【コースタイム】
10月9日(日)
十里平7:15〜戸立沢出合7:55〜F1 8:20〜笹木沢出合9:50〜700m地点10:45〜40m鎧滝の高巻12:10〜仙台カゴ登山道14:40〜観音寺登山口駐車場15:05
【天候】 曇り
【メンバー】 荒井 坂野
今シーズン最後の沢登りは船形山の笹木沢を選んだ。船形山の沢はは30年ほど前に横川と赤倉沢を遡行した事があるが、その当時笹木沢と言う沢はあまり気にも止めなかった。赤倉沢に入ったときは笹木沢と同じく十里平から大倉川に入り、蛇ヶ岳からやたらと長い後白髭山経由の尾根を下った記憶がある。この一帯は熊の生息地として良く知られているところで、その当時の印象としてしてはずいぶん地味な沢で、何か今一つ物足りなくてその後船形山の沢には訪れていない。
余り期待もぜずコースもろくに調べないで入った沢だが、大倉川本流は単調な河原歩きで釣師向きの沢でも、笹木沢に入るとすぐに状況は一変する。連続する滝、手ごろなゴルジュ、美しいナメ床、見栄えのする大滝と連続し、最後は緩やかなブナ林の源頭をのんびり詰めて殆ど藪漕ぎなしで登山道に至る。朝日連峰の深いV字谷と打って変わって、深いブナ林の沢歩きはのんびりムードで安心して歩ける沢だ。
このコースはあまり困難な個所は無いが、入渓から楠峰付近の登山道までの距離が長く、とても1日で往復するという訳には行かない。一般的には宮城県側の十里平と、山形県側の観音寺登山口に2台の車を配置する。登山終了後は登山道歩き僅か30分で下山するという全く都合の良いコースだ。今回は時間が無く1日で沢を抜けたが、時間が有れば大滝を越した辺りの快適なビバークサイトで一泊したい。
【概要】
昨夜は下山口の柳沢小屋に泊まったが、黒伏山南壁を目指す3パーティーがおり、東京方面の車3台、旭川ナンバー1台という具合でひっそりとしており、以外の地元勢の姿は見られない。以前なら翌日のクライミングなどおかまいなしで、柳沢小屋での大宴会を2:00AM頃まで続け、周りなど全く無視してのバカ騒ぎをしていた。今思えば他の登山者の方への迷惑は余りにも甚大だった。反省。
定義の十里平に車を廻し身支度を整え,最後の民家から大倉川右岸沿いの登山道を40分程歩いて沢に下り、川幅の広い河原歩きをしばらく続ける。釣屋さん向きの沢で至る所にポイントが有り、沢も開けているので毛鉤を振るのには適している沢だ。しばらくすると既に禁漁になっているはずだが、餌釣師が静かにポイントを覗って釣に夢中の様子。気づかれる様子も無いので後から尾根の登山道を上がり、高巻いてから大きな堰堤を越して行く。矢尽沢を越した辺りから魚影が見られ、その先の笹木沢出合までは思わず竿を出したくなる様なポイントが続く。
しばらくするとF1の5m滝と大きな釜を持つ12mの滝が現れるが、ゴルジュで左から高巻いて越えて行く。その先は笹木沢までの単調な歩きを続くが、その先は沢の光景が一変して小ゴルジュとなり、両岸が狭まって3〜5mの滝が連続して出来る。殆どの滝は快適に直登出来きるし、水量も豊富な割にはへつりも容易でどんどん先に進んで行く。奥に入って行くと沢も開けて明るくなり、二口の大行沢で見たような美しいナメ床の続く沢に変化する。時々ナメ滝が出てきて穏やかな渓の様子で、癒し系の沢の雰囲気となってゆく。豊かな原生林に囲まれた渓筋は魅力的な大滝を有し、水に磨かれた船形やではならでの渓谷美を誇っている。
順調に遡行してゆくとその先には男女6名の先行パーティーおり、挨拶して先を譲ってもらう。本日は沢の中でのビバークらしく、我々と違ってセコセコと登っている様子は無い。その先に大きな釜を持つ8mに阻まれ、躊躇することなく左から高巻く。下降地点は10mの懸垂だったが、後で良く見ると右側を下降すればロープなしで簡単に降りられた様だった。後続パーティは中高年の方で、安全の為高巻ルートには全てロープを固定している様子で時間がかかりそうだった。
次の2段の滝下部は問題ないが、上段の6m滝が意外と厄介だ。トップは楽勝気分でロープ無しで取り付いたが、落ち口付近のシャワークライムが意外と悪い。シャワーをいきなり被ってしまう所で踏ん切りがつかない様子。仕方なく1m程下ってザックからロープを取り出し、確保してからハーケン1本で何とかクリアーする。次の5m滝を左から直登すると40mの鎧滝の下部が現れ、右から大きく高巻いて急な草付きを腕力頼りで上ってゆく。上部から大滝を見下ろすと何とか上れそうだが、最後の3段目は水量があって厄介に見える。しかし後で考えたら直登しておけば良かった。
大滝は最近の朝日でも無かった様な大高巻を強いられたが、その後の渓は穏やかになり、核心部は終わった様だ。その後は2〜5m程の滝が出てくるが、いずれもロープなしで快適に登れる。次第に渓は開けてブナ林の開けた源頭になり、狭くて緩やかな小沢をつめて行く。すると前方に見えるのはブナの枯れ木にびっしり張り付いた茸の姿。近づいて見るとそれは見事なブナハリタケの群生する姿で、直径60cmくらいの枯れ木に高さ8mくらいの高さまで付いている。しかし手の届く範囲ではほとんどとれず、取れば20〜30kgと思える茸にさよならをして登山道を目指した。
仙台カゴ付近の登山道には登山者の姿も見られ、彼らの後を追うようにしてわずか30分で観音寺登山口の駐車場にたどり着いた。後は定義まで約1時間程かけて車を回収し帰路についた。
※ 後で知ったが定義温泉から長い定義林道を辿り、かなり大倉沢をショートカットして上流の笹木沢に入れる模様。悪路覚悟の方には良いかな?
穏やかで明るい沢が多い
源頭部最後の詰め
仙台カゴを目指して高度を上げる
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