南蔵王 南屏風岳コガ沢右俣 2006.01




今年のコガ沢は雪庇の張り出しが小さい。



 山 域  南蔵王 南屏風岳 (1810m) 
 山行日時  2006年1月29日(日) 
 天 候  晴れ
 メンバー  荒井 坂野
 行 程  白石スキー場〜直登コース〜不忘山〜南屏風山〜コガ沢右俣〜トラバ     ースコース〜東尾根〜白石スキー場

 南屏風岳のコガ沢は下流に支流を持たず、上流になって放射状になって分散する内院に様な地形となっている。白水社の日本登山大系を見てもその支流については明確な名前はなく、今回のコースは便宜上コガ沢右俣としておきます。ドロップポイントは水引入道の尾根が主稜線とぶつかるショルダーピークで、比較的傾斜のゆるい斜面で滑り易いが、不忘山からは距離が有り、滑降スタート時間はすでに1:00PMを廻っていた。もう少し早い時間帯に出発すべきで、今日は気温が高かったことも有り、下部の雪質は若干重い感じのパウダースキーだった。

1月22日 白石スキー場7:55〜直登コース(1388m)9:08〜不忘山10:10〜南屏風山11:15〜水引の分岐12:00 滑降開始12:48〜コガ沢右俣〜権現沢出合13:38〜トラバースコース〜東尾根14:48〜白石スキー場15:15

 【1月29日】
 今回はコガ沢にしようか北屏風の東壁にしようかと迷ったが、今日も南屏風岳、北屏風岳ともにガスに覆われて姿を見せず、主稜線の雪庇の発達具合が確認できない。そこでどちらにでも選択が可能な方法としては、不忘山経由で南屏風を越して北屏風を目指すという発想で、現地で状況判断をしていずれかに決める事にする。東壁からの下降を考慮していつものハートランドの駐車場付近に1台を配置し、その後白石スキー場を目指す。

 白石スキー場のリフト運転開始時間は8:30AM以降なので、8:00AMに駐車場を出発して左側の緩い斜面を登り、汗をかきながら約30分でゲレンデトップに到着する。するともう既に7〜8人の山スキーヤーと、スノーシュー、ワカンを履いた3人の登山者が先行していた。これは彼らが早すぎるのではなく、ただ単に我々の出発時間が遅いだけだった。昨日には多くの登山者以外に多くの山スキーヤー、テレマーカー、スノーボーダーが入った模様で、東尾根に至る緩斜面には多くのトレースが残っており、不忘山が人気の冬山、山スキーコースだと言う事を物語っている。

  
 
 
不忘山のご機嫌は良さそう 不忘山を目指しまっすぐ進む 昨日の多くのトレース跡を行く
 
 南屏風の山頂はガスで姿を見せないが、不忘山の山頂は相変わらず風は強そうだが晴れており、今日のコガ沢だったら何とかなるだろうと言う感じがした。先週の水引入道もそうだったが、2週間ほど前に降った雨で底が固くなっており、その上に積もった雪が昨日の好天で解けて少し固まっている。しかし直登コースに入ると少し雪は深くなり、ファットスキーに付けた間に合わせのシールでも何とかなる。途中でスノーシューを履いた2名の登山者を追い越し、ジグを切って高度を上げてゆくとやはり硬い斜面に出くわし、仕方なく雪の多い東尾根方面にトラバース気味に上ってゆく。
 
 東尾根の前方には7名ほどの山スキーのグループが先行しており、途中で板を全てデポして頂上へ向かっている姿が見える。途中では何度かズルズルと後退しながら前進し、ブッシュが露出した辺りでいい加減に諦めてツボ足になって歩く。今日はいつになく気温が5℃くらい高い様だが、尾根に出ると風は強まり寒く目出帽とフードで防風スタイルをとる。相変わらず南屏風の主稜線は深いガスに覆われて姿を見せず、肝心の雪庇の張り出し具合は解らずじまい。地元遠刈田の住人に聞いてみても、ここ1週間は殆ど稜線は見えずどうなっているか解らないと言う。

途中から東尾根に逃げる 不忘山まではツボ足の方が楽 不忘山の山頂
 
 ツボ足で100mほど登るとそこは強風の山頂で、先行していた山スキーのグループが下降に取り掛かっているところだった。その後に3〜4人の登山者が上がってきたが、風が強いのですぐに元来た道を引き返して行った。不忘山頂からは時々稜線付近が見え隠れし、ようやく天気が回復してきた様子でやる気が出て来る。ここから先には昨日のものと思われるトレースが残っており、南屏風に至る鋭い稜線がいかにも厳冬期らしい雰囲気を出している。

