早池峰山 薬師岳 2008.01


      

     コメガモリ沢から早池峰山の山頂へ


     

 山 域  早池峰山 1913.5m 
 山行日時  2007年12月31日(月)〜2008年1月2日(水)  
 天 候  12/31 曇り〜風雪 1/1 風雪 1/2 風雪〜曇り
 メンバー  木村 荒井 千田 坂野
 行 程 【12月31日】 岳 9:38〜うすゆき山荘 11:20
【1月1日】 うすゆき山荘8:17〜河原坊8:48〜コメガモリ沢10:23〜尾根上よりアイゼン歩行11:54〜早池峰山頂13:50〜14:47尾根よりコメガモリ沢スキー下降14:47〜うすゆき山荘15:52
【1月2日】 うすゆき山荘7:50〜9:04小田越え〜薬師岳1450m付近退却11:23〜12:15小田越え〜12:40 13:25うすゆき山荘〜岳13:55

 この正月の山行は朝日連峰方面と決めていたが、1週間ほど前からは年末寒波来襲の見込みとなり、3日前には絶望的な雰囲気が濃厚になった。二つ玉低気圧が太平洋側と日本海側に発生し、何処へ逃げてもこの悪天候からは逃れられないように思えた。まして日本海側の豪雪地帯などは問題外で、ロングコースを目指すような余地など無く、スキーを楽しむなら森林限界下で遊んだ方がよほど楽しいかも知れない。

 しかし、長年刷り込まれた古い山屋の感覚では、初めから山頂に無縁の山行はあまり魅力が無く、どのような山でも常に上を目指すという習性には変わりが無い。とは言うものの、中高年の身でそんな事ばかり言ってられる訳もなく、快適な山小屋暮らしという誘惑も無縁ではない。結局あっさり落ち着いた所は早池峰山で、ここだったら好天が期待でき、何とか成るだろうという淡い期待を抱いて仙台を立った。

12月31日(月)
 仙台の宮城インターにAM6:00に集合して東北道を北進し、花巻インターを通過して岳集落を目指すが、周辺は予想以上の積雪で意外だった。岳集落の駐車場には昨日先行していた知人の車が2台有ったが、それ以外には誰も早池峰山を目指した様子は無かった。林道は積雪40cm位だったが降雪中で、この地では並以上の積雪でスキーを持ってきて正解だった。

 まもなく到着したうすゆき山荘は立派なログハウスの小屋で、中では既に昨夜に続いて知人2人が宴会たけなわという雰囲気だった。この先の小田越山荘を目指す勢いだった我々は、結局石油ストーブ完備の小屋の甘い誘惑には逆らえず、身内だけの合同貸切大宴会へ突入していった。


岳集落からの林道も予想外の積雪 うすゆき山荘では知人の2人が既に宴会の真っ最中
 
1月1日(火)

 
昨日からの知人の2人は早池峰山を目指す事も無く早々と下山し、我々もすっかりグウタラな朝になってしまったが、風雪混じりの中を早池峰山を目指して出発する。河原坊から左の登山道に進んでコメガモリ沢沿いに進むと、堰堤を3ヶ所通過したあたりから夏道はあやふやになり、適当に薮混じりの小さな尾根筋を進む。気が付いた時には徒渉地点を過ぎており、次第に深くなる雪で膝下ほどのラッセルとなる。中途半端な積雪はフカフカで歩き難く、仕方なく左の小沢に入って斜面にシールを効かせる。しかし降雪中の斜面は雪も軽くて不安定な様子で、朝日、月山の何時もの雪質とは明らかに違うようだ。

河原坊を通過てコメガモリ沢方面へ 夏道沿いに進んで行くが・・・ コメガモリ沢左の小沢を詰める
 
 良く見ると沢の真ん中には2m程盛り上がった古いデブリ末端の跡が有り、急いで右の尾根の斜面にジグを切って逃げる。雪崩は小沢の上部急斜面で発生した物だろうが、長さ150〜200m程の表層雪崩の跡のように思えた。尾根に取り付くと次第に潅木帯との戦いとなり、膝から腰のラッセルに加えてモンキーラッセルとなる。こんな筈ではなかったと悪態をつきながら進むとやがて傾斜は落ち、ようやく夏道に合流して安堵する。
 

支流より左岸の尾根に取り付くとこの通り 我慢のモンキーラッセルの後は尾根上を前進
スキーをデポしてピッケル&アイゼンの世界へ 吹き溜まりの斜面は膝下ほどのラッセル
 
