2010年 沢登り&釣り

 2010年8月22日(日)
 二口山塊 小松原沢 左俣 (小松倉沢)

 
 二口山塊の小松原沢を訪れるのは3度目だが、およそ35年ぶりだろうと思う。最初は18歳の時のワンゲル1年生の7月頃で、山歩きも何も分からずただ6年生OB先輩の後を追った。(後に川内・毛猛山塊などの開拓期に活躍したM氏)

 もちろんハーネスなどなく、ノーヘルにノーザイル、田舎から持ってきた百姓足袋にワラジ。ついでにこれも初めての3年生の女子部員が一人お客様状態。

 内容は覚えていないが、一度だけ女子部員がミニゴルジュ帯でドボンしたのだけ記憶にある。結構楽しく過ごしたのだろう。これが自分の沢登りのスタート地点だった。

 2度目はその2年後くらいだったと思うが、これがまた山岳会の定例山行の時で、翌日の沢登りはともかくその前夜はとんでもない一夜になった記憶がある。

 今では二口山塊と言えば大行沢が全国的知名度抜群だが、その頃は小松原沢が人気の筆頭で、大行沢などは誰も相手にしない雰囲気があった。つまり、マッタリ系の沢には興味が湧かなかったのだ。

 今日は昔のイメージだけを頼りにテンカラ竿を持って訪れたが、ロクに情報をリサーチしなかったツケがまわり、予想もしない藪漕ぎと仙台神室から二口峠までの縦走を強いられてしまった。

【天候】 8月22日(日) 晴れ  画像はこちらから

【行程】 
5:50林道ゲート〜7:54二俣〜8:32左俣 (小松倉沢)〜9:18左俣大滝の上(950m)〜10:09二俣〜11:36仙台神室岳〜山形神室岳〜14:50二口林道峠〜16:20林道ゲート

【メンバー】 単独

【概要
 二口林道へは現在工事中で,
土・日のみ途中まで車の乗り入れが可能になっている。終点ゲートに到着すると他に釣り屋さんの車もなく、一番乗りを果たせたのが何となく嬉しい。

 早速身支度を整え、あまり必要とも思えなかったが30mロープと最低限のギヤをザックに押し込み、一応沢登り気分を出して出発する。

 橋を渡ってから間もなく沢に降り立ち、割と広い岩床が続く本流を歩いてゆく。朝の清々しい空気と日差しが印象的で、所々出てくる緩いナメ滝を鑑賞しながら進む。水の冷たさは無く、所々イワナのポイントを探しながら歩いてゆくと、意外に立派な3〜5m前後の美しい滝が現れる。
 
 ほとんどフリクションで快適に登れるが、1本は10m位下がって右のガリーから簡単に高巻いてクリアーする。以前は翆雲荘から入渓していたので分からなかったが、下部の沢がこんなにも美しい岩床とナメ滝の連続とは知らなかった。

 途中からイワナが足元から走り出し、しばらく進んでから我慢がならずテンカラ竿を出して振ってみる。¥2900のバッタ物だが、3.3mの竿に3.6mのラインはこの沢では振り易く、間もなく20cm位の岩魚が掛かったが手元でバラしてしまった。鉤先が錆びて折れてしまったのだ。昨年からハリスに付けっぱなしで、横着して新しい針に替えなかったのが原因。

 600m地点で南沢出会いを通過し、渓は開けて快適な広い岩床く中を進んでゆくと、標高830m付近で左から沢が入って小休止とする。今までは一人で沢を歩くことは余りなかったが、誰にも気兼ねなく釣りをしながらのんびり歩くのも悪くはない。

 コースは左俣に入って大きく左に曲がってからもナメ滝が続き、2m程の滝を次々にフリクションを効かせて快適に進んでゆく。途中から再び20cm位の岩魚が足元から走り、3度目の竿を振ったところが1発で当たるが、又も足元でバラしてしまう。飯豊・朝日の純朴な魚と違い、さんざん責められた魚の警戒心は強く食いが浅い様だ。

