方々のスピードには感心した。
 でも、今度来る時にはテントを担いで1泊し、この世界にどっぷり浸かるのも悪くは無い。

 なお、あと1〜2週間で林道付近の雪は繋がらなくなり、登山道が無い為連休後は薮がらみのブナ林の長い歩きが待っており、スキーを最大限に使える今頃がベストシーズンと思われます。

まだ真冬の雰囲気を残す千蛇谷を後にする この雄大さは鳥海山のベストポイント
稲倉岳から鳥越川の下部方面 雪崩れたばかりの斜面
休憩を入れながら下降を続ける 下部は快適ザラメの柔らかい斜面


鳥海山 鳥越川〜千蛇谷コース MAP