飯豊連峰  入門内沢

      入門内沢上部の滑降


 【期日】   平成1456()7()
【メンバー】柴田 坂野
【山行形態】山スキーによる入門内沢の滑降
【天候】(5)晴れのち曇り、(6)晴れ
【温泉】飯豊温泉
【行程】(55)飯豊山荘発815〜カイラギ沢出合1145〜石転び沢出合1130〜カイラギ小屋1500(56)カイラギ小屋830〜北股岳900〜門内小屋1015〜石転沢出合1045〜温身平1215~飯豊山荘1245

【概要】

55()

 5月連休の飯豊山行は数えてみると今回で5回目になるが、その中で石転沢を登る事4回、入門内沢のスキーは3回目ということになる。この時期ほかの山にも行きたいところはあるが、大きな山並、豊富な残雪、眩いばかりの新緑の素晴らしさに引き付けられ何度も足を運ぶ事になる。何時もは殆ど単独による忙しい日帰り山行だが、今回は天童の柴田氏に同行を頼んでの比較的余裕のある山行を計画した。何しろお楽しみのカイラギ小屋での豪華な宴会つきという約束なので、時間は気にせずのんびりとした2日間を過ごすのが目的である。

 今年は例年になく雪が少なく、そして連日の晴天続きで雪はあっという間に解けてしまい、天狗平の飯豊山荘まで楽に車ではいることが出来、近頃体力の低下が目立つ我々にとっては実にラッキー。予想に反し駐車場には20台前後の車が並んで居る程度で、意外と静かな山行が出来そうな雰囲気でなんとなく安心した。

新緑がまぶしい見事なブナ林を行く

 温身平までの林道は見事な新緑のぶな林が続き、今やトレッキングルートとしてメジャー存在らしく、デイパックを背負った中高年で賑わっていた。この連休には飯豊山荘までに除雪か完了し、多くの観光客がマイカーでやってきたために大入り満員という状況のようだ。温身平から先の大きな砂防ダムまでは道もよく整備され、まるで公園のような雰囲気が漂う観光ルートになっていて、訪れる人の多さに少し驚いてしまった。特に本格的なカメラを持ったひとも見られ、ここ温身平はなかなかの撮影スポットらしく、三脚を構えたカメラマンが飯豊連峰の稜線にレンズを向けていた。

 檜山沢の出会いまでは雪に押しつぶされたブッシュが所々道をふさいでいており、スキーを担いだ我々はスキー板の先端に引っかかって歩きにくい事この上ない。何回かのトラバースと登りを経て檜山沢出会いの500mほど手前で節季に降り立ち、ようやくスキーを履いて登りはじめることが出来た。今年の雪の量は見たところかなり少なく、石転び沢から押し出されて来る大きなデブリも見られず、飯豊らしい何時もの迫力に少し欠ける様子だった。石転び沢の出会いまでは軽装の日帰りの登山者も多く、飯豊山荘をベースにした多くの中高年がやってくる。気軽に春山を満喫できるポイントなのか、手頃なルートとして人気があるのだろう。

 石転び沢の出会いで大休止を取るが、上部を覗いて見ると麓の晴天と違い、稜線付近はすっかりガスで覆われていて風もかなり強そうだ。どうやら我々が最後のお客らしく、雪渓の上部には10人前後の登山者が黙々とカイラギ山荘を目指し登ってゆく姿が見られる。

 今年は暖冬では雪が少なく、加えて連日の晴天続きで一気に雪解けが進んだ為、石転び沢の中間部には落石があり上部の雪壁は何時になく急俊に感じられる。雪渓の中間部からジグザグ登高に切り替え、シールを効かせながら少しずつ高度をかせで行くが、久しぶりの重荷の為ペースはいきなり落ちてゆく。

 上部雪壁の取り付き点で大休止をとる頃には、周りがすっかりガスに覆われてしまい、風も強まってきて冬山に逆戻りしたような雰囲気に変わった。この先はスキーを脱いでツボ足で急な雪壁を登ってゆくが、二人ともアイゼンを持っていないのでキックステップを良く効かせて慎重に先行者の踏み跡をたどってゆく。何しろ柴田氏はゲレンデ用のスキー靴からナイロンの軽登山靴に履き替えたなので気が抜けない。一部堅い斜面では厄介な思いをしながら登ってゆく。2リットルのペットボトルに入った酒と缶ビールが肩に食い込んで重く、雪壁半ばで更にペースダウンをしてしまうが、今夜の豪華な宴会を想像しながらただひたすら重荷に耐えて黙々と進む。

