飯豊連邦 梶川尾根〜北股岳(2024.9m)〜石転び沢下降  




梶川尾根、滝見台から見る石転び沢。




 山 域  飯豊連邦 北股岳 (2024.9m)
 山行日時  2005年 11月3日(日)  
 天 候  曇りのち雨
 メンバー  単独

 今シーズン最後の山歩きは飯豊連邦の梶川尾根になった。実はこの梶川尾根を今まで登ったことが無い。しかも石転び沢は5月頃しか訪れたことは無く、無雪期のコースはまったく知らない。最近までその事をすっかり忘れてしまっていたが、良く思い出してみるとかつて梶川コースでは無念の敗退を喫した山行があった。

 もう30年ほど前の事だが山岳会の正月合宿が飯豊で有り、コースは梶川尾根に決まった。事前の荷揚げも行い万全の体制で挑んだつもりだったが、飯豊の厳冬期は我々の想像をはるかに超えた脅威だった。当時は積雪量が現在より多かったと思われるが、尾根に取り付いて見れば胸までのラッセルが待っており、30kg以上有るキスリングを背負った我々は非弱な人間でしかなかった。結局滝見台までも達せず幕営となったが、猛烈な風雪はテントの設営さえ困難になり雪洞を掘る羽目になった。ようやく掘った8人用の雪洞はあまりにも大き過ぎ、夜中に天井が下がってしまい焦ってしまった。そればかりか吹き溜まりに掘ってしまった雪洞は入り口が2mほどの雪で覆われてしまい、翌朝中からストックを外に突き出してもまだ届かず、多量の雪を雪洞内にかき出してようやく脱出する有様。結局飯豊の冬にまったく刃が立たず、尻尾を巻いて退散となってしまった。

 今から思えば飯豊を甘く見た無知無謀な計画だったと思うが、それ以来私はすっかり閉所恐怖症になってしまった。それ以来冬の飯豊を訪れることは無かったが、無雪期に梶川尾根を登る機会も無くすっかり忘れてしまっていた。今回登ってみると尾根上に荷揚げがされており、どうやら正月あたりに登るパーティがありそうだ。厳冬期の山形側のコースとしては川入りから西俣ノ峰コース、又は温見平からのクサイグラ尾根が一般的だが、雪崩の可能性のある玉川を通過し、この急峻な梶川コースを完登したパーティはどの位いるのか?興味のあるところだ。

コースタイム= 飯豊山荘5:30〜湯沢峰6:45〜門内小屋9:35 10:00〜梅花皮小屋11:15 11:40〜飯豊山荘15:15 

 最飯豊山荘に到着してみると駐車場に車は1台のみで、身支度を整えサンドイッチを牛乳で押し込んで出発する。ヘッデンをつけて尾根に取り付き後を振り返ると、3台の車がやって来るのが見える。湯沢峰を越した辺りから急な登りに慣れ、ようやく回りの風景を楽しむ余裕が出来てくる。滝見場で見る初めての梅花皮滝の姿は見事で、遠くても滝の流れる音が渓に響いて聞こえてくる。北股岳付近にはうっすらと雪が被っているが、石転び沢はすっかり雪渓が消え去りより急峻に見える。

 梶川峰に到着してみると道標には冬山用の標識がデポしてあり、ここから主稜線を目指そうとする登山者の意気込みが感じられる。いったいどこまで目指すのか?ここから先は傾斜がいきなり落ちて快適なコースとなり、飯豊の主稜線、眼下の深い渓筋などを眺めながら気分良く高度を上げる。見事に赤く色付いたナナカマドと斜面の深い緑、茶色のコントラストが今でも美しい。

滝見場 烏帽子岳方面の稜線 天気は良好
 
 扇ノ地神を通過した頃門内岳方面からやって来た一人の登山者と出会う。先日足の松尾根を登って門内小屋に泊まり、今日は梅花皮小屋を往復して同じコースを下るとの事。彼が今日会った唯一登山者であった。稜線に上がると風は強まるが、歩いていると特に寒さを感じる事も無く歩き易い。いつもはセコセコとした山歩きが多くなってしまったが、今日はなんとなく写真を撮りながらのノンビリムード。途中で仕事先からの電話が入ったりして雰囲気が崩れてしまったが、ようやく門内小屋に入って大休止とする。

 門内小屋の隣には最近完成したばかりのトイレが有ったが、冬支度のため板が打ち付けられて使用は不可。小屋の中でたっぷりのチャイをつくって体を暖め、元気を取り戻して梅花皮小屋を目指して出発する。北股岳に近づくにつれ登山道に積もった雪が少し出て来るが、梅花皮小屋に到着してみるとすっかり秋山気分の雰囲気となり、何か物足りない気分もする。やはり小屋には誰もおらず、水を汲んできてカップラーメンを作っり昼食とする。
 
エブリサシ岳方面く 登ってみたい胎内尾根 トイレは使用不可
 
 無雪期の石転び沢は今回が初めてなので、あまり様子が解らないまま踏み跡を降りて行くと、途中でペイントも見失って方斜面のガレ場を適当に下って行く。滝が3本出てきてまもなく雪渓が現れ、崩壊した現場を見ながら下って行くが中々距離が稼げない。途中から雨がポツリポツリと降り出し、カッパを取り出して雪渓のトラバースを続けた後、いい加減飽きて来たので雪渓に上がって下る。硬いスプーンカットの斜面は安定していて意外に長く、最初から上がれば良かったと後悔するが後の祭り。

 雨が降ってくると登山靴が滑り易くなり、門内沢出合から先では登山道では何度かこけそうになり、だんだんとペースダウンしてしまって時間がかかる。門内沢出合より下部はまだ紅葉の時期が過ぎていないので、残された秋の風情を味わいながらゆっくりと下って行く。温見平周辺は立派なカメラを持った写真家の皆さんが多く、三脚をセットして雨模様の山肌を覗っているようだった。すっかり有名観光地となった雰囲気の道路を急ぎ、ようやく15:15に飯豊山荘に帰着した。

北股岳方烏帽子岳、本山方面 山頂から見る北股沢、石転び沢

3本の滝が現れる 下部にはまだ雪渓の姿が