南蔵王 北屏風東壁 



東壁中間部のパウダー三昧


【日程】      平成16211()
メンバー   坂野 荒井
【天候】      晴れ
行動     えぼしスキー場リフト終点8:50〜後烏帽子岳9:30:〜ろうずめ平10:15〜北尾根11:00〜北屏風11:45 滑降開始12:10〜秋山沢東壁基部12:15〜東北大学観測所14:15
高度差    1100m  

【概要】

 昨年4月12日以来、今回2度目の北屏風東壁のスキーである。昨シーズンは念願とも言える東壁に、始めて足跡を刻むことが出来て自分なりに満足感を味わっていたが、1シーズン過ぎると今度は厳冬期の雪の感触はどうなのか?そんなことが気がかりで、冬が近づくにつれて仙台の市内から屏風の斜面を何時も眺めていた。

 しかし12月から1月にかけては蔵王西面では天候が安定せず、たとえ晴れていても強風が吹き荒れて行動不能となり、なかなかベストコンディションの日はやって来ない。1週間ほど強い冬型の気圧配置が続き、日本海側を中心にドカ雪が降って各地で遭難騒ぎが発生したが、10日になって移動性高気圧に覆われて天候は安定し、連続して降り積もった雪も安定して締まってきた。この機会を見逃す手は無く、かねての打ち合わせどうりに計画を実行する。

        

               後烏帽子への深雪の斜面          後烏帽子からは東壁が対座する

 今回も北屏風を滑って秋山沢を下るので、東北大学の観測所に車をデポ。えぼしスキー場からゴンドラ、リフトを乗り継いで終点にたどり着いたのは8:50AMだった。先行パーティーは無く男女ペアの1パーティのみが後に続いたのみで他にはいない。後烏帽子までは前日にわかんじきの登山者が何人も入ったらしく、すっかり遊歩道のようなトレールがついていてペースははかどる。頂上からの展望は実にすばらしく、正面に見事にまばゆく輝く北屏風東面(地元山屋の間では東壁と呼ばれている)が真正面に対座し、北側には刈田、熊野岳、二口、船形、その後方は遥かに月山がくっきりと確認できる。

 ろうずめ平への下降はシールをつけっぱなしで下り、這い帯を避けながら斜滑降を繰り返し、最後は直下降で最低鞍部に滑り込む。最低コルは風が少し強まるが、ここから見る北屏風東面の雄大な姿にすっかり見入ってしまう。白くまぶしい雪の壁に、稜線からは5〜10mほどに張り出した巨大な雪庇、そして厳冬期を感じさせる動きの速い雪煙。しばらく忘れていたヒマラヤの情景を髣髴させるような、見事な光景に見入ってしまう。こんな所ならバックカントリーガイド業を立ち上げれば、えぼしスキー場〜後烏帽子〜ろうずめ平〜澄川スノーパークの周遊コースで、お一人様\15000は堅い。悪天候の時は後烏帽子周辺で適当に遊んで頂く。その他、刈田岳、不忘山とご希望のコースに応じます。ナイスビジネスかも。

 ろうずめ平の上りは傾斜がきいので、スコップを使ってハンドテストを行った後、一気に北屏風に続く北尾根を目指す。予想以上に雪の締まりは良く、ジグザグ登高を繰り返して30分程で稜線に達する。昨年4月に登ったときよりハイペースで、あまり疲れも感じられない。北尾根上は東側に雪庇が大きく張り出しているのでなるべく這い松付近を辿り、慎重に北屏風山頂を目指すが下降点がなかなか確認でき無い。しばらく行くと昨年4月の時の北屏風山頂直下の露岩が在った。ちょうど良い雪庇の切れ目の様でそこからの下降も可能の様であるが、直下の斜面は傾斜が急で雪崩れる可能性も在り、今回は遠慮することにした。山頂直下手前のルンゼ状の斜面も雪庇が切れていて下降できそうだが、上部斜面の表層が荒れていて悪そうでこれもパス。結局無理をしないで200m程手前のピークから派生する尾根上の斜面に目をつけ、秋山沢に続くコースの下降点とする。

        

            ろうずめ平から北尾根への斜面            稜線直下は厳冬期の雰囲

 今日は荒井君に先行してもらい、50m程緩い斜面を下降してから下の斜面の様子を確認してもらうと、右のルンゼは下部が狭い感じなで右の無木立の広いオープンスロープが良いらしい。左に20mほど斜滑降で振ってからはロングターンで少しクラストした急斜面を下ってゆく。中間部からはパウダー状態になり、快適そうな雪煙を上げながら壁の基部付近まで滑り込む。2番手の私は雪庇下のクラストした最大傾斜線をショートターンで下降してゆき、途中からは適度なパウダースノーとなって快適なリズムに乗って滑り降りる。斜度も35度前後で深雪でも板を廻しやすく、2週間ほど前の南蔵王、権現沢に続いてのパウダー三昧を満喫することが出来た。

 東斜面のため高度を下げるに従い雪が少し重くなり、壁の基部付近になるとスキーが引っかかって廻しずらくなるが、4月頃の雪と比べても滑りは良い。もう少し幅の広いセミファットタイプの板だったらもっと楽しい気もするが、オールラウンド山スキーヤーを目指す自分としては、これも練習課題と考えてとにかく慣れるようにしたい。また、もう少し適切なワックスを選択すれば滑りも変わるかもしれない。まだ、まだ研究の余地有りと言うことか?

 15分ほど休憩しながら東壁の様子を確認して、次回のコースなどを検討してみる。ここから見る限り雪庇の切れ目が4箇所ほど有り、4〜5本のコ−ス取りが出来そうで今後の楽しみとして取っておくのも良い。考えて見ると仙台から比較的近い蔵王山系で、この様に本格的なすばらしいエリアが存在することはすばらしく、スキーの好きな人間にとっては実にありがたい。しかしこれはあくまで天候、雪の状態が良いことが前提であって、悪条件の時は慎重な行動が要求される。

      
  

              下降点から秋山沢を見る            適度なパウダー斜面が待っている

 下降路は秋山沢左岸の台地状傾斜の緩い登山道沿いにくだり、カラ松造林地を通りすぎて左の沢沿いに下降しする、と東北大学観測所にいたる林道にでて終了する。南屏風のコガ沢のような滝壷なども無く、雪が多くて藪に悩まされることが無ければ比較的安心して下れる下降路である。
           
               

                               北屏風東壁の滑降ライン


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