飯豊連峰 大岩沢〜本山小屋〜御秘所沢 2013.05.




飯豊本山小屋から大岩沢を700m下降





本山小屋直下の斜面より大岩沢を下降


 山 域  飯豊連峰 本山小屋  (2102m)  
 山行日時  2013年5月4〜5日
 天 候  快晴 (山頂付近は強風)
 メンバー  単独 
 行 程  【5月4日】 大日杉9:00〜地蔵岳12:30〜13:08本社ノ沢出合〜本山小屋17:19
 【5月5日】
 本山小屋8:01〜大岩沢下降(1400m地点)〜本山小屋11:18〜御秘所沢下降〜登り返し地点12:28〜地蔵岳13:59〜大日杉15:55

 
飯豊連峰のこの時期は山スキーヤーにとって待ち焦がれた日でもある。アプローチ困難な冬季には対象になり難いコースが開放され、ワンディで山頂を往復できる事も可能になり、稜線の小屋に達すれば色んな遊び方が可能になる。

 特に、山スキーの場合は特にその恩恵を最大限に受ける事が出来て、コース取り次第では新たな発想が広がり、その人の自由なセンス次第で次々にバリエーションが広がる。雪渓に埋め尽くされた沢筋は新たな登路となり、豊富な積雪と雄大な渓は素晴らしい滑降の舞台となり、体力と好奇心次第で新たな世界が広がるように思える。

 まあ、殆どが勝手な妄想と自己陶酔ですが、こんな自由で気ままな世界も山スキーヤーの特権でも有ると思っています。つまり、白いキャンバスに絵を描く様に(自分は無縁の世界)、自分で描いたトラックを作品だと思えば満足なのです。

 今時、山の世界で未知の世界とかパイオニアワークなどは死語に近いですが、別に他人を気にする事が無ければ自由で未知世界は広がると思えば良い。言わば、山の世界では残された数少ない贅沢な遊びでも有ると思えます。


【5月4日】

 
当初は、2泊3日の行程で大日杉から飯豊本山を目指し、あわよくば御西小屋入りを目論んで大日岳や御西岳周辺の沢筋を狙ってみたが、不安定な天候で計画は縮小となり、1泊2日で本山周辺の沢筋に狙いを定めてみた。

 しかし、出発の朝のスタート時間が遅れてしまい、大日杉の駐車場を出発したのは予定時間より4時間遅れの9:00AMとなってしまった。今シーズンは幸運にも連休前に大日杉までの除雪が完了し、飯豊本山を狙うスキーヤー・ボーダーにとっては幸運な連休で、除雪後の狭い駐車場には既に10台位の車が有った。

 本山狙いでは何時もこの時期に訪れているが、昨年は連休後の開通だった様で山スキーヤーにとっては今年も恵まれた年だった。スタートすると何時もは雪の無いザンゲ坂には一面に雪が残り、快適にキックステップを効かせて登り始める。更に100m位登ると雪の斜面が現れ、隠田下からはスキーが使えて忠実に尾根を辿ってゆく。

 天候は次第に回復傾向で期待が持てるが、寒気はまだ残っているようで地蔵岳から見る飯豊本山の山頂は雲が掛かっていた。地蔵岳山頂には本日に大又沢に真直ぐ降りたスキーの跡があり、どうやら、ワンディで本山狙いの先行パーティーいる様だった。

 山頂直下の急な斜面を嫌って尾根を300m程下り、より傾斜の緩そうなさ沢筋を狙って下降して行く。昨日の新雪が残って斜面はシールを付けたままでも下降はし易く、途中から先行パーティーのトレースを追って本社ノ沢出合から山頂を目指す。

 本社ノ沢出合から30分程沢を詰めて行くと前方に突然4名のスキーヤーが現れ、会ってみると山頂に達してから左俣を下降して来た首都圏方面のお客さんだった。これから午後の時間帯に差し掛かり、山頂付近の風は強くて本山小屋を目指すのは大変ですよとのアドバイスを受ける。新雪の残る左股は雪のコンディションも良く、皆さん大変ご満悦の様子で最後の地蔵岳への登り返しに向って行った

 雄大な本山山頂を見上げると雲が掛かり、アプローチの尾根上は強い風が流れて登高は楽そうには思えない。悩んだ結果、結局強風を避ける為に左俣の直登を選び、4人の快適そうなトラックを辿って山頂を目指す。左俣は急峻だがブロックの崩壊跡も無いフラットな斜面が続き、新雪にシールは良く効いて比較的登り易い。しかし、日頃の不摂生と何時にない重荷は遺憾ともしがたく、最後の急斜面でのピッチは上がらず時間だけが過ぎて行く。

 急峻な喉の急斜面を越えると急に風は強まり、最後の200mのトラバース斜面はブリザードが待ち受け、軽装備の体には堪える辛い時間帯だった。今回は飯豊の山を舐めすぎていた。

 ようやく本山小屋に入ってみると中は単独の登山者が一人のみで、意外と静かな本山小屋は風の強い真冬の世界だった。本山狙いの多くの登山者は切合小屋泊まりの様で、本山小屋泊を目指す物好きは少数派の様だった。先行しているはずのAさんグループの姿は無く、どうやら大日岳・御西岳周辺を狙って御西小屋へ向った様だ。

