飯豊連峰 石転び沢〜杁差岳 2005.06


地神山付近から二王子岳付近

地神山付近からニ王子岳方面。手前は門内岳に突き上げる胎内尾根。




 山 域  飯豊連峰 杁差岳(1636m)
 山行日時  2005年 6月18日  
 天 候  晴れ
 メンバー  坂野
 行 程  石転び沢〜門内岳〜頼母木山〜杁差岳〜地神山〜飯豊山荘

 今シーズン最後のスキー山行は鳥海山の千蛇谷コースとなったで、毎年訪れていた石転び沢は行かずじまいになり何となく中途半端な気分ですっきりしない。今年もスキーを早々と仕舞い込んでからは体は鈍ってゆくので、この梅雨の谷間の好天を狙って飯豊連峰の主稜線歩きを計画してみた。

 また今年の3月にスキーで西俣峰から頼母木山に達したものの、強風が吹き荒れる主稜線には歯が立たず、門内岳登頂を諦めて下山したいきさつがあった。考えて見ると普段は日帰りスキーヤーの為のんびりと稜線歩きを楽しむ事など無く、この雄大な飯豊連峰の一角に触れただけに過ぎない様にも思える。出来れば久しぶりに全山縦走を実現したい所だがそうもいかない。それでは6月に飯豊連峰を訪れる事も初めてなので、ガラにも無く評判の高山植物を写真に収めてみよう等と考えたりもする。

飯豊山荘4:30〜石転び沢〜梅花皮小屋8:10 8:50〜門内岳9:50〜地神山11:10〜頼母木小屋11:40〜杁差岳13:10 14:00〜頼母木小屋15:30〜地神山16:30〜飯豊山荘18:30

 車を飛ばして飯豊山荘に到着して見ると、既に7人ほどの釣師が身支度を整えて文覚沢方面に消えていった。駐車場では登山者らしき姿は見かけなかったが、パンを牛乳で無理やり押し込んでから早速出発とする。温身平から先は5月頃の煩わしい小枝に邪魔される事の無い快適な道で、間もなく到着した「うまい水」の看板の有る水のみ場で喉を潤す。

 暫く進んでゆくと竹地原から先は雪渓が連続して快適な雪渓歩きとなり、まるで5月の連休時期のような雪の量の多さには少し驚いた。梅花皮沢の出合を過ぎる辺りから単独の先行者を確認し、石転び沢と門内沢の出合を過ぎた辺りで追い抜く。どうやらこの先から先行者の姿は無く、この広大な石転び沢の大空間を独り占めしたような気分になってどんどん先を急いで行く。この時期になると下部の雪渓はスプーンカットになっているが、今回はお荷物のピッケル、アイゼン無しでやって来た。もしもの場合と思って雪渓で拾ってきたとがった棒切れを手に、殆ど休みを取ることなく順調に高度を上げてゆく。

 石転び沢手前の雪渓  先行者の跡を追って先を急ぐ
           石転び沢手前の雪渓                        先行者の後を追って先を急ぐ

 本石転び沢の出合から覗き込むと雪渓は頂上直下で雪が既に切れているようだが、その下から石転び沢までは雪渓が連続しており、途中に大きな亀裂も無さそうなのでまだスキーは可能かも知れない。遅くまでスキーにこだわり続けたいと言う向きには良いだろう。しかし、落石や土石崩れ等も無さそうで斜面は比較的綺麗だが、スプーンカットの堅い急斜面が高度差800mも連続した日にはとてもかなわない。私の場合、足腰、特に膝がとても持たないだろうから却下。
 今日は歩き始めていると何時になく調子が良く、スプーンカットの斜面でも順調にアイゼンなしで高度を稼いでゆく。抜けるような青い空と白い雪渓のコントラスト、まばゆい新緑、心地良い雪渓の涼しい空気。まるで体の中でエネルギーが完全燃焼しているような心地良さを感じる。

   
          本石転び沢の出合から                          北股沢の右と左
  北股沢出合で今日始めての小休止を取った後、今度は急な斜面にフジヤマのビブラムソールでキックステップを刻み、万が一の為に先の尖った棒切れをしっかりと両手で握り占め、滑落停止姿勢を想定しながら上部を目指す。暫くすると上部から賑やかな人の声がして梅花皮小屋も近くなり、急な斜面をジグザグ登高を繰り返して上り詰め、飯豊山荘から3時間40分程で順調に到着して自分でも満足。

 小屋でミルクティを沸かして小休止の後、本日予定の地神山を目指して出発する。北股岳を越えて門内岳に至る主稜線には見事なお花畑ロードとなっており、山の緑と白い雪渓、ハクサンイチゲの白、ミヤマキンバイの黄色、イワカガミのピンクの花びらは実に鮮やかな光景だ。特に南西の斜面に群生したハクサンイチゲの広大な群落は実に見事で、どうりで女性中心にした中高年パーティーが多いのも良く解る。

    
            イワカガミ                                 ミヤマキンバイ?
  
