2005年 沢登りの記録

 2005年 9月18(日)〜19日(月)
 朝日連峰 根子川本流 入りソウカ沢1Day遡行


【コースタイム】

9月18日(日)

日暮沢小屋6:10〜根子川本流6:50〜石ヤラ沢出合7:40〜赤倉沢出合(水神淵前)8:05〜横松沢10:35〜柴倉沢11:14〜ソウカ沢出合13:12〜大滝15:31〜金玉水17:15〜大朝日小屋17:30
9月19日(月)
大朝日小屋7:05〜小朝日岳〜古寺山〜日暮沢小屋10:40

【天候】  9/18 晴れのち曇り 9/19 曇りのち雨
【メンバー】  荒井 坂野
 
 夏の間にしばらく山行をサボっていたら、あっという間に沢登りのシーズンもラストに近くなってきた。何処にしようかと色々考え、朝日連峰出合川流域、飯豊連峰松沢足の流域などをリストアップしたが、結局毎度のように都合が付かなくなってトーンダウンし、結局仙台から最もアプローチの楽な根子川本流の入りソウカ沢に落ち着いた。

 入りソウカ沢とは日暮沢小屋から根子川本流を辿り、金玉水に突き上げる本流筋の沢で朝日連峰の沢としては比較的ポピュラーなコースである。どちらかと言うとアプローチが楽で手強い滝やゴルジュが少ない事から、下流域は沢屋より釣屋さんの舞台と言っても良い多くの入渓者を迎える沢だ。確かに本流域では鋭いV字谷ではなく高巻がし易く、左岸沿いには中岳方面に向かったゼンマイ道のような踏跡が所々見られる。しかしこの時期になると全ての雪渓は消えて滝とゴルジュが露出し、上部のイリシウカ沢に入ると朝日連峰特有の花崗岩に磨かれた明るくて快適な遡行を満喫できる。

【概要】
9月18日
 日暮沢小屋の先のテント場で朝4:30に目を覚ますと、登山者、きのこ取りなどの車が次々に上がっていった。6:10AM、身支度を整えて出発し、古寺山を目指す登山道を辿ってハナヌキ峰への急登となる登山道から目指す根子川本流に降り立つ。最近の晴天続きの為水位は低く、しばらくは平凡なゴーロ歩きを続けて先を急ぐ。石ヤラ沢までは釜と2〜5m程の滝が時々出てくるが、殆ど問題なく右に左に巻く事が出来きて特に厄介な個所は無い。

 のんびり竿などでも出したくなる気分だが、多くの釣り人が入っている為か魚影を見ることは無く、釣はすっかり諦めて先を急ぐ。やがて右から赤倉沢が入ってくると間もなく大きな釜を持った水神淵に到着する。水神淵は右岸から簡単に巻いてからまとめてゴルジュと滝を越してゆく。どうやら昨日入ったと思われる先行者の足跡が残っており、高巻ルートには行き先を示すかのような形跡がはっきり付いている。最初は単独で入った釣師かと思ったが、そのままイリシウカ沢の先まで続いておりどうやら沢屋さんの様だった。

 この先はゴルジュが出てきて滝と釜が多くなるが、あえて泳いで取り付くほどの必要性も感じないので、余計な事は考えず比較的開けた両岸を右に左に巻いて順調に先を急いで行く。ここでは15mの懸垂一ヶ所以外はロープを使う必要も無く、実にスムーズにゴルジュ帯を通過して行く。やがて15mの開けた明るい滝を右から快適に越し、易しいゴルジュと釜を越してゆくと河原になった植松沢の出合いに到着する。さらに5mほどの狭い滝を左岸から高巻くと比較的沢は開け、ビバークサイトにはちょうど良い柴倉沢の出合いとなる。台地状になった平らなスペースは程よく整備されており、薪も豊富でここで多くのパーテーが星空を仰ぎながら美酒を味わった様子が伝わってくる。

 当初はここで1泊の予定だったが、まだ11:14AMと言う早い時間帯の為にそのまま前進して入りソウカ沢を詰めてゆく。この辺りから次第に沢は開け、登り易い滝が出てきて直登の楽しみが出てくる。柴倉沢から先はしばらく
明るく開けた平凡なゴーロ歩きが続きくが、右に屈曲する辺りから5mクラスの滝が次々と出てきて快適に登れる。この辺りから朝日連峰の沢らしい植生の薄いV字谷となり、所々両岸が狭まってゴルジュ状となり、やがて2段10mの滝が掛かる。下の滝は左から容易に登れるが、上段の滝は右壁が被っているので左側を高巻き、トラバースして滝の上に立つ。さらに3〜4mの滝が次々と出てくるが何れも快適に直登出来る。次の30m、2段の滝はやはり右壁が被っているので下部は左を登り、上段の滝は左から高巻いて越してゆく。

 やがて深い釜を持った5mの滝が出てくると、前方には小朝日岳から大朝日岳に続く稜線がガスの中に見えてくる。どうやら下流域では晴天だったが稜線上は風も強く、すっかりガスに覆われて天候は悪化している様子だった。次に出てくる20mのナメ滝を右から快適に越してゆくと、前方に30mほどの快適そうな滝が見える。左岸をロープを使えば何とか登れそうだが天候の悪化が気になり、時間短縮のため今回は一気に左を高巻いて上部を目指す。続いて小滝が3つ連続するが何れも右から快適に越し、谷が再び開けて出てきた2条6mの滝を左から越して行く。その先はガレた河原状の広い谷となり、大朝日岳に続く稜線もかなり近くなったようにも思われた。

