飯豊連峰 飯豊山 本社ノ沢(おむろのさわ)左俣 2010.05


    

      地蔵岳から飯豊山本社ノ沢方面

     

     

  山 域  飯豊連峰 飯豊山 本社ノ沢左俣
  山行日時  2010年5月9(日)  GPS積算距離 19.1km
  天 候  晴れ     
  メンバー  単独
  行 程  4:25大日杉〜7:11地蔵岳〜7:33大又沢〜9:05東尾根1600m〜10:30 10:55本山小屋〜本社ノ沢左俣〜11:12大又沢〜12:46地蔵岳〜14:10大日杉

昨年に続いて2度目の本社ノ沢だが、あの独特のコース取りとダイナミックさが印象的で、今回は左俣を目標にやって来た。5月頃の上旬頃には御西小屋や本山小屋をベースにした記録もあり、大岩沢や本社ノ沢は以前から滑られていたが、大日杉から日帰りでトレースした人は余りいない様だった。

このコースの最大の売りは本山小屋から、標高差1000mの東斜面を豪快に滑る点にあり、東北では他に類を見ないダイナミックスなコース。しかも雪は豊富で斜面は広くて明るく、大又沢までストレス無くダイレクトに滑る事が出来る。

また、コース取りが地蔵岳経由の山越えと言うところも面白く、変化に飛んだこのコースはまさにスキーヤーの為のコースとも言える。技術と体力、そしてルートファインディングの確かさが試され、飯豊連峰のビックコースとしての貫禄を持ち合わせた、全国的にも誇れる素晴らしいコースに思える。ちょっと褒め過ぎだが・・・。

地蔵岳の山越えは2年目からボチボチトレースされる様になったが、その殆どが本山小屋直下からの右俣コースに取られ、左股を滑ったという話は余り聞いた事が無い。右俣と比べると上部がやや狭い様にも見えるが、地蔵岳から見ると右俣に決して負けない魅力的な斜面に思え、スキーヤーだったら一度はトライしたくなると思うのは自分だけか?



【概要】

 大日杉の駐車場に到着すると意外に車は1台だけで、飯豊山までのアプローチの長いこのコースは敬遠気味の様で、殆ど登山者の姿を見ないのも当然だった。地蔵岳辺りに避難小屋など有れば別だが、この時期に大日杉から切合小屋に向かう人は篤志家の部類なのだろう。

まだ薄暗い大日杉を出発して間もなく、所々雪が残って登山道を遮断している為コースを見失い、踏み跡を探してウロウロしてしまう。出だしからこんな調子では先が思いやられるが、最近のものと思えるピンクのテープを辿って行くと踏み跡があり、所々雪壁にキックステップを刻みながらザンゲ坂を登って行く。

ザンゲ坂の鎖場を通過すると後は歩きやすい尾根道となり、イワウチワや開花して間もないタムシバを眺めながら登る。すっかり日も昇って体も温まり、Tシャツ1枚になるとちょうど良くなって心地よい朝だ。今年は4月からの低温続きだった為積雪は何時に無く豊富で、ザンゲ坂を過ぎると所々雪が出てきて、御田辺りからは半分位が雪の上と言う具合だった。

だまし地蔵直下の斜面は雪が豊富 地蔵岳の後ろに飯豊山が姿を現す
雪も豊富な本社ノ沢左俣は期待が出来る 狭い地蔵沢を下降して大又沢へ

雪の斜面には先行者のトレースが有り、柔らかくなった雪にキックステップを利かせ、ややスローペースを保ちながら黙々と高度を上げて行く。1150m付近からは雪が連続してスキーに履き替え、朝日に照らされた美しい五段山の斜面を眺め、シールをしっかり利かせて斜面にジグを切って行く。

だまし地蔵の山頂は左の雪壁から巻いて通過し、後は雪稜通しに進んで地蔵岳の山頂に立つと、飯豊山の大東斜面が目に飛び込んでくる。山頂付近は強風を物語る様に早く雲が流れ、流石に飯豊連峰の盟主を感じさせる存在感が有る。東斜面に大きく刻まれた本社ノ沢の左俣は地蔵岳から見ると急峻で、見栄えのするその姿は見飽きる事が無い。

大又沢へは狭くて急な地蔵沢を下降するが、シールは剥がさずにそのまま滑り降りて行く。早朝は雪が堅くて滑りにくいが、スピード優先という訳でかまわずどんどん降りて行く。大又沢に下りると上部のS字ゴルジュ付近はブロックが散乱しているが、昨年と違って大又沢はすっかり埋まって簡単に本社ノ沢出合いに到着する。

上流のS字ゴルジュは膨大なブロックの残骸 すっかり埋まった大又沢
本社ノ沢では大きなブロックが行く手を阻む 積雪量の豊富さは流石に飯豊連峰
東尾根1600m地点を目指して斜面を登る 地蔵岳方面を振り返る
 
