今季の数少ない沢登りは天候に恵まれず、結局今回が2回目で最終回となってしまった。先月は天候は余りぱっとしなかったものの、朝日連峰の中俣沢で久しぶりにスケールの大きい快適な沢登りが出来た事は幸運だった。
川入りを訪れるのは飯豊連峰の全山縦走した36年前以来だが、微かに記憶が残る飯豊鉱泉も今や閉まってしまい、最近の冬季間は川入りの6km手前の温泉で除雪が終了するなど、登山者にとっては何か逆境にさらされる様な寂しい雰囲気もある。しかし初めての飯豊の沢には期待する物が有り、天候に恵まれそうな2日間には大いに期待したい。
今回は久しぶりの面子が揃って前夜の入山祝いは盛り上がり、毎度の寝不足模様で急いで朝食を済ませてフラフラと出発する。
【天候】 10月12日 晴れ 13日 晴れ
【行程】
12日 川入6:18〜二俣7:04〜二条の滝8:34〜ゴーロ帯10:43〜20mの滝〜スラブ帯13:38〜三国小屋14:30
13日 三国小屋8:35〜分岐〜水場9:30〜川入11:20
【メンバー】 荒井 千田 坂野
【概要】
9月12日
最近整備されたようなキャンプ場は以外に立派で、30台以上は有ると思われる駐車場を出発して御沢方面に向かうが、この好天でいったいどれだけの登山者が稜線上にいるのか?今回は目的の大半が三国小屋での宴会だが、小屋の込み具合が今から心配になってくる。
御沢のシンボルである杉の巨木を通り過ぎ、松ノ木尾根へと伸びる登山道から右に入ってタカツコ沢に入る。予想どうりとは言え飯豊の沢らしくない水量の少なさだったが、歩き出しはいたって平凡なゴーロ歩きが続き、何時か雲から太陽が顔を出して今日の幸運を約束された様子だった。しかし、水は膝まで浸かると身が締まるような冷たさだ。
間もなくどんが沢の二俣を通過すると2〜3mの滝が現れ、快適に通過して行くと5mの幅の広い滝になり、、左から楽に越えて行くと5mの2条の滝が出てくる。これも左の流水傍から楽に越えるとやがて沢幅は狭まり、傾斜の落ちた狭い滝が続いていた。何か神室連峰の沢のイメージで、正直な所飯豊連邦の雰囲気が味わえないところが不満でもある。
花崗岩の滝は朝日連峰と変らずの快適さで、飯豊特有の深い釜もなければ厄介なゴルジュ・高巻も無く、少し拍子抜けしたような雰囲気だが実に楽しい。次に出てくる8m余りの滝は巨岩で構成された姿で、これも左からフリクションを効かせると楽にクリアー出来る。その後は2〜3mの滝が何本か出てくるが次第に高度を上げて行き、やがて渓が開けて上部の紅葉した尾根が姿を現す。その後にゴルジュを通過して3mの斜め滝を左から高巻き、大きく渓が開けると再び小滝が連続する。
時々4〜5mの滝も出てくるが濡れるのはせいぜい膝くらいで、草付の高巻も距離が短くてなんら不安は無くどんどん先に進む。両岸が狭まって被った滝は左に逃げて高巻き、6mの滝を右から越えるとゴーロを抜けて開けたガレの二俣に到着する。ここでは時間も充分なので紅葉見物しながらの昼食をとり、紅葉真っ只中の渓にいる幸運を実感する。
暫く進むと再び狭くなって8m程の滝も出て来るが、水量は少なくなって次第に源頭の雰囲気となってくる。後ろを振り返ると尾根はすっかり紅葉して鮮やかさを増し、更に進むと上部には地蔵山から三国岳へと通じる剣ヶ峰の登山コースが見えてくる。良く見ると朝同じ頃に出発した人なのか、2〜3人の登山者が三国岳を目指す姿が有った。山頂付近には意外と近い三国小屋が見え、その下には稜線までの広大なスラブ帯が続いていた。
この先は開けた急なゴーロ歩きとなるが、やがて20m程の滝が現れて我々の行く手を阻む。殆ど空滝の雰囲気だが正面突破は難しく、ここで初めてロープを出して荒井トップで左のカンテに取り付いた。岩が所どころ浮いていて登り難いが、ブッシュに助けられて35mほどロープを伸ばしてピッチを切る。セカンドはタイブロックとプルージックで固定ロープを辿り、ラストを迎えてから最後のスラブ帯に入って行く。
スラブ帯は傾斜が落ちているのでロープ無しで取り付き、空滝を避ける様にして左のリッジ通しにルートを取り、フリクションを効かせながらの楽しい登りが続く。しかし、最近両手足を使った連続する登りなど久しぶりで、体が付いて行かない雰囲気で息が上がってしまった。目前の三国小屋を前にして一本を取り、振り返ると登って来た沢筋の紅葉の斜面には心が癒される。
50mほど上り詰めると草付と潅木帯となり、殆ど薮漕ぎ無しで三国小屋左隣の登山道に飛び出した。小屋に入ると2人の方が静かに休憩中だったが、既に朝から飯豊本山を目指した多くの登山者の荷物で2Fは塞がっていた。1Fの隅に今夜のスペースを確保し、缶ビールを開けて喉を鳴らす。小屋では喜多方の山岳会の皆さんと一緒になったが、散々盛り上がった頃に2Fの山屋さんからクレームが入り、8時PM過ぎには外にマットを敷いて第2ラウンドに突入した。
9月13日
朝はすっかり寝坊したい所だが周りの朝支度ですっかり目が覚めてしまい、ただダラダラと時間を潰して何時の間にか8:30AMとなる。殆どの登山者が出発した後になって下山を開始し、素晴らしい紅葉で埋め尽くされた山肌を眺めながら剣ヶ峰経由で川入りを目指す。
地蔵山はショートカットして水場で1本取り、豊富に湧き出る清水で喉を潤す。ただ、水場の真上を登山道が横切っており、登山者から不注意に石を落とされると直撃を受けてしまいそうで注意を要する。下りは慌てる事も無いのでゆっくり下り、2時間45分かかって川入のキャンプ場に到着した。
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何時もは日帰りか沢の中でのビバークの為小屋泊まりは少ないが、久しぶりの賑わった山小屋はやはり居心地が良くない。8:00PM前だというのにクレームの嵐となり、小屋の外で飲んでも冷たい視線を浴び、朝は2:00AM頃から早立ちの山屋さんの物音で目が覚める。
昔から時間にルーズで宴会好き、そして身なりの汚い沢屋は敬遠されがちだが、今は圧倒的多数の山屋さんの勢力地図に埋没し、すっかり小屋の片隅で生き延びる希少人種に成り下がってしまった。25年前ならこれがまったくの逆で、座敷牢の主役だった頃が実に懐かしい。今思えば周りには迷惑な話だったろうが、殆どが無罪放免と諦められていた世界は今や信じがたい。
しかし、いったい何処のどなたがこの「正論」をぶち始めたんでしょうか?
後は広大なスラブ帯を詰め上がって三国小屋を目指す
ロープ無しでリッジ通しにルートを取る
殆ど薮漕ぎ無しで三国小屋へ
剣ヶ峰のルートには多くの登山者の姿が |
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