朝日連峰 南俣沢出合〜紫ナデ 2006.04


     


     対岸の尾根は快適な林間コースでオマケにパウダー。


     

 山 域  朝日連峰 紫ナデ 1349m 
 山行日時  2006年4月9日(日)  
 天 候  曇りのち風雪
 メンバー  荒井 坂野
 行 程  橋6:09〜南俣沢出合6:30〜紫ナデ10:20 12:30〜1165mピーク13:35 14:35〜林道15:09〜南俣沢出合〜橋15:50



 山スキーには天続きの今日この頃だが、今日こそはと午後からの好天を期待して快適なツアーをもくろんだ。しかし結果は毎度のように上部で風雪となり前進できず。2時間以上も天候待ちで粘ってみたが回復する様子も無く退却。飯豊、朝日の尾根の取り付きは狭くて急峻で、スキーで自由に行動できるコースは少ない。したがって下降コースにゆったり滑降を楽しめる楽しいコースとなるとなお限られる。

 でも下降コースに選んだ対岸の尾根は思わぬ快適林間コースで、しかも上部は4月としては上出来なパウダー斜面でスキーも良く走った。またヨウザ峰へ下る尾根はスキーコースには快適斜面で、障子岳を目指すならばむしろこちらの方が結構面白いツアーが楽しめそうだ。

 この時期大井沢から障子岳を目指す山スキーヤーは少ないようだが、南俣出合から竜ヶ岳を経由し天狗角力取山方面経由で登頂している様だ。しかし逆コースの紫ナデ経由のコースは細くて急な尾根が嫌われてかあまり記録を見ない。実のところスキー向きのコースとは言い難いが、登山の延長的な感覚で楽しむにはちょっと面白いかも知れない。

狭くて急な尾根に取り付く 厄介な雪庇を乗り越えて上部へ 斜面には亀裂があちらこちら

 南俣沢出合へは大井沢から1kmほど先まで除雪され、その先にはスノーモービルのトレースが続いている。天気予報では回復の予定だがどうもぱっとしない様子で、出発時間帯はパラパラと雨混じりの朝だった。南俣沢出合で橋を渡って大井沢川の左岸の平坦な杉の植林地を歩き、しばらく進んで行くと障子岳に至る尾根の登山道に取り付く。尾根は急で狭く雪の無い時期でも苦労するコースだが、予想どうりに雪庇が出て来て徐々に崩壊が始まっている様子。まともに尾根上を進むは出来ないので所々左の雪壁をトラバースし、ブロックをかわす様にして小まめにジグを切りながら上って行く。

 次第に雨は湿った雪となって視界もあまり利かなくなり、風も強まって予想外の風雪模様となってくる。急な斜面には30cmくらいの亀裂があちらこちらにあり、時々深雪の被った箇所で踏み抜いてしまう。昨日までの雨で斜面が溶け出し、その上に湿った新雪が乗っているので状態は良くない。次第に下の雪が露出する様になるとシールだけでは限界となり、スキーアイゼンを付けての登りとなる。


強引にスキーアイゼンで乗り越えてゆく 下部の斜面にはブロックが散乱

 斜面の雪が柔らかくてシールも良く効いているが、トラバースが多いせいで意外と距離が伸びず時間ばかりが過ぎてゆく。左手の大井沢側の斜面は次第に傾斜を増し、所々斜面に引っかかったブロックが崩壊して雪崩れ発生して下の沢筋を流れいった様だ。このような状況ではスキーで遊ぶなど論外の様で、ただひたすら尾根を上り詰めるのみ。

 ヨウザ峰からの尾根と合流する1196mピークで小休止するが視界は悪く、障子岳方面の様子はまったく伺う事が出来ず、広くなった尾根上の雪庇の大きさも判然としない。ピークからいったん下ると大ビクトのコルとなるり、ここから先は急な尾根が続いて紫ナデのピークに至る。ピーク直下は右に切れ落ちた大桧原川側を20mほどトラバースするが、硬いアイスバーンを片側の爪に全体重を乗せるので油断がならない。アイゼン歩行にすれば良かったと思った時には手遅れで、今回最も緊張するいやらしい場面だった。

大規模なブロック崩壊で雪崩が発生した跡 融けた雪に新雪が30cm程 紫ナデでは2時間以上の天気待ち
 紫ナデのピークに経つと西面の出合川から吹き上げる風は強烈だ。しかもこの先の障子岳に至る尾根はまったく見えず、この状態では巨大な雪庇の上を目をつぶって歩くような物。無雪期ならが左手に鋭く落ち込んだ花崗岩の大スラブ群が望め、障子岳を経て天狗小屋〜竜ヶ岳〜南俣沢出合に至る素晴らしい周遊コースだが、今は雪庇を踏み抜けば真っ逆さまでサヨウナラという状況。やむなく一時ツェルトを被って天候の回復を期待するが、予想に反して天候は悪化するばかりでどうにもならず、結局2時間以上も待った後退却を決める。

 視界不良の中シールを外して慎重に下降を開始し、大ビクトまでのコルまでは固めの斜面をジャンプターンを交えながら下る。上り返しは階段登行で乗り切ると後は例の面倒な細い尾根が待っている。これは勘弁してもらい1196mピークから北東に派生する対岸の尾根を降りる。地図を見ると尾根は広くてヨウザ峰方面に続き、途中から右の緩やかな尾根を降りて南俣沢出合に戻るコースを取る。1165mのピークまでは多少の登り返しが有るがシールなしでも問題は無く、その後の標高差600mあまりは尾根の広い理想的な林間コースが続いている。下部は重い雪でどうにもならないが、上部は4月としては上出来なパウダースキーコースで、途中敗退のうっぷんを晴らすような快適な滑りを満喫できた。2月頃だったら風に叩かれることも無く、素晴らしいパウダーランが期待できるかもしれない。

紫ナデから大クビトへの斜面を滑る 対岸の尾根からの枯松山方面
 
大桧原川を挟んで対岸の尾根 対岸の尾根は格好の林間コース

 
  
南俣沢出合〜紫ナデコース