 ここでスキーの出番は終了してピッケル&アイゼンの世界となるが、この古びたウッドシャフトピッケルを握るには何年ぶりか?もしかするとヒマラヤ遠征直後以来23年ぶりか?何かファイナルキャンプから頂上アタックを掛けるような、風雪でもすがすがしい緊張感で期待が膨らむ。出だしは急斜面で膝下ほどのラッセルだが、まもなく岩場混じりで八ヶ岳のような雰囲気の登高となる。
 
 次第に風雪が強まって視界も不良となり、大きな岩の基部で小休止して行動食を取る。山頂はガスに覆われて姿を現さず、コース両側に張りめぐらされた細いロープが道しるべとなる。先行の2人はプラブーツだが自分は兼用靴の為、どうも調子が今ひとつ上がらずに次第に遅れて行く。今日はベストを着込み、ウール手袋に新品のゴアミトンのフル装備の為か冷たさは感じず、ペースは遅いが快適な登りで調子は良い。

風雪を避けて小休止 次第に斜面もクラストしてくる
風雪も強まって視界も不良 山頂は厳冬期らしい雰囲気
 
 ただモクモクと進んで行くと視界不良の中突然山頂の祠が現れ、ようやく今回の目標をクリアーしてほっとする。実は夏冬を通じて早池峰山を訪れるのは今回が初めてで、風雪の中元旦登頂できた事は価値有る1日と言える。中々訪れる機会が無かっただけに、早池峰山行のきっかけが出来て何か嬉しい。

 登頂してしまえば速やかに下降するのみで、コンパスをスキーのデポ地点方向に合わせて下り始める。新雪の下はややモナカぽい雪で歩き難いが、すぐにスキーのデポ地点に戻って登ってきた沢を滑リ出す。しかし、何時に無くプラブーツにジルベレッタ使用の二人は苦戦模様で、あのパワフル&テクニカルなテレマーカー氏も屈辱的な滑りの模様。距離は短いが後傾ぎみのショートタンで浮力に乗ると調子が上がり、今回唯一のパウダーランを楽しみながらどんどん下降して行く。堰堤付近からは夏道をどんどん飛ばしてスピードを上げ、河原坊からは林道を快適なクルージングでうすゆき山荘に帰着した。小屋には早池峰山頂を目指す東京の単独行の方がおり、共に沢登り・山スキーの話で盛り上がった。

山頂からは速やかに下降 支流の斜面には古いデブリの跡
河原j坊から小田越えへの林道 小田越え方薬師岳の分岐

1月2日(水)
 単独行の方は早池峰山を目指して先発してして行った。早池峰山の山頂に立ってすっかり油断してしまい、もう下山と思って朝から軽く一杯やっていると、今から薬師岳を登るという話になって慌ててしまう。まだ出来上がっている訳では無いが、今からとなると気が重くなって体がついて行かない。先行した2人の後をトボトボ付いて行くとやがて小田越に到着し、薬師岳コース入り口の木陰で小休止を取る。小田越から見る薬師岳の山頂はガスに覆われ、意外と濃い樹林帯では積雪が中途半端で進路が解り難い。

 出発すると枝は垂れ下がってまもなく夏道は不明瞭になり、狭い樹林帯を避けるように右に追いやられ、頂上するにも右に左に蛇行を重ねて高度は上がらない。次第に潅木帯になると頭から突っ込むようで、左右共に行く手を阻まれて小休止。雪の下は深い空洞になって落ちると厄介で進退窮まる。ガスの切れ目から見える山頂方面はまだ遠く、協議の結果は潔く退却となり、シールも着けたままでのUターンとなる。予想外の敗退山行は残念だったが、初めての早池峰山登頂と快適至極の小屋暮らしには満足で、結局は全て帳消しになって満足の正月山行となった。うすゆき山荘に戻り、後は下り一方の林道を一気に下って岳集落に帰着した。

猛烈な潅木帯に行く手を阻まれる 退却の跡はパウダーを頂く

 なお、うすゆき山荘では今シーズンよりまきストーブが撤去され、代わりに石油ストーブが設置されています。ただし使用した灯油は利用者が補充する事となっていますので、今後利用される方は灯油を持参する必要が有ります。まきストーブは消防署の防火上の指導により撤去された模様ですが、もう一つの原因はかつて小屋を私物化するグループが有り、勝手にまきを持ち込んだりストーブ・部屋に改造を加えたりし、独占的な使用で新聞にも報道され、社会問題化した経緯も有ると思われます。つまり公共の施設を個人的な別荘と勘違いしている方がいた模様です。今回は最低限の灯油を使用させて頂きましたが、荷揚げして頂いた方々には感謝申し上げます。
  
早池峰山 薬師岳 コース