南蔵王 南屏風東面


適度な傾斜の快適斜面が続く


【期日】    2003330日 ()
【メンバー】  坂野  荒井
【天候】   
 晴れ

行動    白石スキー場800〜不忘山1030〜南屏風1145 滑降開始1200〜白石スキー場1300
【概要】

 3月になり比較的天候も安定して雪も締まってきたので、今回は滑りを楽しめるコースとして南蔵王の南屏風東面のコースを選んだ。この南屏風東面の斜面は南東方向を向いており、北屏風の東面と違って水引入道の尾根に視界をさえぎられ、仙台方面からはなかなか見ることは出来ない。私自身もあまり感心が無かったので見た記憶も無く、記録を見て初めてその存在を知ったという状況である。

 しかし最近は山スキーがバックカントリースキーと呼ばれ、テレマークスキーヤー、スノーボーダーを含めた多くの人が冬山にやって来るようになり、刈田の非難小屋にはいろいろな人が出入りしており、冬山も山屋の独壇場とは言えなくなって来た。おまけに3月になると蔵王の主稜線にはやたらとスノーモービルのトレース後が目立ち、刈田岳エコーライン沿いには観光客の乗った雪上車がうなりを上げながら登って行く姿が見られ、冬山といえどもなにかと騒々しい所だ。

 その中で南蔵王方面は比較的訪れる人も少なく、昔とあまり変わらない冬山の静けさを保っているようで、なんとなくひっそりとした雰囲気で気に入っている。今回は白石スキー場が先週でクローズになった為、誰もいなくなったゲレンデを黙々とシールを効かせながら不忘山を目指す。風は少し強いが天候に恵まれ、快適に高度を稼いでゆき、幾分クラスト気味の斜面を左の稜線沿いのルートを選んで頂上を目指す。先行の登山者が一人だけで他に誰もいなく、どうやらスキーヤーは我々2人のみのようだった。

   

 南屏風の東面                    不忘山直下の斜面

 不忘山の直下で岩場が出てきてスキーを脱ぎ、少し歩くと頂上に到着した。ここから先の南屏風山には一旦痩せた稜線を下り登り返すが、スキーを脱いでツボ足で歩いて頂上を目指すのにアイゼンが欲しいところだ。しかし左右に切れ落ちた稜線歩きは、いかにも冬山登山という雰囲気があって気分も良く、久しぶりの一寸した緊張感を味わうことが出来た。不忘山までは登山者が上がってくるが、この先は殆ど歩いている人も少なく、ましてやスキーヤーなどの姿はどこにも無い。南屏風手前の稜線から見下ろすと、コガ沢支流の権現沢も狭いながら快適な滑降コースに見えるが、今回はあくまで本流筋の南屏風山頂からの滑降を目指す。頂上にたどり着くとザックから缶ビールを取り出し、気分良く喉を湿らせいつもの儀式を経て調子を整える。ここから見るコガ沢の全景は、ちょうど飯豊連邦の入門内沢を二分の一程に縮小したような感じで、扇状に広がった斜面が稜線まで広がっていおり、何本かの快適な滑降コースが選べそうに見えた。

    

不忘山より南屏風東面を見る。手前は権現沢。       不忘山から南屏風への登り返し

 シールをはずして早速滑降に取り掛かる。雪の状態は適度にクラストした斜面でエッジが良く効き、スキーは快適に廻せるので最高の状態といえそうだ。南屏風の山頂からスタートし、エッジに雪の引っかかりも無く、ウエーデルンでスピードをコントロールしながら最大傾斜線を滑り降りる。カール状の斜面を豪快に滑ってゆくと斜面の中央部で傾斜が少しきつくなり、狭いルンゼ状の雪壁が続くが、一旦小休止してからゆっくりとしたジャンプ気味のターンで通過する。やがて傾斜が落ちてきて斜面が広がると雪の質も変化し、雪が重くなってスキーのトップが沈み、スキーは少し廻しずらくなってくる。急斜面が終わり斜面の全体が見える所まで下り小休止。振り返って見上げると斜面のスケールが結構大きいのに気が付く。

     

南屏風山頂から東面を見下ろす                 快適な頂上直下の斜面
 

 こんなすばらしいスロープに我々2人だけというのは実に気分が良いもので、スキー場からのアプローチの距離を考えても余りある充実感を感じることが出来る。この先からは沢の中に入り、なだらかな谷筋をただひたすら下を目指してスキーを走らせる。途中に大きな滝があるが、すっかり雪に覆われていて側壁をトラバースして難なくクリアーする。途中から右岸の樹林帯に入ってトラバースしながら下るが、再び谷筋に戻って藪を潜り抜けながら斜面を適当に選んで下降を続ける。下流になるに従がって水流が多くなり、所々雪が切れてくるが、何とかスキーを履いたままで下降を続ける。両岸が広くなり、右岸の斜面が緩やかになった頃にトラバースして白石スキー場を目指す。樹林帯を若干登り返しながら行くと、突然スキー場のゲレンデに飛び出し、そのまま緩いスロープをのんびり滑ってゆくと今日の終了点にたどり着いた。

 今度のコースは雪の状態が大変良く、スキーを楽しむには最高の条件だった。白石スキー場がクローズになっていて少しアルバイトがあったが、不忘山からの稜線歩きも快適で、滑降後の沢筋もほぼスキーで快適に下ることが出来たので、今回は予想以上に快適の一語に尽きる。滑降ルートとして蔵王では古くから丸山沢が良く知られた存在だが、ここ南屏風東面もそれに負けないくらいのすばらしいコースと思われ、もっと多くのスキーヤーが訪れても良い所と思う。ただあまり時期が遅くなるとコガ沢の雪が解けてしまい、藪もうるさくなって下降しにくくなるので注意をしたほうが良い。

  

適度にクラストした斜面を滑る               南屏風東面の全景

  

 コガ沢の右岸                         雪に埋もれた滝

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