蔵王連峰 熊野岳付近(1825m)〜五色岳東面  2009.02




熊野岳避難小屋からお釜斜面に飛び込む




 山 域  蔵王連峰 熊野岳〜お釜斜面〜五色岳東面 (熊野岳避難小屋 1825.0m)
 山行日時  2009年2月11日(水)   
 天 候  快晴  -6℃ (山頂付近) 
 メンバー  荒井 坂野
 行 程  澄川SP6:55〜刈田岳8:30〜熊野岳避難小屋9:10〜お釜斜面9:49〜五色岳10:30〜五色岳東面10:57〜濁川11:15〜ヒヨドリ越えtop12:20〜澄川SP13:10

 
  普段は通い慣れた感のある蔵王の東面だが、五色岳の東面周辺だけは未トレースのままだった。最近はこの時期に丸山沢を滑るスキーヤー・ボーダーも珍しくも無くなったが、五色岳東面と振り子沢を訪れる人は余りいない。この周辺を滑るとなると一旦刈田岳又は馬の背から熊野避難小屋に至り、お釜の斜面を下降してから五色岳に登り返す必要があり、天候に恵まれないと山頂に立つ事は難しい。下降は振り子沢を辿って濁沢本流に至り、最後に標高差150m程のヒヨドリ越えを登り返して澄川スノーパークに戻る。
 
 今回はこの蔵王連峰の東面に精通する荒井さんに同行したが、実は熊野岳から五色岳東面を繋ぐこのコースは隠しコースだった様で、以前から暖めていたお楽しみのコースでも有るらしい。さすが地元とあってこの界隈にはオールシーズンを通して詳しく、この5年間位で蔵王東面の殆どの尾根・ルンゼを走破した様で、おそらくこのエリアの山スキーではこの人の右に立つ人はいないだろう。やはり沢歩きなどで山を良く知る人は冬の斜面にも詳しく、興味深いスキーコースの数々を見出してくれる。つまり、山遊びの幅と奥行きが深いのだろう。

 最近
週末は毎度天候が崩れるパターンにうんざりしていたが、今日ばかりは冬型の気圧配置が緩んで晴天が訪れた。午後からは余り当てに出来ないので午前中の勝負だが、登り返しが比較的に少ないので時間的には問題も無いだろう。

【概要】

 澄川スノーパークを出発する頃でも余り寒さは感じず、どうも厳冬期の山スキーという雰囲気のないのも物足りないが、何時もはひどく吹雪かれるのが当たり前の為この好天には感謝しよう。後見ゲレンデのトップからツアーコースに入り、道路とクロスしてからは標識のポールに導かれて進むが、コースは8m位の間隔にベタ打ちされた標識で立派に整備されている。雪上車が刈田岳山頂に送り込んだお客さん用なのか、以前と比べると益々商業化が進むメジャースキーコースとなっている。しかし最近の気温上昇で売り物の樹氷の姿は何処にも無く、看板に偽り有りの樹氷原ツアーにも思えるのだが。

 先行者は登山者1名とボーダー1名だけで、刈田岳山頂の直下ですでに降りて来た登山者とすれ違い、暫く登って行くと刈田岳山頂で先行者に追いついて立ち話をする。どうやら丸山沢に向かうらしく先行していったが、スノーシューを履いているのにも関わらずスピードは我々を変わらず、ノンストップで丸山沢を目指して先行していった。


馬の背とお釜斜面 前方にはボーダーの先行者が1名
刈田岳からお釜の構図 先行のボーダーさんは丸山沢目指す模様
刈田岳山頂の御神体 刈田岳山頂に立ってから馬の背へ
誰もいない馬の背は風も穏やか 濁川左股源頭付近の様子
 
 熊野岳避難小屋で小休止した後にお釜の斜面を目指し、下降点を探しながら降りて行くとボトムに繋がるコースが伺える。一旦左に回り込んでから斜滑降で斜面に入り、ややパックされた新雪にターンを刻む。最初は急傾斜で体が馴染まないが2〜3ターンするとすぐに慣れ、ショートターンでスピードをコントロールしながら下降する。壁の中間部で一旦立ち止まるが後はやや傾斜も緩み、今度はロングターン気味に下降してパウダーの感触を楽しんでみる。

