朝日連峰 祝瓶山〜大朝日岳 2006.06




大玉山から見る祝瓶山の東面。カクナラ沢にはびっしりと雪渓が残っている。




 山 域  飯豊連峰 祝瓶山(1417m) 大朝日岳(1870.3m)
 山行日時  2006年 6月25日  
 天 候  晴れ
 メンバー  単独
 行 程  針生平〜祝瓶山〜北大玉山〜大朝日岳〜北大玉山〜角楢小屋〜針
 生平

 
 針生平からの大朝日岳登頂は34年も前に遡る。ワンゲル時代の個人山行で五味沢から3人で歩き出し、北大玉山〜大朝日岳〜竜門山〜以東岳〜大鳥集落へ縦走した時だが、4泊5日、35kg以上はあるキスリングを担いでの難行、苦行であった。やたらと重くてかさばるビニロン製のテントに大げさな折りたたみスコップ、ずっしり重い生米や玉ねぎ、ジャガイモ、2Lポリタンクに詰まったガソリンや水など。確かに辛い毎日ではあったがその当時はこれが当たり前で、むしろ飯豊連峰の夏合宿に続き朝日連峰を走破したという、素晴らしい感動と充実感の思いの方がはるかに強かった。そしてこの時本格的に山の不思議な魅力に取り付かれた最初の山行だった。

 しかしここがその後四季を通じての活動フィールドとなる事など思いもよらず、その後社会人山岳会を経てどんどん深みにはまってしまっていつの間にか山極道の世界に向かい、人生の足を一歩踏み外してしまうこ事となる。しばらくは北アルプス方面に入れ込んでいた時期もあったが、年を重ねると再び飯豊、朝日への回帰現象をなって現れ、今はマイペースでの気ままな山行を楽しんでいる。見事なブナ林、深く切れ落ちた美しくて深い谷、膨大な積雪がもたらす豊富な水量、鮮やかなコントラストを描いた秋の紅葉。特に今でもコースによっては原始性を秘めた朝日連峰は好みで、やはりここでしか味わえぬ多くの魅力は今でも失われていない。今回は思いで深いこのコースを日帰りで歩き、オプションに祝瓶山を加えたお花畑鑑賞山行を企ててみた。

針生平(大石橋)3:35〜祝瓶山6:12〜赤鼻分岐7:14〜北大玉山9:36 10:00〜平岩山11:16〜大朝日岳12:05〜北大玉山14:04〜大玉沢出合15:30〜角楢小屋16:07〜針生平17:15

 
祝瓶山を目指して鈴振尾根に取り付く 五味沢方面の雲海 鈴振尾根を振り返る

 当初の予定は三面〜北寒江山だったが、小国から三面ダムに通じる蕨峠が通行止めで断念し、止む無く急遽針生平からのコースに変更した。3:35AMヘットランプを照らして出発し、最近仮復旧されたばかりの大石橋吊り橋を渡ってやがて鈴振り尾根に取り付く。今回は自慢のスパイク地下足袋に衝撃吸収材入りの中敷を装着し、足裏の負担も軽減されて中敷のずれも無く予想以上に歩き易い。いきなりの急登をグイグイと上って行ったがしかし、調子の良いのは最初だけで少しずつペースが落ちてくる。やはり山スキーから遠かってから約1ヶ月、鈍った体は正直で次第に足が重くなりいつもの様に調子が上がらない。

ヒメサユリ ヒメサユリ街道が続く
ヨツバシオガマ コゼンタチバナ
イワカガミ ホソバヒナウスユキソウ
シラネアオイ ミヤマキンバイ?
 
 すっかり明るくなった頃1200m程で森林限界を過ぎ、途中で2回の休憩を経て祝瓶山の山頂に立つ。五味沢方面を見下ろすと雲海が広がっており、気温もさほど上がらずコンデションとしては良いようだ。休憩の後、誰も居ない頂上を後にして赤鼻分岐に至る登山道を下って行くとやがて岩交じりとなり、痩せや尾根から両側の深い沢を見下ろしながら進んで行く。東面のカクナラ沢には上部まで雪渓が残っており、今年の朝日連峰の沢登りは9月頃まで難儀な雪渓処理が強いられそうだ。
 

