鳥海山 法体の滝口コース 2007.04


    

      鳥海山 法体の滝口〜御田ヶ原コース

     

 山 域  鳥海山 法体の滝口コース 
 山行日時  2007年4月15日(日)
 天 候  曇りのち風雪
 メンバー  千田 木村 坂野 
 行 程  百宅集落5:10〜法体の滝〜下玉田川徒渉6:40 7:40〜御田ヶ原〜外輪山13:15〜御田ヶ原〜下玉田川徒渉15:40〜法体の滝〜百宅集落16:45  GPS積算距離 28.2km

 
 鳥海山には御田ヶ原という同じ地名が2ヶ所有る。一つは西面の御浜小屋から七五三掛けに向かう途中で、もう一つは今回訪れた東面の百宅口コースの北側に位置する場所だ。MAPを見ると標高1360m地点の広い尾根に、突然大きな田んぼの様な平地が出現する地形となっている。下流で分岐した赤崩沢と朱ノ叉沢が御田ヶ原で再び近づき、他所ではあまり見かけない様な特異な尾根で、何となくワクワクする様な期待も膨んだ。

 このコースは昨年の5月初旬、東京のT会によってトレースされているが、他の記録は見当たらない様で興味が沸いて来る。今回は3度目の正直を誓ってやってきた木村氏から号令が掛かり、何が何でも完登という雰囲気で盛り上がっていた。ただ問題は過去下玉田川の徒渉を2回失敗しており、今回旨い事いくかどうかが鍵となっていた。


立派なキャンプ場横の道路を進んで行く 法体の滝の水量に驚く 意外と大きな下玉田川
 
  百宅集落から少し行った橋を越えた辺りで除雪車両が道を塞ぎ、スキーをザックに取り付けて元気に出発する。まもなく法体(ほったい)の滝そばの立派なキャンプ場を通過し、まもなく近くの除雪修了点からスキーに切り替える。昨日降った雨の為、法体の滝の水量は怒涛のように流れ落ちる光景で、この先の徒渉が心配になってくる。
 
 立派過ぎるくらいの道路を進んで行くと布沢の橋を通過し、まもなく道路から左にコースをそれて朱叉沢との二俣を過ぎて下玉田川の左岸に立つ。この時期ならまだスノーブリッジが有りそうに思えたが、そんな淡い期待は裏切られて昨年の沈下橋に向かう。途中で大きな砂防ダムの下が沈下橋になっており、昨日の雨の為増水していてそう楽な徒渉とは思えなかった。
一人はゴム長靴、あと2人は家庭用のゴミ袋とスーパーの袋でいざ決行。結果、長靴は長さ足りずで水が進入し、私のスキー靴にはゴミ袋にあいた穴から水が進入してインナーはずぶ濡れ。まあともかく第一の難関は無事突破して、今日の仕事の半分は終ったかのように思えた。

ここが問題の下玉田川の沈下橋 尾根に上がると広くて緩やかな尾根が続く

時々雨がぱらつく 森林限界を過ぎて 赤崩沢対岸の尾根上部
 徒渉をクリアーしてからすぐ急峻な尾根に取り付き、雪壁の切れ目を坪足で乗り越えてようやく台地に乗る。以前に伐採された跡地なのか、まだ若いブナ林の穏やかな疎林は広く、ザラメ化した斜面はシールも軽く順調に進む。しかし、次第に視界が取れなくなってくると雨がパラつき、ジャケットが濡れて何となくペースが上がらない。広い尾根上には小沢が入り組んでおり、地図をコンパスで確認しながら尾根上にコースを取って行く。

 標高950m位まではなだらか斜面が続くが距離が有り、殆ど疲れることは無いのだが時間がかかる。尾根の右寄りを通過して行くとやがて急斜面が現れ、私以外スキーアイゼンを持っていない2人はスキーを背負って坪足登行となる。途中で木村氏のシールが一度剥がれたが、幸いその後は問題なく順調に高度を上げて行く。やがて視界が取れてくると再び青空も出て上部斜面が見え、右手の広大な赤崩沢の源頭の斜面は素晴らしく見えた。標高1000m位からは森林限界の斜面となって、目の前の尾根には素晴らしい大斜面が広がり、下りの豪快なスキーが楽しみになる。
 
急なクラスト斜面に難儀する 一時青空も見えて期待が膨らむが・・・
御田ヶ原を行く 次第に風雪が強まる
 御田ヶ原は原っぱのような平坦地で、夏だったら快適な幕営地となっているだろうが、登山道の無いこのコースは赤崩沢か朱叉川を遡行しなければならず、一般の登山者はなかなか辿りつく事は出来ないだろう。ここまでの間は赤布の残置なども見当たらず、殆ど人の気配を感じさせない別天地で、やはりやって来て本当に良かったと満足する。御田ヶ原を越えると赤崩沢の対岸の尾根が現れ、その上部の源頭の斜面もうかがう事が出来た。