出合いで今日始めての小休止を取っておにぎりを1個喉に押し込み、本社ノ沢の出合から沢床を進んで行くと次第に渓は開け、頭上には大きな東斜面が圧倒的な雰囲気で迫る。途中にまだ新しいブロックの崩壊跡が有り、穏やかな雰囲気にもやや厳しさを感じさせる。

暫く進んで行くと右俣から滑り降りてくる単独のスキーヤーの姿が有り、東尾根への取り付き点で会って様子を伺う。昨日大日杉から地蔵岳経由で本山小屋に入られた様で、今日は本社ノ沢右俣を滑って大日杉まで戻る様子だった。こんな所で人に会うとは思っていなかったので何となく嬉しくなる。

この先は右岸の広い斜面に取り付いて東尾根を辿るが、この尾根はH1年5月初旬にパーティー会津山岳会が末端からトレースしており、会報の「すかり 飯豊連峰特集号」には「東尾根」と記載されている。上部は比較的傾斜も緩く登り易い斜面で、上り詰めた尾根上は想像以上に広くて少し意外だ。飯豊山方面は雲が流れて強風の雰囲気だが、風の無いこの地点で2回目の小休止を取ってカレーパンをパクつく。

ここから見える本山小屋はまだ距離が有る様で、眼下になった地蔵岳を眺めながらの辛抱の時間が続く。しかし、ここは飯豊連峰の雄大さを感じさせるビューポイントでも有り、朝日連峰とは少し違ったボリューム感のある世界が広がる。しかも、最近降った新雪で周りの斜面は綺麗で、あの鬱陶しい縦溝が消え去ったのは嬉しい。

暫くの我慢の登りで本山小屋に到着すると、意外とお客さんは三国小屋から上がって来られた2人の登山者のみだった。飯豊連峰の主稜線付近は結構強風が続き、新潟方面は意外と視界が悪くて入山者は少なかったのかも知れない。


意外と広い東尾根上部 東尾根を振り返る
本山小屋方面は風が強い 本社ノ沢の右俣方面
本山小屋には2名の登山者のみで意外と静か 本山小屋からやや下がって左股へ
 
少々風は有ったが小屋に入るも面倒なので、外で簡単な昼食を済ませて本社ノ沢左俣の下降に取り掛かる。時間的にもちょうど良く雪は適度に緩んで柔らかくなり、新雪もそれなりにザラメ模様で期待が膨らむ。スタートすると最初はやや荒れ気味の斜面から次第にフラット斜面が連続し、地蔵岳を見下ろしながらショートターンで刻んで降りて行く。しっかりと谷足に加重してスピードをコントロールし、ほぼまっすぐに左俣の中心部を通過して行く。

斜面にはクラックはまったく見られず、ブロックや落石など皆無のコースは実に快適で、大きなスケールに飲み込まれるような快感を味わって板を廻して行く。標高差1000mの斜面の滑り応えは流石に飯豊を感じさせ、滑っても滑っても斜面が続く。

途中から右俣と合流するが、右俣の下部は広大なブロック雪崩れで荒れて埋まり、やはり左俣を選んでおいて正解だった様だ。後は快適なクルージングで流し、あっという間に大又沢との合流地点に辿り着いた。

間もなく新雪の快適フラットザラメ斜面が連続する 最近降った新雪も快適なザラメ
どんどん下っても斜面は続く 右俣との出合い付近
左俣は何処までも快適斜面の連続 右俣には大きなブロック雪崩れの跡
 
問題はこの先高度差400mの地蔵岳への登り返しなのだが、昨年は疲れてしまってスピードダウンしてしまった。シールを貼って狭く曲がりくねった地蔵沢を登り詰めるが、ついうっかり一つ右の小沢に迷い込んでしまう。疲れが出てきて注意力が散漫になったのだろうが、雪の消えたブッシュを乗り越えるとようやく地蔵岳への斜面に飛び出した。出発間もなくのルートミスと合計すると、合計30分位は時間を浪費したかも知れない。

地蔵岳から左俣の斜面を見るとショートターンのトラックがくっきりと残り、思わずにんまりとして一人満足感に浸る。地蔵岳には後から上がって来た人の足跡が有り、既に山頂から大日杉へ降りて誰も居なかった。一人でボーダーのトレースを追いながら下降を続け、1150m付近で板を担いで雪の斜面を降りて行き、ザンゲ坂を通過して足跡を追って行くと間もなく大日杉へ到着した。


今年の積雪状況であれば大又沢の積雪は豊富な為、、5月の後半までは問題なく徒渉できそう思われる。累計登高2300mは少し厳しいが、それ以上に充実感のある素晴らしい滑りが待っています。

左俣に刻んだトラックを見ると嬉しくなる タムシバもぼちぼち開花
イワウチワ カタクリ




飯豊山 本社ノ沢周辺 MAP