 でも、自分で巻いた毛鉤でかけた時には嬉しい。特に真夏は毛鉤を沈めて釣るウェットテンカラよりも、毛鉤を浮かせたドライテンカラに分があるようで、魚が反転した時に合わせるスリリングさが面白い。結局坊主でも竿を持ってきた甲斐はあった様だ。

 標高920mで二俣となって一瞬迷ってしまったが、以前の記憶で沢床の高い左俣を選んだような気もした。水量が少なくあまり自信はなかったが、興味本位でそのまま進んでみる事にしてどんどん先を進む。当初から地図上での予定コースだが、結局これが間違いで後で辛い思いをする事になる。

 さらに進むと2〜3mのナメ滝が現れ、立派な釜を持った滝も現れて意外と見栄えがする。全て楽勝に登れる滝ばかりで楽しく通過すると、突然深いゴルジュとなってその先には大滝が登場する。左は下部が大きく被って全体的に暗い感じだが、滝の最上段は見えず全体では40〜50m位はありそうに思えた。

 当初は銚子の大滝と思ったがどうも印象が異なる。高巻きは最初右の尾根に取り付いたが前方に岩場があり、一旦戻って滝の20m位前の左の小尾根に取り付く。割とはっきりしたトレースがあり、滝の落ち口から10m程高い地点の太いブナの木から右に下り、草付きの斜面を通過して意外と簡単に滝の落ち口に立つ。

 次の6m程の立派な滝を超えて小休止とし、展望台でお約束の発泡酒を冷やしてマッタリとした時間を過ごす。この時期となるとメジロは皆無で、沢の中は暑すぎずに清々しい沢風が吹き抜け、これぞ真夏の楽園とも思える世界が広がる。飯豊・朝日と異なり、難儀な雪渓や腕力を酷使する高巻き・深くて暗いゴルジュもないので緊張感はほぼゼロ。

 その先は次第に沢幅は狭くなるが、程よく苔むした岩と両岸の美しいブナ林は実に絵になる。この辺りでビバークした跡もあるがその気持ちが良く分かる。

 しかし、最後の詰めは次第に笹薮が出てきて急になり、その後は密生した灌木から最も手強いシャクナゲ帯の登場となる。まったく視界が利かない藪を泳ぐ様に漕ぎ続け、登山者の声が聞こえた辺りから右にトラバースしてなんとか登山道に辿り付く。最近すっかり鈍った体にに45分の藪漕ぎは実にしんどい。

 仙台神室岳の山頂には二人の登山者の姿があり、笹谷峠方面からは次々に登山者がやって来る。しかし、すっかり綺麗に刈り払いされた山形神室岳方面とは異なり、目標の南沢へ続くはずの登山道は廃道となり、3.0m程の密生した灌木帯が続いて歩けない。35年ほど前には姉滝からの登山道が整備され、結構若い登山者が歩いていたはずだが・・・・。

 ロクに下調べもしないで舐めた結果がこの通りで、結局山頂で1時間ほどウロウロした後、泣く泣く山形神室岳経由で二口峠までの縦走のオマケが付いた。しかし、有り難くもテンカラ・沢登り・縦走の3点豪華盛りの充実した1日となった次第です。でも水無しで3時間半行動はきつかった。


       仙台神室岳から遠くの二口峠を見る

       ようやく辿り着いた二口峠のゲート

    


林道から降りて美しい岩床が続く

フリクションで快適に超えてゆく

10m手前に戻って右のガリーから楽に巻いてゆく

二口山塊特有の美しいナメが連続する

足元から小さな魚が走るがそのまま前進

思わず竿を振って掛けたが針が折れてバラす

どこまでも続くような美しい渓相

右がすっかり被った大滝が登場。40〜50m位ありそう。

左から踏み跡を辿って高巻き滝の落ち口へ


眩しい日差しが差し込んですがすがしい空気

静かな渓も詰めの雰囲気

絵になるようなブナ林を登ってゆく



側壁から落下する滝は右から豪快に直登する



見事な二筋の滝は左手前から高巻いてゴルジュ帯に入る


最後の二俣滝は左をシャワークライミングで突破する