 赤鼻手前で大朝日小屋から下山してきた3名の登山者とすれ違ったが、その後大朝日岳まではまったく人に会うことの無い静寂の世界が続く。祝瓶山と北大玉山の間はあまり人も訪れない無い様だが、登山道は綺麗に刈り払いされていて歩きやすい。ちょうど咲き始めたばかりのヒメサユリが優しく出迎えてくれ、沢筋から吹き上がったさわやかな風に当たると気分は癒される。しかし所々笹の新芽をかじった様な跡が見られ、熊用心の為ラジオの音量を上げながらどんどん先に行く。

祝瓶山山頂 五味沢方面を俯瞰する 赤鼻分岐への下降
 
 祝瓶山から350mほど高度を落としてから大玉山へ上り返すと、後ろには急峻なスラブを身にまとった天を突くような山頂が印象的だ。このピラミダルな山容に見せられて何度も通い詰め、3本の沢をトレースしたものの残った課題は冬山。果たして山スキーに適したコースなど有るのだろうか?アプローチの長さと急峻で切れ落ちた尾根。厄介な雪庇も有りそうで一筋縄にはいかないだろう。しかし「祝瓶山コレクター」としては興味津々。


 この時期の朝日連峰は流石にそこらじゅうお花畑で、お客さんが少ない分贅沢な鑑賞登山とも言える。登山道沿いの可憐な花を踏みつけない様、ガラにも無く注意しながら歩いて写真に収める。もっとスピードアップして少しでも先を急ぎたいところだが、どうにも体が付いて来てくれないし、この際のんびりムードで北大玉山に向かう。

びっしり雪渓の残ったカクナラ沢 祝瓶山の東面。 右手は角楢下の沢の源頭。
 
 北大玉山ではシャリバテしない様におにぎりとバナナでお腹を満たし、この先気がめいって来る様な遠い大朝日岳を目指して元気良く出発。途中で雪渓の下に降りてボトルにたっぷり水を補給し、水分はいっぱい取りながらペースを上げて大朝日岳を目指す。しかしだんだんザックの重さが気になり、もっと慎重に軽量化を測るべきだったと後悔してしまう。平岩山の分岐手前の地点で再び雪渓下で水を補給し、ここでザックの余計な荷物をデポして空身同然で山頂を目指す。ここで雪渓に缶ビールを埋める事を忘れない。

 平岩山から先は尾根が広がって朝日連峰の主稜線のような景観になり、今までに無い登行意欲が出て来て自然にペースが上がって来る。この先は石ころ交じりでいつもだとスパイク地下足袋には不向きだが、中敷の威力はてきめんで殆ど苦痛も無くどんどん飛ばしても平気な様子。間違って岩を蹴飛ばしても指先はしっかりガードされて快適。岩混じりの道をジグをきりながらノンストップで上り続け、ようやく遥かなる大朝日岳に到着した。到着すると間も無くナカツル尾根から上がってきた単独行者と出会う。
  
大玉山を振り返る 平岩山の分岐 袖朝日岳
  
 
大玉山付近のお花畑 大玉山から大朝日岳方面
大朝日岳山頂 大朝日岳山頂から祝瓶山を振り返る
 
 山頂からの下降はあっという間で平岩山分岐したに到着し、デポ地で感動的な味の缶ビールを飲み干して下山に取り掛かる。北大玉山まのアップダウンを2回繰り返すと
針生平への分岐に達し、その後は荒川の沢床まで一気に下る急峻な尾根が続く。しかし流石に10時間以上行動すると急に疲れが感じられ、膝をガクガク言わせながらの急な尾根の下降は辛い。幸いスパイク地下足袋で救われているが、これが滑りやすいフェルト渓流シューズだったら悲惨だった。

 大玉沢出合にようやく到着すると今度は延々と続く水平道歩きが待っており、50分の鬱陶しい我慢歩きでやっと角楢小屋に到着。この小屋は主に釣り屋さんに利用されているが、小さいながら中は囲炉裏と生板貼りの床で快適で清潔。2年前に角楢下の沢遡行の折利用させてもらったが、管理がしっかりされていて居住性は抜群。ちなみに利用する際は協力金が必要。その後はのんびりブナ林の水平道を40分ほど歩いて大石駐車場に到着した。今回は後半の4分の1はバテバテ山行の1日だったが、山登りの原点に舞い戻ることが出来たのと、可憐なお花畑に励まされて満足度120パーセントだった。

名物の1本吊橋 ひっそりとした角楢小屋 中は無垢板敷きで囲炉裏つきの快適環境

  


針生平〜祝瓶山〜北大玉山〜大朝日岳 MAP