五貫沢とは現在長井ダムの建設が続く野川の本流で、平岩山(1609m)に突き上げる沢だが、殆ど記録を見る事も無く、唯一「朝日連峰水源の沢」に記録が載っている。逍遙渓稜会の宗像氏の遡行記録だが、驚いた事に五貫沢(ガッコ沢)意外にも越口沢や切立沢を始めてとして、野川流域全体を遡行して詳細な記録を残している。
祝瓶山周辺の沢には何本か遡行しているが、この野川流域を訪れるのは初めてで、以前は地元山岳会の方々がトレースしているだろうが、殆ど記録の無い沢には何となく興味があった。
昨年に続いて天候不順な日々が続いたが、連休後半になってようやく好天が訪れ、ほぼ3ヶ月ぶりの本格的な山行となった。ただ、すっかり山から遠ざかっていた為、まともに歩けるのかどうか不安もあった。
【天候】 8月14日 晴れ 15日 晴れ 16日 晴れ
【行程】
14日 祝瓶山荘10.:40〜切立沢出合12:50〜ヌルミ沢出合14:10
15日 ヌルミ沢出合6:30〜二筋滝7:14〜ガッコ沢出合の雪渓高巻き10:02〜ガッコ沢雪渓高巻き10:35〜最後の雪渓13:47〜二俣の滝15:00〜平岩山手前の登山道17:15
16日ビバーク地出発6:22〜大玉山8:21〜赤鼻尾根〜祝瓶山荘11:25
【メンバー】 荒井 坂野
【概要】
8月14日
何時もは前夜入山で早朝出発が常だが、田舎の用事を片付けてからようやく朝に出発し、祝瓶山荘に到着したのは10:00AMを過ぎていた。
平地ではすっかり晴れていると思ったら木地山ダム方面は雲に覆われ、意外と先ほどまでは長雨が続いていた様だ。しかし予報通りに天候は回復し、駐車場を出発する頃には青空が姿を現した。
駐車場には車4台の先客がいたが、どうやら釣り屋さんが何名か先行している模様で、おそらく同じ五貫沢本流方面と思われた。しかし、このマイナーな沢にやってくる沢屋さんは流石にいないだろう。
つり橋を渡ってから登山道を進み、祝瓶山方面の分岐を過ぎるとやがて五貫沢となるが、水位は10cm程高い様で水量は平時の2倍位に思える。しかし、幸いな事にメジロの数は意外と少なく、30分もゴーロ歩きをしていると気にもならなくなった。後で聞いた所によると、大水の出た直後にはメジロが激減するらしい。
木地山ダムから下流域は深く落ち込んだ深い渓谷だが、意外にもこの先は両岸とも大きく開けて明るく、滝も無いまるで平凡なゴーロ歩きが続く。まったく釣屋さん向きの沢で、案の定砂地には新しい足跡が見られ、すっかり釣りは諦めてどんどん先を行く。
切立沢の出合で2名の釣屋さんに追い着いたが、調子は今ひとつの様で諦めて引き返す所だった。水量が多いと毛鉤はすぐに流され、フライFでは当たりが取りにくいのでは?テンカラ竿を取り出したものの、やはり殆ど釣りにならないので先を進んで行く。
相変わらずのゴーロ帯を歩いて金山沢を通過し、右岸のゼンマイ道を所々辿って行くとヌルミ沢出合となる。時間帯は早いがこの先適当なBPもなさそうなので今日のテン場とする。
長雨の為かすっかり湿った薪の着火は良くなかったが、準備が整うとソーメンで遅い昼食とし、後は持ち込んだ食材と多量のビールで宴会が始まる。夏はなんと言っても沢&釣りに限る。
8月15日
快適なテン場を後にすると沢の様子は変わり、沢幅が狭まって2mの滝が続いて出てくる。その先の2mほどの滝には大きな釜があり、その瀬に岩魚が遊ぶ姿が見られて何匹か溜まっているようだ。しかし、今日の予定は稜線までと先が長いので先を急いで通過したが、後で考えるとこれが失敗で後悔してしまう。
間もなくすると豪快に流れ落ちる二筋滝が現れるが、正面突破は見込みが無い為左から高巻き、そのままゴルジュ上のブッシュを50mほどトラバースし、もう一つの滝も巻いて沢床に降りる。先はV字の谷だが2mの次の8m滝が現れ、左からロープを出してトラバースで越えるとその先に5mのCS滝となる。
