鳥海山 猿倉口〜七ッ釜小屋〜七高山 2007.03



     

      鳥海山 七高山直下の斜面

     

 山 域  鳥海山 猿倉口〜七高山 (往復)
 山行日時  2007年3月4日(日)
 天 候  曇り
 メンバー  荒井 坂野 
 行 程  フォレスタ鳥海〜猿倉口〜七ッ釜小屋〜七高山  GPS積算距離 27.0km

 今年の正月山行で気を良くしてしまい、いつかは鳥海山の日帰り山行をやってみようと決めていた。この祓川コース方面は地元のスキーヤーも厳冬期に入っている様だが、もしかすると好天を狙っての日帰り山行なども実行さているかも知れない。最近は足回りに自信の有る篤志家もいて、単独でトライしている人の記録もチラホラ。通常の年だったらなかなチャンスはやって来ないこの時期だが、暖冬で連続の好天を狙った日帰りは十分可能に思えた。

 しかし噂には聞いていたものの、スノーモービルの軍団がそこらじゅうの斜面を走り回る有様で、この時期の静寂を独占したい気持ちなどいっぺんに吹き飛んでしまった。林道から七ッ釜小屋へいたるコースはまるでハイゥエーの様相で、我々2人は広大なゲレンデの中を遠慮しながら歩いている存在にも思えた。皮肉にも先週の赤見堂岳とはまるで対極をなす山で、人間臭さと機械の圧倒的な力を見せ付けられた。
  
【3月4日】 フォレスタ鳥海4:40〜奥山放牧場5:20〜猿倉口猿倉口(900m)6:30〜賽の河原(1350m)8:10〜七ッ釜小屋〜七高山11:00 11:30〜七ッ釜小屋12:00〜猿倉口〜フォレスタ鳥海13:40
 
 前日の宴会も程ほどで切り上げ、4:40AMに元気に出発する。フォレスタ鳥海から先は既に除雪が進んでいるが、大型のグレーダーとロータリー車が行く手を阻み、我々にはスキーを担いでの有りがた迷惑な林道歩きが待っていた。奥山放牧場までは所どころ街燈が点され、こんな所でなんとなく無駄な金を使っている様にも思える。

 40分ほど歩いた所が除雪の終了点で、そこはひっそりと静まり返った奥山放牧場だった。まもなくすると左から突然スノーモービルの立派なトレースが入りこみ、この先はすっかり整備された高速道路のような雰囲気となってしまう。記録では確かに散見してはいたものの、こんなに派手に
走り廻られているとは思わなかった。

 コースは途中で林道をショートカットしながら進んで行くが、途中からは雪上車と思われるトレースが現れ、ご丁寧にも途中の急カーブの登りはすっかり除雪されて拡幅されている。今年は国体のバイアスロン競技がこの地で有った様だが、余った金での大盤振る舞いでも有ったのか?そんな事をグチリながら進んで行くと猿倉口との分岐になり、コースを左にとって猿倉口コースから七ッ釜小屋方面を目指す。

林道はスノーモービルのトレース 林道をただひたすら猿倉口を目指す まだ比較的新しいにろく小屋

 こんなに台数が多いと嫌でもトレースを進む羽目になり、緩やかな尾根に取り付いてまもなく、ブナ林に囲まれた個人まりとした小屋に到着する。再建されたのか比較的新しい小屋で、その入り口にはスノーモービルのコース範囲を示した小さな掲示板が有った。地元スノーモービル団体が設置したその内容によると、唐獅子小屋〜七ッ釜小屋を結ぶラインが許容範囲で、そこから山頂へは自粛している旨の文面だった。また、猿倉口から祓川に掛けても自粛エリアで、どうやら山スキーヤーとバッティングしない様な配慮を見せている様だった。

 尾根を辿って行くと山頂はどんどん接近し、目指す七高山がようやく射程距離に入った事を実感する。天候は曇りでなんとなく下り坂の様に思えるが、気温が高めで風が無くて何か4月後半の様な穏やかさを感じる。雪は次第に硬くなって所どころシールが滑り、柔らかい雪を選びながら快調に高度を上げて行く。比較的なだらかな斜面の続く鳥海山は歩きやすく、周りのロケーションが素晴らしいだけに、あまり疲れを感じることも無くどんどん進んで行ける。 まもなく右にトラバース気味に上って行くと七ッ釜小屋に到着したが、雪に覆われた小屋を諦めて外で今日2本目の休憩を取る。