 門内小屋を通過して地神山に到着して小休止していると、前方から赤のヘルメットを被った早足の単独行者がやってきた。話を伺ってみると今日は胎内から足の松尾根を登って大石山経由でやって来て、これから門内岳から胎内尾根を下って胎内小屋に戻る予定との事。今は既に駆り払いもされていない尾根を藪漕ぎ覚悟、そしてビバークを考えての山行らしく実にパワフルそうな方だ。殆ど単独で登っているらしく、新潟県境全山縦走を終了し、来年は蒜場山〜大日岳、ニ王子岳〜赤津山経由で門内岳を考えている模様。お名前は聞きそびれてしまったが、新潟の方にはかなりのエキスパートの方々が活躍している様子だった。


 今日はここから丸森尾根を下降するつもりでいたが、こうなるともう足は止まらなくなりこのまま頼母木山方面を目指す。ここから見る杁差岳は頼母木山と大石山のコルで大きく高度を下げ、鉾立峰、杁差岳に登り返す遥か遠い主稜線に思えるが、天候にも恵まれているので勢いで杁差岳を目指す。頼母木小屋からは緩やかな下りが続き、どんどん下って行くが鉾立峰はなかなか近づかない。ようやく到着した大石山から見る足の松尾根、そして杁差岳から西面に続く鋭い大熊尾根は見ごたえがあり、積雪期のコースとしては中々興味深いものがある。

    
         稜線上に浮ぶような頼母木小屋                 鉾立峰から杁差岳に至る稜線
    
       大石山から見る胎内尾根                   大石山から大熊尾根

     


 いい加減に疲れが出てきた頃に急な鉾立峰の登りが待っているが、重い足を引きずる様にして超えるとようやく杁差小屋が見えて来る。 
やっとの思いで到着した小屋は誰も居らず、実にひっそりと山頂にたたずむ雰囲気だった。そこから100m程上がった所が今日の最終目的地の山頂であった。山頂から南側の主稜線を振り返ると、地神山の遥か彼方に見覚えの有る飯豊本山、ダイグラ尾根がはっきり見えたが実に遠い。今から引き返す事を考えと気が重くなるが、ここは小屋で充分な休憩を取って帰路に備えよう。

 下の雪渓で水を汲んできて小屋でラーメンを作り昼食とし、紅茶を飲んで小休止してまた元気を取り戻す。鉾立峰への下りでは少し足取りも軽くなり、途中で2パーティの登山者をすれ違って立ち話をする。後はただひたすら頼母木小屋を目指して登り返す。小屋では今日の泊り客が既に宴会モードの真っ盛りだろ。途中の雪渓で冷やした缶ビールを飲み干し、最後のお勤めの地神山への登りに取り掛かる。丸森尾根との分岐の地神山に到着すると、もう既に出発してからちょうど12時間経過していた。

 もうここまで来れば後は下るだけなのでもう安心と思いきや、急峻な岩稜混じりの下りはこれまた結構辛い修行。いくら下っても高度計の目盛りは中々下がらず、もどかしさに耐えながら只ひたすら下降し続けるのみ。山スキーをやっていると下りでは膝の関節に負担を掛ける事は無いが、久しぶりの急な尾根の下りでは実に辛いもの。あまり調子にのって飛ばすと事故の基なので、余り無理をせず膝に余りショックを与えないようにして慎重に降りる。飯豊山荘の屋根が見えてきてからが実に長かったが、それでも何とか日没前の18:30に天狗平に戻れたのは良いタイミングだった。

    
           山頂直下の杁差小屋                    最終目的地のピーク

    
           杁差岳から権内尾根                      遥か遠く飯豊本山、ダイグラ尾根
  


石転び沢〜北股岳〜杁差岳 MAP