 久しぶりの山小屋スティを満喫するつもりだったが、疲れが溜まって担いできた酒は余り進まず、ラーメンを食べて温まるとすぐに寝入ってしまった。一晩中ブリザードは吹き続け、外の出るのが億劫になる。

【5月5日】

 明けて翌朝になるとようやく風は弱まり、視界も効いてきて希望が膨らんでくる。一緒だった単独の登山者はいち早く準備を整え、飯豊山頂を目指して出発して行った。外の出てみると寒気はあまり感じられず、大日岳方面には牛首山が姿を表して回復の兆しとなる。

 風も弱まったタイミングを見計らってから目標の大岩沢を下降し、広いカール状の斜面を快適に降りて行く。2日前の新雪は適度にパックされて板は良く走り、快適なショートターンでどんどん下降して行く。北面の大岩沢は雄大かつ積雪量も豊富で、傾斜は少し緩いが本社ノ沢をはまた異なる世界が広がり、雪質は安定して1400m地点まで降りて行く。この時期の飯豊連峰の山スキーでは最も恵まれた雪の状態だった。

 この先は雪はやや重くなってトップが引っ掛かり、帰路の時間帯を考えてここを終点とする。しかし、登り返しの700mは体に堪えてしまい、予定していた南面のヒンガカグチ沢はパスして本山小屋からの下降に取り掛かる。本山小屋に戻ると本社ノ沢を上がってきた元気な4人のスキーヤー・ボーダーが到着し、更に3人は本山山頂を目指して進んで行った。

 下降コースはまだトレースした事のない御秘所沢を選び、広い緩斜面を降りて行くと沢の全貌が現れた。本社ノ沢とは違って長閑なロングコースで、快適なフラット斜面をどんどん降りて行くと御秘所真下の辺りから沢は狭まる。ノンビリとしたクルージングを経てから沢は屈曲し、大きな滝と思われる箇所を左から通過して下降し、間もなく地蔵岳からの下降点に辿り着いた。

 地蔵岳への登り返しは350m程だが、最も傾斜の緩い斜面を選んでジグを切って行き、1時間30分ほどかかってようやく到着する。すると、本山小屋で一緒なった首都圏3人のスキーヤーと、鶴岡からやって来た単独ボーダーのTさんがやって来て、暫く全員で真正面に対座する本社ノ沢を見上げる。この山頂に立つと自分のトラックに目が行き、圧倒的な東斜面を振り返りながら滑り降りた達成感と満足感に耽る事ができる。

 立ち去りがたい山頂を後にして下降を開始するが、今年は尾根上の雪が豊富で下までスキーが使え、厄介で疲れる急峻な尾根の下りから開放されるのが嬉しい。でも、余り調子に乗ってスピードを出し過ぎ、間違えて尾根を外して60mの登り返しがおまけが付いた。

 今回は大岩沢に絞った山行になったが、このコースは北股岳からの石転び沢を凌ぐ高度差1182mを有し、飯豊では雄大なスケールと積雪量の豊富さを誇る一級のコースに思える。大又沢の積雪の状態にもよるが、体力に自身の有る向きはワンディも可能と思えるので、今後の課題として残されたコースとも言えそうだ。

 また、本社ノ沢を目指すスキーヤー・ボーダーが2日間で10人いたが、その80%は首都圏からのお客さんで占められ、このコースも全国区の人気コースとなりつつある様だ。


 コースMap
 
 隠田下からスキーの登高が可能。
 
 地蔵岳直下の尾根。

 
 切合小屋方面への尾根の雪庇は4月と変わらない様子。

 
 大又沢の上流方面は雪で埋まっている。
 
 先行する4人パーティーが左俣を降りて来て地蔵岳への登り返しに向かう。

  
 本社ノ沢の下部は豊富な雪に新雪が載っていた。

 
 山頂方面の強風を避けて今回は左俣を詰めてみる。

 
寒気が抜けない為中間部はパウダーが残っている。

 
 喉の部分を過ぎると上部は辛いブリザード地帯が続く。

 
 雪に閉ざされた本山小屋。

 
翌朝は風と寒気が弱まって大岩沢を下降する。

 
 適度にパックされた新雪上では板がよく走る。

 
 ダイグラ尾根の宝珠山を左に見てどんどん下降する。

 
 雄大なスケールと積雪量の豊富さが大きな魅力。

 
 宝珠山には雪庇が残って厳しい雰囲気。

 
 本日Sさんグループが西俣峰からワンディで狙った杁差岳。

 
 本山小屋に登り返してダイグラ尾根方面を俯瞰する。

 
 身支度を整えて御秘所沢へ。

 
 大きく開けた御秘所沢はロングコース。



直下のオープンバーンを過ぎると御秘所直下より沢は狭くなる。

 
快適な緩斜面をクルージング。

 
 フラットな斜面で雪の状態は良く滑り易い。

 
 下部はゴルジュ帯が続いて一部デブリが登場。

 
 地蔵岳への登り返し上部付近はブロックが散乱。

 
 大きな滝は埋まっているので特に問題はなく下降。

 
 地蔵岳から見上げる本山は雄大で美しい。

 
 振り返る本社ノ沢には右俣・左俣に多くのトラックが残る。

 
 切合小屋から下って来た登山者がやって来た。

 
 大日杉へ下る尾根上から三国岳方面を見る。

 
 積雪量が豊富でスキーはザンゲ坂上部まで使えた。