2006年 沢歩きの記録

 2006年 10月9日(月)
 焼石連峰 尿前沢本沢

 
 今回の連休は三陸沖で猛烈に発達した爆弾低気圧に見舞われ、北アルプスでは痛ましい遭難事故が発生した。東北地方も例外ではなく雪が降ることは無いが大雨と強風に見舞われ、紅葉時期後半のベストタイミングを外した登山者も多かったと思われる。

 今回は今シーズン沢登りのラストチャンスという事だったが、日帰りで十分楽しめる沢として焼石連峰の尿前沢本沢を選んだ。岩手県では美しい沢として特に人気があり、地元は勿論首都圏方面からも多くの遡行者を迎える銘渓だ。ただ大雨の後となると当然増水しており、へつりや滝の直登となると難儀である。模様眺めで進んでいったが本沢に入ると水量も落ち着き、その後はゴルジュ、アイスブルーの深い釜、滑滝と変化にとんだ快適で豪快な遡行が続いた。

【天候】 曇り
【コースタイム】 
中沼登山口5:45〜尿前沢徒渉点6:18〜尿前沢本沢出合7:30〜ゴルジュの高巻8:30〜40m滝上部9:30〜夫婦の滝10:00〜1100m地点11:50〜上部二俣(雪渓)12:15〜登山道12:00 13:10〜銀明水13:35中沼登山口15:00 
【メンバー】 
荒井 坂野
 
 朝になると雨はすっかり上がって青空が見えるが、雲の流れがとても速く風の強い朝だった。中沼登山口から30分ほど歩くと尿前沢の徒渉点となり、様子を伺うと本流は濁流のような様相で先が思いやられる。身支度を整えて沢に入ると最初の10m滝は左岸から巻いて行き、まもなくのゴーロ歩きでハタシロ沢の出合に到着する。この水量では先行き不安だがこの先のフロ沢を越えて本沢までとりあえず進む。しかし万円沢を右に見ると本沢の水量はやや少なくなり、これならもう行くしかないでしょうという事になる。

 意外と水温は下がっていないが風が強くて寒く、雨具を着てから2段6mの滝を右から越えてゴルジュ帯に入って行く。しばらく滑滝が続くゴルジュを快適に進んで行くと25mの三つ折の滝が現れるが水量が多くて近づく事が出来ないので、ゴルジュ突破はあっさり諦め右岸からの高巻に取り掛かる。すると次第にどんどん追い上げられて尾根上になり、眼下にはゴルジュが続く三つ折の滝が見え、さらに上部には立派な40mの滝が望まれる。尾根上から見ても下降点が解りにくく、40mの滝の上部から下降してその2段上の滝に降り立つ。この間約1時間。

 この先は沢床は広く開放的で明るい渓になり、この先は美しいアイスブルーの釜を持った滝が次々に出てくる。今日は曇りがちで色彩が今ひとつだが、晴れていれば素晴らしい釜と滝の姿に違いない。12mの階段状の滝2つを左から快適に登り、これに続く長さ100mに及ぶ3段のナメ滝(3、5、10m)も飛沫をあびて快調に越えていく。この先は松でアスファルト道路のような広い沢床が延々と続き、所どころ快適な滑滝がが出て来て変化に富み、焼石特有の素晴らしい沢歩きを満喫できる。沢の水は若干濁りが入いるが、今日は水量が多いだけに沢は躍動感があり素晴らしく、我々にとっては思わぬプレゼントだったかも知れない。

 しばらくすると沢は2分して右俣は3段30mの滝、本流の左俣はナメ状の30mの滝で出会う。ここが夫婦の滝と呼ばれる所で、確かに夫婦が寄り添ったような地形になっている。ルートは左の草付きフェースにロープを延ばし、35mで滝の出口直下の錆びたボルト2本でピッチを切る。高度感の出る所だがこの先は快適な滑滝の連続となり、どんどんペースを上げて進んで行く。この先の100mの滑滝は右側を快適に登って次第に高度を上げ、次の15mの美しい滝は左から高巻いて越えて行く。後で「扉のページ」さんの記録を見ると右壁を快適に登れると書いてあり以外だった。

 さらにゴーロ歩きで次第に高度を上げて行くと、V字条の滝が現れて右のカンテから越えて草付きを登って越す。その後は渓はさらに開けて開放的になり、傾斜の落ちたゴーロを進んで行くと雪渓が出て来る。積雪量の多い焼石岳は10月になっても例年雪渓が残り、どうやらこの辺の雪渓は越年する事も有りそうだ。
このどん詰まりに出てくる10mの斜滝を快適に登り、傾斜の落ちた広いゴーロ帯を進んで行くと沢は薮で覆われ、さしもの尿前沢の本流もここまでくると優しい表情を見せてきた。

 石楠花で覆われた沢の源頭というのは初めてだったが、腰をかがめて子沢をクネクネと進んでゆくと突然登山道に飛び出した。出てみるとそこは焼石岳の中央通りという様に登山者多く、中高年、ファミーリー、夫婦、若い男女のパーティーなどが混在した大通りだった。こんなに多くの登山者にに会ったのは25年ぶり位で、焼石岳も随分都会の山になったもんだと感心してしまった。下降コースは中沼コースを取り、何パーティーかを追い抜いて1時間50分で中沼登山口に帰着した。

 

         15mの美しい滝は左からの高巻
           10mのV字滝は右のカンテから草付きへ

            下を振り返ると優しい表情を見せる

            フィナーレは10mの快適な滝を登る

        滝の下は10月になっても毎年雪渓が残る

            最後は快適なゴーロ歩きの源頭となる

             突然中沼登山コースに突き当たる


尿前沢本流は濁流のように流れる

一般登山者の徒渉は難しいかも知れない

尿前沢本沢出合の2段6mの滝は右からクリアー

ゴルジュ帯の三つ折の滝は左から1時間の高巻

高巻途中の尾根から三つ折の滝を見下ろす・

ゴルジュを通過すると登りやすい滝が続く

これが尿前沢名物の素晴らしい滑滝の連続

晴れていればもっと素晴らしい釜の色だろう

まるで砂防ダムのような滝は右から容易にに高巻く

まるで車が走れそうな見事な沢床の連続

夫婦の滝は左俣本流の左壁の草付きに取り付く

草付きのフェースを35m伸ばすとボルト2本のポイント

30m本滝の上部から見下ろす

100mの滑滝を快適に詰めて行く



尿前沢本沢遡行ルート MAP

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