左から楽に高巻いて沢に戻ると沢は明るく開け、ゴーロ帯に雪渓の残骸が出てくる。再びゴルジュに入って何本かの滝を越え、2mの滝に続いて8mの滝が現れる。左岸からロープを付けて豪快に越え、狭まったゴーロ帯を進んで行くと再び雪渓が出て来る。最近の悪天候続きで気温が上がらない為か、雪不足だった年の割には予想に反して雪渓が多い。
雪渓の向こうは見えないがどうやら越口沢とガッコ沢の出合の様で、入り口の雪渓はかなり不安定で通過を諦め、ガッコ沢手前右から急な草付きに取り付いてガッコ沢4m×10m×10m 3本の連続した滝の左岸を高巻く。急な草付きを20m程ランナウトしたトップはさぞかし難儀だったろう。
しかし、40分程の高巻きでガッコ沢に降り立ってもその先は再び雪渓に行く手を阻まれ、ロープを付けて左岸から高巻きを繰り返す。ブッシュを100m程トラバースした後、ロープを付けて草付きを下降するとそこがゴールだった。自慢のスパイク地下足袋の安定性は抜群で、腕力に頼らなくても足で楽に登れるところが心強い。
間もなく10m2段の滝が出てくるが、下段左の狭いカンテに取り付いてブッシュに入り、比較的容易に滝の落ち口に立つ事が出来る。その先は水量が減って朝日連峰では良く見る植生の薄いV字の谷が広がり、源頭の雰囲気のゴーロ帯を進んで行くと二俣の滝に到着する。
滝は源頭付近らしからぬ見栄えのする美しい滝で、左俣右の逆層スラブに取り付いてシャワークライムを楽しむ。やっぱり夏は朝日の沢登りに限る。続いて8mのCS滝を左から高巻き、狭まった所の滝を何本か越えてゆくと水量は更に少なくなる。
今日は予想外に雪渓でてこずって距離は伸びず、平岩山手前の登山道でビバークとなる為、ボトルに水を汲んだ後重い体を引きずってゴーロ帯からノロノロと登山道を目指す。
あまり悪い箇所は出てこないが先行とは何時の間にか距離が開き、最後になって3ヶ月ぶりの山行のツケが廻ってきた。最後は快適な草付き斜面を詰め、まったくの藪漕ぎなしで登山道に飛び出す。振り返ると祝瓶山・木地山ダムが遠くに感じられた。
幸い天候にも恵まれ、星空を仰ぎながらの宴会には実に満足で、快適なビバークですっかり熟睡してしまった。でも酒は余り入らず、体力の低下は明らかだった。
8月16日
目を覚ますと稜線上は実にすがすがしい朝で、既に大朝日岳の山頂には御来光を求めて多くの登山者の姿が見えた。暫くすると単独の登山者が早くも降りてきて、以東岳からの縦走で祝瓶山経由して五味沢を目指していった。
今日は朝からの陽射しは何時になく強烈で、水分を十分補給したつもりでもそれ以上に汗は流れ落ちる。沢登りではまだ体力が保てるが、稜線に上がるとまるでカッパの様に元気が無くなる。これじゃ真夏の縦走はとても勤まりそうにも無い。
赤鼻の分岐でノンビリしているとそこには意外なお客さんが現れ、一人は小国山岳会の井上氏ともう一人は西川山岳会の蒲生さんだった。井上さんは登山道の環境保全の標識整備が目的の様だが、短パン姿にランニングシューズの姿はいかにも体力抜群のご様子。何時もご苦労様です。蒲生さんも大玉山を目指す様で相変わらず元気な様だ。
暫く話し込んだ後は赤鼻尾根をダラダラと下り、なんと5時間もかかってようやく祝瓶山荘に到着した。今回はあまり厳しい滝や高巻き・ゴルジュ帯は出てこなかったが、意外と体力を消耗する沢に感じてしまった。
振り返ると大玉山〜祝瓶山の山並みが・・・
藪漕ぎは一切無く登山道に飛び出す
登山道でビバークの後祝瓶山荘を目指す
見ごたえのする祝瓶山の北面を見ながら祝瓶山荘を目指す
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