飯豊連峰 滝沢〜本石転び沢 2008.05


    

      梅花皮岳直下の本石転び沢はスラフが止まらない

     

  山 域  飯豊連峰 滝沢〜本石転び沢連続滑降
  山行日時  2008年5月18(日)
  天 候  快晴  
  メンバー  単独
  行 程  天狗平4:00〜下つぶて石4:51〜石転び沢出合5:37〜梅花皮小屋8:10〜烏帽子岳9:20滝沢下降9:47〜滝沢1170m地点10:03〜梅花皮岳12:28 本石転び沢スタート12:52〜石転び沢13:03〜天狗平14:30 

 昨年の同時期に滑り損ねた滝沢と赤岳沢が心残りで、今回はコンディション次第の気ままなスキーをしたくて飯豊にやって来た。この時期は梅花皮荘から1時間半のアプローチが当たり前だが、昨年に続いて天狗平までの開通を待っていたのは私だけではない。天狗平に早朝到着してみると既に30台あまりの車が有り、昨日から多くの登山者・山スキーヤー・テレマーカーがやって来た様子。どうやら今日のトップは頂きだと思ったのだが・・・。


【概要】
 3:30AMに天狗平に到着して出発の準備中、「こんにちは」と軽く挨拶して先行する山スキーヤーがいた。意外なな先行者だったが身支度を整え、その後を追って温見平を目指してスタートを切る。ヘッデンを使う必要も無い位夜明けは早く、途中で山菜取りのバイクに追い抜かれて砂防ダムを通過する。

 下つぶて石を通過するとその先の梅花皮沢はびっしりと雪渓で埋まり、予想外にも鬱陶しい枝に悪態をつく事も無く、シールを貼ってスキーで歩き出す。天狗平で先行していた単独の山スキーヤーを追い抜き、楽勝気分で順調に雪渓を詰めて行くと北股岳が朝日に輝いていた。全体的に頂上付近の露出が進んでいるようで、北股沢の斜面には厄介なクラックが入って既に終盤に入った雰囲気がある。

 石転び沢の出合でお気に入りのカツサンドをパクついていると、後から若い単独山スキーヤー氏が追いついて雑談をするが、一人で神奈川からやって来たが飯豊は初めてとの事だった。今年の石転び沢は上部斜面も雪が豊富で、斜面も大きなデブリ・土砂も見当たらず、かなり状態は良さそうな様子。門内沢方面も同様で斜面は荒れた様子も無く、昨年同様の快適なコースを選び放題と言う雰囲気だ。


下いしつぶて石からスキーが使えて楽勝 北股沢の斜面はクラックがあちこちに

石転び沢出合でブレックファースト
門内沢も積雪は豊富で斜面はきれい

 石転び沢の雄大な開放感は毎年やって来ても飽きる事は無く、青空の奥に鎮座する北股岳の雄姿は厳かな雰囲気を漂わせ、スキーヤーの心を躍らせる静かな魅力を秘めている。5月の喧騒の鳥海山は訪れたことは無いが、同じ東北でも対極をなす東北ではスキーヤーの殿堂の地でもある。どちらかと言うとこの山は山スキーヤーの砦だったが、最近ではアルパイン的なテレマーカーの存在が目立ち、殆ど境界線など無いに等しい昨今となっている。

 本石転び沢の出合で上部を確認すると、梅花皮岳から直下の斜面は申し分のない雪の量で、中間部もブロック崩壊の後も見られず快適で、今日の下降路はここしか無いと確信した。

 石転び沢を快適にトップを切っていた所、下からかなりのスピードで追い上げる単独の単独の山屋さんが現れ、直下の斜面で一息入れた後には追い抜かれてしまう。自分はスキーアイゼンに頼り切るタイプなので、クライムサポートを解放して爪を斜面に効かせ、急斜面にジグを切りながら梅花皮小屋を目指して行く。

長大な本石転び沢はフラット斜面が続く 最も息が切れる石転び沢の上部
 
ここから見上げる北股沢にはトレースらしきものも見当たらず、クラックを嫌ってあまり訪れる人もいない様子は意外だった。北股岳の大きな雪庇は近年見かける事も無く、すっかり崩壊してしばらくたった様子が伺える。まだ右斜面だったら斜面は良好で、石転び沢全体を俯瞰しながらの滑降はまだ楽しめる。