 山頂から南屏風までの鞍部は以外にいつもより雪が少なく、固くクラストして滑りやすいがむしろ歩き易い。風が強いとアイゼンが欲しくなるがそれ程でもなく、デジカメで写真を撮りながらアルペン的な光景を楽しみながらのんびりと稜線を歩く。昨日のトレースは鞍部のところで途絶えており、ピットを掘った穴が有る事からどうやら権現沢を下降した模様だ。鞍部の登りは所々クラストしていてキックステップがやっとの所も有り、やや緊張感の有る登りの斜面を越えて南屏風へ続く緩斜面に出て再びスキーを履く。 

   
不忘山頂から下部の尾根を見る 次第に風雪が強まる
不忘山の登山者 鞍部の雪は意外と少ない
権現沢源頭の鞍部 快適なキックステップで越える
鞍部から不忘山を振り返る 南屏風岳の直下

 南屏風の山頂でもすっかりガスに覆われてコガ沢の斜面は見えず、シュカブラの広い斜面を北屏風岳の方向目指してスキーを走らせ、最低鞍部を目指して降りて行く。途中で這い松の穴にスキーごと腰まで落ちてしまったが、良く見るとそこは山頂の壁上の雪庇だった。今度は慎重に東側を迂回しながら鞍部を越え、這い松混じりの斜面を登り切るとそこは目標の水引入道との分岐だった。さらに50mほど北屏風方向に進むと急に切れ落ちた東壁が近づき、ガスもすっかり飛んでろうずめ平方面の様子が良く見える。

 東壁にするかコガ沢にするか迷ってしまったが、ちょうどガスが晴れてコガ沢が全貌を現し、このコースも一度は良かろうと言う事でなんとなくコガ沢にする。ピットを掘って雪をチェックしたが弱層は見られず、しっかり結合した良いコンデションと判断してゴーサインを出す。さらに10mほど下ってからスロープカットを確認し、直下の急な斜面に飛び込むようにしてスタートする。不忘山付近は雪が少ない感じでブッシュが出ているが、ここの南屏風の斜面は多量の吹き溜まりで出来た斜面が連続し、深いパウダーの浮力感を実感しながらショートターンで下降して行く。

    

 



                
北屏風岳と直下の東壁 秋山沢左俣の斜面


  

 


 
今年の樹氷は見事な姿 馬の神方面の尾根
 
 200mも下ると斜面の傾斜は落ちて沢筋となり、次第に両側が狭まってくるがミドルターンで滑るくらいは問題ない。しかし今日は気温が高い為かいつもより若干雪が重い感じで、カービングタイプの相方の方は多少手こずっている雰囲気だった。狭くなった斜面を降りて行くと周りにはブロックが散乱しており、振り返ると右隣の斜面から雪崩れたデブリが滝の上部で堆積していた。良く見ると最低鞍部下の堆積した雪が大きく崩壊し、規模の大きいブロック雪崩となってコガ沢本流まで達している様だった。

 コガ沢の本流に出てからさらに下って行くと滝壺が現れ、昨年の今頃と比べても雪が少い様子が良く解る。権現沢の出合までは3箇所ほど露出しているが、その中の一つは10mほど下が切れ落ちており、トラバースしてから振り返って初めて危険を感じた。トラバースする時は余裕を持って上部をトラバースした方が良く、スノーシューを使用している人は特に注意を要する。1260m地点の権現沢出合で小休止した後はシール登行に切り替え、権現沢を30m程上ると登山道の標識が有り、この先を登り気味にトラバースを続けると30分強で不忘山の東尾根(1340m)地点に飛び出す。

 今年は蔵王連邦西面(宮城県側)は以外に雪が少なく、コガ沢を沢通しに下る事は不可能で下降ルートはここしかない。蔵王特有の密生した藪は下部ほどひどいので、なるべく上部に逃げて早めに東尾根に出た方が良い。その先は緩斜面を快適に飛ばし、15分ほどで白石スキー場の駐車場に達する。

稜線直下の斜面 下部の沢筋は雪が若干重い
正面左手のピークが南屏風岳 滝壺のトラバースは要注意

 
南蔵王 南屏風コガ沢右俣コース