 予想以上の時間を感じながらも、ようやく傾斜が落ちてきて突然カイラギ山荘がガスの中から姿を現し今日の行動を終了。小屋の中には15人ほどの登山者いたが、2階の一角を空けてもらいザックをおろす。小屋に着いてみると小屋の住人はもう既に夕食の支度にかかっており、このまま行けばまもなく就寝の時間となってしまいそうな雰囲気なので、我々も少しあせりながら宴会に準備に取り掛かる。さすがに最後の雪壁での体力の消耗が激しかったのか、酒は飲みきれずに少し飲み残してしまい、シュラフにもぐりこんで何時の間にか寝込んでしまう。

56()

 300AMになると周りののパーティーはもう既に朝食の準備に取り掛かっており、小屋の中全体が忙しい雰囲気に包まれ、とてもゆっくり寝ているような状況ではなくなってくる。外はまだ暗くて風は強く、小屋にたたきつける風の音が飯豊の冬山のなごりを感じさせ、急に昨夜の酒が体から抜けてゆく気がして目がさめる。

 

   下界は晴天稜線は真冬             満足な宴会の翌日 

 小屋の外に出てみると、雪は堅くクラストしていて飲料水用の水道ホースも凍りつき、スコップで堅い雪を砕いてビリーカンで解かして水を作る。今日の朝食は昨夜のキムチ鍋の残りにコンビニで買ったおにぎりを放り込みオジヤを作ってみたが、これがまたノリが適度に解け合って旨みがまし美味く、食欲をそそりきれいに平らげる。朝食の後によそのパーティーが出て行った頃に2度寝を楽しみ、ようやく730AMになってから出発の準備に取り掛かる。誰もいなくなったカイラギ小屋からスキーを担いでおもむろに出発。飯豊の雪の量としては比べ物にならないくらい少なく、主稜線上は夏山のような雰囲気でちょっと緊張感に欠ける感じもあるが、遠く飯豊本山、大日岳を見ると雪をまとった姿が美しい。

 門内小屋で小休止をしたあとで入門内沢の偵察に出かけ、下降ルートの確認を行うが沢の中間部か見えずコースの選択に迷ってしまう。心配したような巨大な雪庇も見当たらず、上部は適度に広い扇状の大斜面が続き、何処からでも降りられそうに見えるのだが、途中で狭いルンゼ状になって視界から消えておりその下は見えない。今年は雪の量が少ない為に傾斜が急で幅が狭く、何時もよりコースの選択に迷うところだ。今回は門内小屋から左より、つまり上部の右俣に入り込む雪壁にルートを取り、滑降を開始する。

 上部はかなり広いカール状の雪壁なのだが、すぐに両幅が狭まり傾斜が急峻になってきて、スピードを慎重にコントロールしながら下る。降るにしたがって雪の状況も変化し、凹凸の筋が入ったような斜面が続きスキーのターンがしずらいが、雪は程よく締まっているのですぐに慣れる。途中の最も傾斜の急なところで少し亀裂が入っていたが、慎重な横滑りでクリアーし安全地帯に抜ける。どうやら予想外に最も傾斜の急なコースを選択してしまったらしく、程よい緊張感を味わう事になった。ここから先は何も心配するところは無く、思い存分好きなシュプールを描きながら雄大な門内沢の谷底を滑り降りてゆく。

 石転沢と門内沢の出会いで大休止をしていると、下から5人ほどの登山者がスキーを担いで登って来て入門内沢に入ってゆく。10年程前と比べると山スキー、テレマークスキー等の数が多く、登山の形態がバラエティに富んでいる様子が垣間見られる。どうやら日帰りで入門内沢の滑降を目指して登ってきたらしく、黙々と門内岳の頂上稜線に向かっていった。飯豊温泉でゆっくり体の疲れをほぐし、今回のスキーツアーを締め括る。

今年の石転沢の雪は少なく、石ころも散乱している

 

                                朝日に輝く北股岳

                                          飯豊本山から朝日が差し込む

      

                       大日岳からの稜線を望む

                       

                                   北俣岳、御西岳、飯豊本山を望む

       

            門内岳間での稜線は霧氷が美しい

       

            主稜線には誰もいなくて実に静か

       

             門内岳からの滑降開始

       

            幅は狭まり急な斜面が現れる

       

            開放的な斜面をゆったり滑る

       

左が石転沢、右は入り門内沢

       

            つつじはちょうど見頃の時期

      

       飯豊連邦も何処か観光地のような雰囲気を帯びてきた


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