石転び沢の全体を見下ろす 北股沢左俣と右股は岩の露出が進んでいる
梅花皮岳直下から北股岳〜門内岳方面 北股沢の傾斜が解る 本石転び沢上部斜面は雪の付きが良好
 
梅花皮小屋に到着すると先ほどの単独者は休まず北股岳を目指した様子で、小屋で出会った山スキーヤースキーヤーの話によれば更に御西岳往復を目指している様だった。小屋には3人の登山者が残っており、一休みしている間に単独の山スキーヤーも休まず北股岳を目指して行った。

 小屋のそばで水を補給して更に梅花皮岳を目指し、先の烏帽子岳方面へ歩き出すと視界が広がり、大日岳の北面・飯豊本山方面の姿が飛び込んでくる。既に大日岳北面の斜面は積雪が少なくて斜面が露出し、この時期ではスキーには不向きな雰囲気がある。やはり欲張った計画はここで修正し、昨年の宿題を片付けるべく烏帽子岳を目指す。

梅花皮岳から烏帽子岳〜飯豊本山方面 大日岳の北斜面は積雪が少ない

 烏帽子岳の山頂に立つとそこにはスキーのトレースがあり、どうやら滝沢方面に下った様子だった。滝沢方面は意外と開けた明るい沢で、遥か下には梅花皮滝のF6上部らしき所まで雪が繋がっている。結構距離も有りそうで登り返しは辛そうだが、時間にも余裕があり迷わず下降に取り掛かる。

 出だしから広い斜面を降りて行くと視界は広がり、400m程下で沢が合流して梅花皮滝を目指すと夏のゴルジュ帯となる。東側に斜面にも関わらず斜面は締まっており、快適なエッジコントロールで降りるのは快感で、膝の疲れも感じずどんどん下降して行く。斜面はフラットで板が暴れる事も無く、のんびりムードの滑りも悪くは無い。

 中間部で右に回ると梅花皮滝上部付近の雪渓が現れるが、その前はブロックと土砂で荒れており、850m下降した地点で少し迷ったが引き返す事にする。しかしこれが後で後悔する事になるが、再びシールを貼って2時間半かけて梅花皮岳に登り返す。

烏帽子岳の山頂から梅花皮滝を目指して滝沢を下降 雪渓の終了点が梅花皮滝の最上段F6?
850mの登り返しは流石に遠い 本石転び沢直下の斜面は意外と安定している
 
 本石転び沢の入り口はかなりの急斜面で、2年前に降りた時には狭くてターンを決められず後悔したが、今回はタイミングを整えて思い切って谷足のエッジを効かせ、なんとか3ターンを決めて満足感に浸る。しかしスタートした時間帯が遅すぎた為にスラフが流れ、少し立ち止まると後ろからスラフが被って滑りにくい。あまり持久力の無い足腰では耐えられず、途中で止まってスラフをやり過ごしながらの下降が続く。中間部でようやくスラフから解放されると後は楽勝で、多少のデブリを避けながらロングターンを描き、後は一気に石転び沢に抜け出て緊張感から解放される。

 降りると石転び沢から降りてきたスキーヤーに声を掛けられ、気が付くと何時も山行を共にしているK氏とその相方さんで、なんだか奇遇な雰囲気で共に石転び沢を下りて行く。下つぶて石から板を担いで温見平を通過し、10時間半ぶりにようやく天狗平に戻った。

一度スラフを落してからジャンプターンで下りて行く 一息ついていると後ろからスラフに追われる
石転び沢への出口は多少荒れている程度 2年前の時より快適なクルージング
 
 滝沢を最後まで下降することが出来ず後で後悔したが、2年ぶりにトレースした本石転び沢は雪も豊富で満足度はむしろ高い。以前は雪不足の為か全体が片斜面で滑りにくく感じたが、今回は申し分の無いフラット斜面で幸運だった。

 毎年雪の状態が異なるので滑りも異なるが、2度このコースを滑ってこのコースの素晴らしさを再認識した。山頂から飛び込む豪快さと適度な緊張感はたまりません。石転び沢・門内沢の様な雄大な開放感は有りませんが、ビックスケール&テクニカルな雰囲気はメジャーコースの資格が充分有ると思います。石転び沢・門内沢に物足りなさを感じる諸氏には是非お勧めのコースです。


飯豊連峰 滝沢〜本石転び沢周辺 MAP