 しかし寒気が残っているのか天候は不安定で、やがて視界は100mくらいになって風雪が強まる。コースは赤崩沢源頭の右岸の尾根筋に取ると、標高1500m位から氷化した斜面が出て来てシールが滑り出し、シール幅が板にフイットしていないとジグを切る時に滑って難儀する。スキーアイゼンを持っていない2人は大変で、エッジが外れて滑落し、結局アイゼン・坪足でこの場を凌いで行く。この先は視界の無い氷化した斜面が多くなり、シールにはゲタ
が出来て急場凌ぎの固形シールワックス塗る。結局自分は最後までスキーアイゼンで通してしまったが、2人はすっかり諦めてアイゼン・坪足となって外輪山を目指して行く。

 こんな風雪模様ならばさっさと諦めれば良さそうな物だが、3度目の何とかとなると2人の意気込みも違うようで、ただ黙々とステップを刻みながら遥かなる七高山を目指す。確かにこんな時に突入する事は危険で、GPSが無ければとっくに諦めて下降していただろう。しかしこの風雪で視界は5〜10m位となり、既に1:00PMを回ってしまったのではタイムアウトとなり、外輪山直下50mの標高2160m地点で退却とする。

上部から御田ヶ原方面を見下ろす 外輪山直下50mで下降に取り掛かる
吹き溜まりのパウダーを拾ってご機嫌に下降 視界が広がると素晴らしい大斜面
赤崩沢の源頭斜面で遊んでみる 絶好調エクストリーマーの木村氏
 風雪の中で手早くシールを剥がして準備を整え、一休みする間もなくGPSを片手に慎重に下りて行く。滑っていると言う実感も楽しみも無いが、達成感で気持ちは満たされ、氷化してガタガタの洗濯板の様な斜面を苦労しながらも下りて行く。次第に足腰に負担が掛かり、休みながらの下降でも結構疲れるもので、調子に乗ってスピードなど出すと痛い思いをするだろう。

 ようやく地獄の斜面を通過すると吹き溜まりの雪が出来て、初めて山スキーらしい斜面に感謝しながら下りて行く。途中から赤崩沢の源頭斜面にコースを取り、若干重いがパウダー気分を満喫して調子づく。すると視界が開けて下は雲海が広がり、後ろを振り返ると山頂方面の斜面が眩しく輝いていた。こんな素晴らしいひと時を無駄にする事は出来ず、1本入れて缶ビールを取り出して至福に時間帯となる。しかし、何処からとも無く響き渡るあの2サイクルのエンジン音。いい気分を台無しにされた様でがっかりしてしまうと、祓川方面から大清水山荘方面にトラバースして行く姿が有った。まさか徒渉が必要なこのコースには居ないだろうと思ったが、祓川・大清水からならトラバースして何処でも行動可能の様だった。

 やがてやって来た3台のモビラーは地元のスノーモービル愛好団体の方で、パトロール目的で百宅から大清水を経由し、祓川を往復してきたらしい。今日は他に栃木から来たグループがいるらしく、確かに祓川から上部の斜面にはモービルのトレースが見られた。ついでに我々までパトロールされてしまい、何処へ下るのか?赤崩沢方面は気をつける事、下はガスって要注意などのアドバイスを受けた。あまり嬉しいものでもないが・・・。 
山頂方面の斜面が姿を現す 雲海を眺めていると何処からと無くエンジン音
心地良いフィルムクラスト斜面を降りて行く 地元愛好団体のパトロール隊
 
 さらに降りると御田ヶ原を下った辺りから行きは腐ってしまい、予想外の長時間行動の為か膝が疲れてきてしまい、下りはもう雑な滑りでごまかして下りて行く。その後は緩やかで広い斜面をどんどん流し、ブナ林の快適コースをどんどん下りて行く。外輪山から下降する時はコースアウトミスを心配したが、まったくコースを外す事なく最短時間で降りられたのは、今時山スキーでは必需品となったGPSのお陰。

 尾根の末端で途中でもう一度徒渉を繰り返し、元来た林道を快調に飛ばすと法体の滝に到着し、11時間35分のロングランコースに決着をつけた。ただし、今回徒渉点を探したり、準備を整えたりする時間が往復共有り、実質的には10時間くらいの行動時間と思う。なお、この時期の斜面は雨が降って氷化した洗濯板状態となり、上部はあまり快適とは言えない。東面のこのコースだったら、滑る時期は斜面がフラットな3月下旬が良く、もし体力に自信のある方だったらもっと素晴らしい山スキーを満喫出来るでしょう。

青空が現れて素晴らしい光景 最後は疎林をスムーズに流して徒渉点へ




鳥海山 法体の滝口〜御田ヶ原〜七高山 MAP