2004年 沢登りの記録

 2004年8月5日(日)
 朝日連峰 祝瓶山 大石沢

【コースタイム】
針生平6:45〜二俣9:30〜登山道(1250m)11:30〜祝瓶山頂上12:00 12:30〜針生平14:15

【メンバー】  荒井 坂野

 
朝日連峰の祝瓶山。東北の山にしては珍しい三角錐の鋭鋒。この山容が好きで過去に何度か通い詰めたお気に入りの山だ。沢は荒川水系の角楢下ノ沢、野川水系のヌルミ沢(2回)をトレースしたことがあり、今回は3度目のヌルミ沢をめざして相方と出発した。

 だがしかし、前夜に現在工事中の長井ダムのゲート前に到着してみると「水害の為この先通行止め」と言う冷たい看板。実は長井ダム上流部から木地山ダムまでの間が、7月17日の集中豪雨で路肩があちこちで崩壊し通行不能になっていた。後で確認したところ被害は甚大で普及の見通しは全く立っていないとか。

 気を取り直して五味沢方面に転進し、翌日は祝瓶山西面の大石沢を遡行。しかし沢の中は豪雨の爪痕が生無しく、下部のゴーロ帯の沢床は砂と石ころで埋まってしまい、沢の両岸は濁流で激しく削られて直径80cm程もあるブナの大木が計3本倒壊して沢を塞いでいた。魚が走る楽しい沢に戻るのは何時の事になるやら。

【概要】
 昨夜の宴会が延びてしまいすっかり寝込んでいたら、5:30頃から軽トラなど3〜4台が入ってきて上流部に向かう人が多い。どうやらトンビ舞たけを取りに来た人々または釣師らしく、この辺は意外と人気スポットらしく朝からなかなか騒々しい。我々も早速身支度を整え、吊り橋を渡ってすぐの大石沢の遡行を開始する。駐車場から間もなく入る沢なので、いかにも釣師向きのお手軽な沢のようで、最初は平凡なゴーロ帯がしばらく続く。
 しかし良く見ると沢床はあちらこちらで岩石と砂で埋まっており、釜も浅くて何かつまらない沢に見える。さらに両岸は濁流で削られて80cm程あるブナの木が根っ子から倒壊していて、合計3本が沢を塞いでいた。昨年の記録を見ると盛んに岩魚が足元から走っていた様だが、今日は殆ど魚影は見られずテンカラ竿を振っても全く魚信がない。これだけの土砂に埋まってしまえば魚の隠れ場所も無く、川虫も少なくなってしまい魚は居着無くなってしまうだろう。

 
平凡なゴーロ歩きに飽きてきた頃、沢の中間部頃からゴルジュの中に次第に滝が連続して出てくるようになる。10mの滝は左から快適に直登し、その後3〜5m程の滝が次々に出てくるが殆ど直登で切る快適な沢。一箇所だけ5mの滝の出口でで踏ん切りがつかずトップにザイルを出してもらう。今季まともな沢登りは最初でどうも今ひとつ調子が出ないが、相方の荒井は今シーズン7本め、しかも全て単独遡行という頼もしいパートナー。昨年の角楢下ノ沢より水量が少なくグレード的には低い感じだが、渓は明るくフリクションの効いた花崗岩の感触は実に気分が良い。

 快適に直登出来る滝が連続して出てくるが、やがて両岸が狭まりゴルジュ帯に入り途中で二又に差し掛かり、水量の多い右俣を選んでさらに上流を目指す。右から滝が入りその先に10mの滝、続いて50m3段の滝が姿を表す。10mの滝を左から越して行き、次の3段の滝はロープを出して1段目を右岸から取り付き、2段目3段目はブッシュに逃げて高巻いてゆく。見た目よりは比較的楽勝。この先からは水量は少なくなり、山頂手前の1260mピーク付近を目指して地図を良く確かめながら高度を上げる。上部は3本に分かれているが最も顕著な真ん中の沢を詰めてゆくと、赤茶けた岩に変わって水量が少なくなって両側のブッシュが狭まってくる。滝は小さくなってただ高度を稼いでゆくだけになってくると、さすがに体が重く感じて疲れが出てくる。

 涸れた小沢から笹薮のブッシュに突入し、約30分の藪漕ぎを経てから1250m地点の登山道に飛び出した。登山道の向こう側には深く切れ込んだ荒川水系の全容が素晴らしく、その源頭部に連なる大朝日岳を盟主とした見事な景観が広がっていた。昨年は冷夏で荒川源流をトレースしたパーティは殆どいなかったようだが、今年は果たして何パーティが完登しただろうか?一度はトライしてみたい沢だが今となってしまうとハイレベルで、とても実現できそうにも無く残念。

 山頂で缶ビールを開ける為にさらに祝瓶山の山頂を目指して出発する。誰もいない静かな登山道を上り詰め、山頂に到着してみると男女2人組みの登山者が休んでいた。ここから見る大朝日岳を盟主とした朝日連峰の景観は本当に素晴らしく、又眼下には予定していたヌルミ沢の下部と木地山ダムが見渡せる。今度道路が復旧し野川水系の沢を楽しめるのは何時になるのか?

 今回の大石沢は記録も見ないで入渓した未知の沢だったが、あまり厳しい個所も無く予想外に快適な遡行を楽しむ事が出来た。テンカラの上手い人ならばもっと釣りも楽しはずだが。仙台から夜行日帰り出来る沢としてはなかなかお勧めの山域で、今後は野川水系もぜひ遡行してみたい。朝日連峰には障子ヶ岳、のような花崗岩のスラブ帯が多く、明るくクライミング的な沢登りを楽しめるのも嬉しい。自分はB級ランクの沢登り専門だが、自分のレベルにあった沢をじっくり楽しむのも悪くはなさそうだ。また気の合った連中と快適な角楢沢小屋での宴会も又良し。

 地元の登山者は厳冬期にも祝瓶山に登頂しているようだが、急峻な鈴振尾根はどんな雪稜になっているのか?スキーで滑る斜面は何処にあるのか?なかなか興味の尽きない山域です。



ブナの木の倒木が沢を塞ぐ

中間部からは滝が連続する 15m

花崗岩の明るい沢

滝の流芯を直登する

15mの滝の後、50m3段の滝

50m3段の滝は2段目から高巻く 

1250m地点で登山道に飛び出す