猿倉口から尾根を登る 南何処もかしこもスノーモービルのトレース
 
 七ッ釜小屋から先はスキーアイゼンをセットし、適度に固い斜面に爪を効かして斜上し、すっかり山頂が全体が姿を現したコースをまっしぐらに目指して行く。この辺になるとトップからは次第に置いてきぼりを食ってしまい、毎度の事だがいつの間にか距離が開いて次第に苦戦模様となる。雲りながらも天候は安定しているが、山頂は今にも雲に覆われそうに思えて心は落ち着かない気分。そんな時にその静寂を破る様ないきり立つようなエンジン音。下を振り返ると猿倉口上部から上がる6台のスノーモービルの軍団の隊列。どうやら唐獅子小屋を目指すらしく、まもなく大きくコースを左にとって遠かっていった。


雲空で気温は高めだがまだ雪は腐っていない 七ッ釜小屋には結局入らずに休憩
風が強かった様子を伺わせる風紋 氷の薬師から七高山を目指して高度を上げる
 
 今まで順調に来たが流石に氷の薬師辺りからスピードは落ち始め、標高2000m辺りになるとまるで高所順応が出来無い様なペースダウン。斜面はスキーアイゼンでまったく不安は無いが、30歩も歩くと息が上がってしまい、ゆっくりジグを切りながらの登行が延々と続く。最後の斜面を登りきり、ようやく山頂に到着するとそこには足跡が残っており、どうやら昨日か先週辺りに訪れたスキーヤーがいる様だった。

 山頂で開ける缶ビールの味は体にしみて格別で、ついつい調子に乗って梅酒まで手が伸びてしまう。この時期の山頂での贅沢な気分は実に感動物で、出来ればこのまま何時間でもまどろんでいたい。しかし当然そんな訳にも行かずまもなく下降の準備に入り、視界が良く効いている時にと思ってまもなくスタートする。直下の斜面はフラットで適度な硬さが有り、スキーは回しやすく快適に下りて行く。所どころシュカブラが出て来て避けるが、次第にガタガタ斜面に突入して覚悟を決める。あまり快適とは言えないが氷化している事も無く硬くもない。この時期の鳥海山としてはきっと恵まれた方だと考え、疲れた膝を休めながらゆっくりと下りて行く。

アイスバーンに出くわすことも無く比較的良好 風もない七高山は4月頃ののんびりムード
出だしはフラットな斜面から シュカブラを避けながらの快適クルージング
山頂直下は少し急だが板が暴れることも無い モービル軍団が来ない所までは楽園なのだが・・・
 
 七ッ釜小屋に到着して休んでいると、先刻の軍団がやってきて歓談する。この3台は地元の方で、スノーモービル協会のパトロール隊で上がって来たと言う。話によると猿倉コース、百宅コース周辺はかなり人気のエリアで、地元以外にも首都圏からも訪れる存在らしい。その為自主規制を知らずに山頂を目指す人もおり、パトロールで注意を喚起しているような話だった。しかし、我々が標高差1850m、往復27.6kmで汗を流していると思えば、フォレスタ鳥海から僅か30分で七ッ釜小屋に到達するとは何たることか・・・。まあ、今の所我々スキーヤーと直接トラブルになることも無さそうで、山は山屋、スキーヤーだけの独占と言う道理も無く、お互い仲良くお付き合いするしかない様にも思える。つまり現状では紳士協定で宜しくお願いしますとしか言い様が無いだろうか?

 スノーモービルのトレースを避けながらコースを選んで行くが、高度を下げるにしたがって雪は重くなり、滑りがイマイチで嫌でもトレース通しになってゆく。トレースの林道の下りは楽と言えば確かにそうだが、なんとなくすっきりせず満足感が薄れる。途中で山頂方面を振り返ると山全体が荒らされ、なんとなくでかいスキー場の中を遠慮しながら滑った様で、今までの山スキー人生では初体験の異次元空間だった。

 奥山放牧場からは立派に除雪されている為、やむなくスノーモービルのトレースを追って下って行くがこれがまた疲れる。小さなアップダウンを繰り返し、最後のフォレスト鳥海の建物をぐるっと周り込むとどっと疲れが出た。しかし、当初往復10時間を想定していたが、9時間で達成できた事には満足だった。

※下山の翌日になってから当日のほぼ同時間、上ノ台コースを単独で往復した同じ仙台のsuperdioaf27 さんと山頂でニアミスした事が判明。まさかあの長大なコースを単独で狙っている人がいるとは、まったく想像もしませんでした。お疲れ様でした。

七ッ釜小屋に戻るとそこはモビラー?の社交場 なんとなく何処かのスキー場の中に思える
ひっそりとした奥山放牧場 往復27.6kmの距離は下りが結構疲れる




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