 この辺になるとさすが朝日連峰という様な一級の沢の雰囲気になり、大休止して素晴らしい景観を楽しみたい所なのだが、どうしてもビバークサイトの適地も無さそうなので心は更に上部へ向かって行く。やがてゴルジュ帯となり、その先には奥まった所に20mの直瀑が出てきたので、躊躇無く左から高巻いてブッシュをトラバースして行く。この先に熊越えに突き上げるソウカ沢が左から入り、40mの滝となって本流に落ちている。すると右に曲がった本流の奥に両岸が極端に狭まった40m程の直瀑が見えてくる。内部は暗く、全く手も足も出せそうに無い滝の為、左のソウカ沢の滝をシャワークライムで越し、上部のブッシュ帯を右に大きくトラバースして上部を目指す。途中ブッシュで視界がきかなくなり、沢床への下降点が見つからず上に追いやられてしまう。最後は6mの懸垂で沢に戻ったが、良く見ると40mの滝の上に更にもう一本同じ位の滝が有った。

 2004年の5月に大朝日岳のY字雪渓をスキーで滑った後、金玉水から入りソウカ沢を1150m地点まで下降したが、どうやらこに辺が当時のポイントを思われる。その時はここで滝が出てきて沢の傾斜が増してきたことは解っていたが、まさか下部にこんなに大きな滝が有った事など想像もつかなかった。それだけ膨大な量の雪が谷を埋め尽くしたと言う事なのだが、すっかり雪渓が消え去った今となっては豪快な沢登りのフィールドとなり、沢屋にとっては登り応えのある一級の沢の様な印象があって楽しい。どうやらこの辺が入りソウカ沢の核心部らしく、その先は沢の傾斜が緩くなり、時々出てくるゴルュジュ内平坦なのゴーロ歩きとなる。

 しばらくすると谷底からでもガスに覆われた稜線が見え隠れするようになり、その後5〜8m程の滝が連続するが全て登れる。ここまで来ると今日中に大朝日小屋に入れる距離となり、くたびれた体にムチを打っても金玉水を目指すしかないだろう。沢は大きく左に曲がりやがて右に折れる頃に10m程の滝が現れ、トップは嫌らしい草付きをトラバースして滝上に立つ。草付きの下が切れているのでこれを嫌い、私はリッジどうしに直上して草付きの小さな尾根に上がる。下を見ると3段で30mくらいは有りそうな滝が有り、時間もだいぶ押してきたのでそのまま右からまとめて高巻いて上部の沢床に降り立つ。この辺りで滝はほぼ無くなり、その先は両側が快適な草原地帯となり、開けた小沢は我々を金玉水方面へと導いてくれる。今日はすっかりガスに覆われてしまって周りが見えないが、晴れたときには実にメルヘンチックな草原の光景が目に飛び込んでくるだろう。

 大朝日小屋に到着するとそこは想像していたとおりに満員御礼の状況。管理人さんに屋根裏部屋を確保してもらい、食事は小屋の外にツエルトを吊って中で済ます。なにしろ今日の宿泊客は小屋で約100人、テント場で約30人とひどいスシ詰め状態。食事をしていると管理人さんにすぐ屋根裏に上がって欲しいと言われ、楽しみにしていた祝宴は見送りとなり、7:30PMには既に皆さん就寝タイムという状態ですっかり静まり返っていた。思えば入りソウカ沢でビバークした方がよほどハッピーだったか解らないが、入りソウカ沢を1Day遡行したと言う満足感も有りどちらとも言えない。

9月19日
 夜半は予想どうり雨となり、ツエルトしか持っていなかった我々は結局小屋泊まりが正解だった。下山の身支度をしていると沢屋さん1名がいたので話を聞いた所、昨日我々と同じ入りソウカ沢を単独、1泊2日で上がって来たとの事だった。福島県のいわき市から来られた方だが、飯豊、朝日の沢を登り込んでいるかなり沢慣れしている沢屋さんの様だった。

 今回の入りソウカ沢は通常1泊2日のコースだが、懸垂で2回ロープを使ったのみでかなりスピーディにトレースする事が出来た。全体的に悪場は少なく滝も比較的容易に巻くことが出来るので、高巻ルートを間違わなければ1日で抜ける事が出来る。9月の下旬頃になると雪渓はすっかりなくなっているので、ゴルジュと滝は全て露出し、上部の入りソウカ沢では快適で手ごたえのある沢登りを満喫する事が出来る。但し快適なビバークサイトとなると柴倉沢から上部はスペースも無く、落石の危険性もあって適地は少ない。帰路は小朝日岳、ハナヌキ峰経由で日暮沢小屋に下山した。


    
        
    上部はゴルジュの中の平坦な歩き



          根子川本流 入りソウカ沢 MAP
                 


入りソウカ沢本流の水神淵

下部流域は容易に巻ける

水量は少なく泳ぎは今回無し

水線の突破も余裕

明るい花崗岩の沢は朝日ならでは

柴倉沢先の2段10mの滝

上部は左から高巻く

入りソウカ沢の20mナメ滝

ゴルジュの通過は比較的容易

上流部は明るく快適な滝が連続する

入りソウカ沢2条6mの滝

ソウカ沢の滝を直登して右のブッシュをトラバース


入りソウカ沢40mの滝。更に40m程の滝が有る。

核心部を終了して金玉水を目指す。