丸山沢スキー滑降 

日程     平成16221()
メンバー   坂野 (単独)
天候     晴れ時々風雪
行動     すみかわスノーパーク7:55〜刈田避難小屋9:45 10:10〜熊野避難小屋11:00 11:50〜丸山沢滑降〜カモシカ温泉跡12:10〜賽の河原13:05〜すみかわスノーパーク13:30
高度差    820m  カモシカ温泉跡〜ヒヨドリ越えの登り返し280m


樹氷で有名な蔵王連邦であるが山スキーの歴史も古く、多くのツアーコースが開拓されており、変化にとんだ多くのコースが知られている。穏やかな山容と豊富な雪の量、上部には見事な樹氷原は広がりスキーを愛好するものにとっては、またとない格好のプレイグランドである。最近はテレマークスキーヤーやスノーボーダーが多く訪れ、この世界も昔気質の中年山屋の独占地帯とはいえなくなった。特に若者立ちの進出は目覚しく、人気エリアの刈田岳中央コース、不忘山、坊平周辺には毎週ボードを背負った一団の姿を目にすることも多い。いまや我々オジサン山スキーヤーは少数派となり、少し影が薄くなってきたのはただの気のせいだろうか。しかし雪山を楽しむ仲間が増えたことは素直に嬉しくもある。

今回の丸山沢は昔から良く滑られている有名なクラシックコースであるが、殆どが3月下旬〜4月にかけて滑られており、厳冬期に滑ったという話はあまり聞いた事が無い。かつて大きな雪崩がカモシカ温泉の建物を跡形も無く吹き飛ばしてしまった事はあまりにも有名で、何時とは無く丸山沢イコール雪崩の巣といったイメージで捉えられているようだ。そんなところなら尚更のこと覗いてみたいというのは、やはり山屋の気質が抜けないのか。

今日は朝からの晴天だが、前日の夜になって急遽丸山沢行きを決めたのも地元スキーヤーの特権といえる。すみかわスノーパークに到着したのは7:20AMで、誰もいないゲレンデを刈田岳目指して登り出す。天候には恵まれた日だが、大黒天を過ぎるあたりから風が強まり、吹き上げる雪煙とともに厳冬期を感じさせるには充分なロケーションである。途中で2台の観光ツアーの雪上車2台に追い抜かれてしまうが、慌てることも無くマイペースで刈田岳目指して堅いシュカブラの斜面を登ってゆく。刈田岳避難小屋にはノンストップで到着し、小休止の後すぐに熊野避難小屋を目指して馬の背の稜線を進む。坊平方面から上がって来たスキーヤーを一人見かけたが、それ以外にはこの先誰にも会うことは無く、実に静かな山行を楽しむことが出来る。しかし馬の背の中間部になると北西の風は一段と強まり、次第に体がお釜の斜面方向に流されそうな勢いで、避難小屋までにはたいした距離も無いが以外に疲れる。

       
          五色岳の奥に馬の背の稜線が見える         刈田岳山頂直下の井戸沢の斜面

熊野避難小屋に到着しようやく大休止。缶ビールを一本空けてからゆっくりと昼食とし、その後スキーのシールを外して固形ワックスを塗ってコルクで伸ばし、兼用靴のバックルを閉めて滑降の体制を整える。風が強く視界も200m程だが方向を誤ることも無く、小屋を出るとすぐに丸山沢への下降点を目指し、堅くウインドクラストした緩斜面を降りて行く。今シーズン新調したカービングタイプの板は、荒れた堅い斜面に負けることも無くエッジが立ち、ガタガタの斜面でも実に安定感のあるターンを描きながら滑ることが出来る。視界が回復し、ロバも耳を確認できるところから先は急斜面となったすり鉢状のコースが待っており、その中心部をめがけてショートターンを刻みながら降りてゆく。思ったよりも斜面は堅く閉まっており、エッジの切れる心地よい感触を楽しみながら下の喉の部分まで一気に飛ばしてゆく。降雪直後であれば雪崩が集中して危険な個所に思われるが、今日に限っては何の不安も感じられない。この先は滝になっているようだが雪に埋まっていて狭い急な斜面が続く。その後は広い漏斗状の斜面を滑ってゆくと再び両岸は急に狭まり、その下は滝になったような急斜面となってカモシカ温泉跡地へと導かれてゆく。

       
           中央コースからお濁川を俯瞰する            お釜、熊野、馬の背方面
       
           馬の背から刈田岳方面                   刈田岳の山頂
       
           丸山沢への入り口とロバの耳             丸山沢源頭の斜面はクラスト状態

この様に比較的短い傾斜の急な沢だが、沢全体が変化に富んだ地形で一枚バーンの斜面とは違った面白さが有り、これが人気コースとなっている所以でであろう。雪崩の収まった頃、まだ滝が露出していない時期ならば実に快適な滑降が約束されるであろう。カモシカ温泉跡地辺りから上部を省みるとまさに岩と雪の世界がくり広がり、噴出口から立ち上る噴煙が他に無い特異な雰囲気を感じさせる。下部になると雪が少し重くなるが、何とか板を回す事が出来る程度で全体的には快適なパウダーランといえる。ただ毎度の事ながら、この先は濁川を渡って標高差280m程のヒヨドリ越えが待っており、体力の低下が著しい私にとっては疲れた体に鞭を打つようで辛い修行でもある。

       
          沢の中では別の世界にトリップする           ヒマラヤの空もこのような感じだったか?
       
          短いながら変化にとんだコース              丸山名物の噴気孔

シールを付けて急な雪壁をジグザグ登高でヒヨドリ越えを登りきり、滑り降りた丸山沢を対岸に見るとなかなか絵になる山容なので、デジカメを取り出して何枚か滑降ラインを写真に収める。左となりの振子沢はまだ滑っていないが、短い沢ではあるがちょっと玄人好みのするようなコースのようで、この次には滑ってみたい所の一つである。ただ複雑な地形で、一部に急峻なトラバースがありそうで油断が出来ないように思われるルートの取り方を間違えると進退窮まりそうな感じがする。又丸山沢上部右手の熊野岳の東斜面も面白そうに見える。
       
          H15年2月に初登された不帰ノ滝           ひよどりからは丸山沢の全貌が見える

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