 お釜の斜面は何処からでも滑り込めるが、やはり最高点の熊野岳避難小屋からスタートするのが作法で、ここから五色岳を目指すコースはいかにも理想的。五色岳の山頂へはスキーを担いでキックステップを効かせ、15分もすると右手が垂直に切れ落ちた五色岳の山頂に立つ。山頂から見る刈田岳・馬の背・熊野岳は新鮮な光景で、今までとは別の世界に飛び込んだ様で心地よい。五色岳を過ぎると今度は様子が一変し、突然穏やかな山稜の続く意外な光景となる。山稜の肩はまるで展望台の様なポイントで、刈田岳・馬の背を真正面に仰いですばらしい光景だ。

 馬の背下のお釜斜面には最近雪崩れた様子が伺え、広範囲に渡って破断面が見られてその規模の大きさを物語り、ボトムには多量のデブリが堆積している。おそらく2〜3日前に降った不安定雪が原因だろうが、これは降雪の直後の行動は厳禁という戒めであり、比較的穏やかな今日でも緊張感を実感する1日だった。

熊野岳避難小屋からお釜の斜面へ ややパック気味の斜面を降りて行く
あっという間にお釜斜面を降りて行く 熊野岳付近からの斜面は正統派のライン取り?
キックステップを効かせて五色岳の山頂へ めったに訪れる事の無い五色岳へ
山頂の直下は垂直の斜面 突然穏やかな山稜の世界
馬の背下のお釜斜面には全面に雪崩れた跡が有った。2/8(日)の降雪後に発生したと思われる。
 
 目標の五色岳東面コースは展望台から五色沢又は振り子沢に至るが、右手の五色沢の下部は沢幅が狭くなって滝があり、トラバースしても通過が困難で厄介だ。振り子沢を目指す為には左にトラバース気味に降りて行き、大きなロックバンドを通過してボールに抜けて降りて行く。中間部になると深雪になってやや重くなるが、やや後傾気味にしてトップをやや浮かしたターンで切り抜け、どんどん加速して振り子沢に繋がる尾根に立つ。

 振り子沢の上部F2には意外にも先ほどのボーダーと思われるトラックが有り、下降コースは我々とは違って五色沢へ向かって下降していた。我々は振り子沢F1の氷柱を左に見て沢筋を目指し、深くてやや重めの急峻な斜面を下降し、沢幅の狭まった斜面を降りて行くと濁沢に抜ける事が出来た。しかし、先行者が五色沢から下降してきた様子は無く、いったい何処を通過していったのか?濁川を200m程下降して行くとヒヨドリ越えのコースとなり、シールを付けて急な斜面にジグを切って登り返し、150m程登ると平坦な下降コースとなる。斜面は急峻で硬いのでスキーアイゼンが欲しい所だが、膝でエッジを斜面側に思いっきり蹴り込むと流される事は無い。後はエコーライン沿いにダラダラと降りて行くと澄川スノーパークに到着して終了となる。
 
ロバノ耳の向こうには南雁戸山・北雁戸山 広大な五色岳東面の斜面を降りて行く
ややパック気味の雪質だが快適 左にトラバースして振り子沢を目指す
ボールの真ん中を滑り込んで加速する 上部のロックバンドを通過して大斜面へ
 
 この五色岳東面コースはお釜斜面を繋ぐと変化に富んで楽しく、しかも無理の無いコース取りの為理想のラインに思える。日帰りコースの中にこれだけの要素を凝縮したコースは珍しく、山スキーの醍醐味を満喫出来るすばらしいコースだと思います。しかもアプローチは良く整備されていて快適で、東北では当たり前の藪スキーは存在しない。ただしこれは天候に恵まれた時の話で、悪天候のこの時期にチャンスを掴むのは意外と難しく、また雪質・コンディションの判断は慎重を要する。言うまでも無く降雪直後の行動は厳禁です。

振り子沢のF1(右下) F2(左上) 振り子沢F2には先ほどのボーダーのトラックが残っている
氷結した振り子沢のFI 中間部から次第にデープパウダーとなる
振り子沢左岸のロバ耳の岩場 標高差150mのヒヨドリ越えは硬くて急な斜面
五色岳東斜面〜振り子沢へのコース ロバの耳(中央の尾根)と丸山沢(右)

  


熊野岳〜お釜斜面〜五色岳東面 MAP